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水曜「働く・暮らす」【現場一話】

中標津の希望農場

写真:ゆっくりと回転する台の上で搾乳される乳牛の様子を見る佐々木大輔社長。牛はとてもリラックスしているという=中標津町 拡大ゆっくりと回転する台の上で搾乳される乳牛の様子を見る佐々木大輔社長。牛はとてもリラックスしているという=中標津町

 ■酪農に危機感、搾乳ロボ導入

 二十数頭の乳牛を載せた大きなドーナツ形の台がゆっくりと回っている。牛は自ら台の上の仕切りに入り、1周すると出ていく。巨大な自動回転ドアのようだ。ここで牛はロボットに搾乳してもらう。人が手を触れることはない。口元を見ると、一度のみこんだ食物を反芻(はんすう)している。リラックスした時の行動だ。

 国内最大の酪農地帯の一角、中標津町の希望農場(佐々木大輔社長)が昨年6月、アジア初となるスウェーデン製のロータリーパーラー型搾乳ロボットを導入した。

 回転台に入った牛はまず乳房を洗浄される。続いて3Dカメラが乳房の位置を探す。すると搾乳のためのユニットが正確に取り付けられ、搾乳が始まる。台が1周するころユニットは外れ、牛は仕切りの外へ。すべて自動だ。

 希望農場では現在、230頭を搾乳。佐々木社長は「古い搾乳施設では、今とほぼ同じ頭数を4人がかりで9時間くらいで搾っていた。今では1〜2人で7時間くらいだ」と効果を語る。ロボットは1日最大1600回の搾乳ができ、1日2回の搾乳なら800頭まで対応可能。それを1〜2人でこなせるのだ。

 実際、希望農場の社員は3人だけ。今はこれにベトナム人研修生1人と佐々木社長を加えて計5人で仕事を回す。今後まずは400頭まで搾乳する牛を増やす計画という。

 ロボット導入に伴う農場全体の設備投資は10億円だった。このうちロボットと新畜舎にかかったのは7億円で、この半分は畜産クラスター事業として国からの補助が受けられた。しかし、6億円以上は借り入れた。事業計画は380頭で計算している。

    *

 これほどの設備投資に踏み切ったのは、危機感からだ。

 道によると、道内で乳用牛を飼う酪農家は、1990年には1万5千戸。しかし28年後の2018年には6140戸と激減し、歯止めはかかっていない。ほとんどが家族経営だ。「後継者不足、雇用環境の悪さ、圧倒的な肉体作業……。農場で働きたい人はいない」と佐々木社長は言う。

 一方で、全国の生乳生産量での北海道のシェアは1990年度は約37%だったが、2010年度には50%を突破。2017年度には53・7%となり、道産の生乳がどんどん本州へ運ばれている。

 「生乳が不足している。飲用で道外に送られると、この地域のチーズ工場やバター工場に原料が入ってこない。それは雇用や人口減の問題にもつながる。このままでは地域が危ない。少しでもたくさんの牛乳を搾ろう」と考えた。

 ロボットの中には無人で24時間搾乳できるものもある。しかし、希望農場では、従来と同じ行程の中で搾乳作業をロボット化し、搾乳中も無人にはならない。「牛をちゃんと見るという作業は省きたくなかった。僕たちは生き物を飼っているのだから」。佐々木社長のこだわりだった。

 (神村正史)

 ■高収益型の畜産、地域ぐるみで

 畜産クラスター事業は、環太平洋経済連携協定(TPP)対策として2015年度から始まった。酪農家(法人など)の設備投資を国が最大で半額補助する。農家や、コントラクター(農作業請負組織)、流通加工業者、農業団体、市町村などの、地域の関係者が「ブドウの房(クラスター)」のように結集し、地域ぐるみで高収益型の畜産の実現をめざす。

 まず地域の関係者で協議会を立ち上げ、収益性向上のための計画を作成。都道府県知事がこれを認定後、国の補助を申請する。一法人の農場であっても協議会に参加し、計画に公共性が認められれば補助対象となる。道根室振興局管内では、17年度までで、6協議会の46法人などが行った168億円の設備投資に、73億円が補助されている。

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