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水曜「働く・暮らす」【けんこう処方箋】

身体拘束不要なケア目指して 大日向輝美

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写真:<イラスト・佐藤博美> 拡大<イラスト・佐藤博美>

 ●札幌医大保健医療学部長 大日向輝美

 昨年11月、国立がん研究センターと東京都医学総合研究所の研究チームが、ある調査結果を発表した。病気やけがで一般病院に入院中の認知症患者の45%に「身体拘束」が行われていたというのだ。

 拘束方法で多かったのは、ベッドを柵で囲む、車椅子にベルトで固定する、ミトン型手袋を着用させる、といったもの。転倒・転落リスクの回避やチューブ類の抜去防止が主な理由だ。研究チームは、明らかに過剰な対応で、習慣的に行われている可能性があると指摘している。

 身体拘束とは、治療上・療養上の必要から、全身的・局所的に運動を抑制すること。2000年にスタートした介護保険制度では原則禁止されている。厚労省は「身体拘束ゼロへの手引き」で、拘束の要件と、緊急でやむを得ない場合の手続きを示している。

 だが、これらは一般病院での拘束を規制するものではない。病気やけがの治療を優先する医療機関では、安全確保のため必要な措置とされ、高齢者以外にも行われている。

 身体拘束は、本来自由であるべき人間の行動を制限し、尊厳を冒す行為といえる。拘束による弊害もあるから、しないほうがいいに違いない。

 実際に身体拘束の役割を担う看護師の多くは「できるだけしたくない」という思いを抱き、申し訳なさや後ろめたさを感じている。一方で「転ぶかも」「チューブを抜くかも」と事故発生への不安や恐怖を抱え、ジレンマに陥っているとされる。他の患者のケアもしなければならず、24時間見守ることは不可能。そこで防衛的な安全策として選択されるのが身体拘束である。

 しかし拘束に限らず、抵抗感はだんだん薄れていくものだ。最終手段であった拘束が優先的な安全策になっていないか。防衛的な対応の繰り返しが、過剰な拘束を許容する風土を作り出していないか。患者の安全という名目で、自己保身を図っていないか。

 拘束で事故は減らない、拘束による弊害で入院期間は長くなる、拘束する方が看護の必要度は高くなる……身体拘束の効果は、研究上でも疑問視されている。逆に、拘束の効果を示す裏づけはない。

 金沢大付属病院のように、拘束しない看護を実現した医療機関もある。身体拘束を廃止するのは容易ではない。しかし、看護は本来、患者の人間性を守るために行われるものだ。いま一度、日々の看護を見直して、身体拘束を必要とする状態を作らないケアの実現を目指していこう。

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