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09月16日朝日新聞デジタル朝刊記事一覧へ(朝5時更新)

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水曜「働く・暮らす」【現場一話】

道総研と稚内の企業、共同研究

写真:栽培試験場の水槽でサクラマスを育てる三坂尚行さん=室蘭市 拡大栽培試験場の水槽でサクラマスを育てる三坂尚行さん=室蘭市

写真:陸上海水養殖の水槽に放されるサクラマスの幼魚=昨年6月、稚内市、カタクラフーズ提供 拡大陸上海水養殖の水槽に放されるサクラマスの幼魚=昨年6月、稚内市、カタクラフーズ提供

 ■冷涼気候、サクラマス養殖

 宗谷湾に面した稚内市の食品製造会社「カタクラフーズ」(猪股和範社長)の敷地にある倉庫内に、3台の円形水槽(直径3〜4メートル、深さ1メートル)が並ぶ。道内初のサクラマスの陸上海水養殖施設だ。

 文字通り、旬は春で、産卵のため、沿岸に寄ったところを漁獲される。身が柔らかく、脂ののりもいいが、漁獲量が少ないため魚価が高く、本州でも海上や陸上での養殖に取り組んでいる。稚内では同社と道立総合研究機構の6試験場が昨年から、共同で実証実験を始めた。

 課題はいかにコストを下げられるか。エサには食欲増進のため、ホタテの加工で大量に破棄されるウロから同社が作るウロエキスを添加する。実験を主導する栽培水産試験場(室蘭市)の研究主幹、三坂尚行さん(52)は「エサもさることながら、低コスト化の大きな決め手は稚内の冷涼な気候と海水温にあるんです」という。

     *

 サクラマスは冷たい水を好むため、水温を20度以下に保つ必要がある。くみ上げた海水を水槽に注ぐが、稚内の海水温は夏も高くて21〜22度で、うまくいけば冷却装置を使わずに済む。一方、ホタテのウロはアミノ酸が豊富で、エキス添加のエサで育てたマダイやクロソイでは成長が促進され、チョウザメでは肉質の向上が確認されている。

 養殖期間は10〜12カ月で、昨年6月、さけます・内水面水産試験場(恵庭市)から搬入した体長12〜15センチの幼魚200匹を水槽に放した。出荷サイズの1キロ以上まで育てるのが目標で、成長度合いや生存率を記録し、海上養殖では難しい品質のコントロールも検証する。

 そして迎えた夏。海水温が22〜23度になる日もあったが、死んだのは水槽から飛び出したものも合わせて20〜30匹程度。期待通り、冷却することなく8月を乗り切った。ところが、そこに突然の胆振東部地震による全域停電(ブラックアウト)。ポンプが止まって水槽に海水も空気も送れず、水槽内は一気に酸欠状態に。残ったのは10匹だった。

 実験を継続するため、栽培試験場で飼育していた80匹の幼魚を追加。その後は順調に育ち、年を越したが、今度は厳しい寒波に見舞われた。零度前後の海水温なら耐えられるが、1月17日夜から18日朝にかけて零下2・6度まで下がり、すべて死んでしまった。急激に海水温が下がったことが原因だったようだ。

 「まさかの出来事が続き、残念ではあったが、冷却装置を使わずに夏を乗り切れることが確認できたことは成果」と三坂さん。実験は5月の大型連休明けに再スタートさせるが、今度は海水の取水管や配水管に断熱材を巻き、加工場の廃熱を利用して海水温を高めるなど、コストをかけずに寒さに備える計画だ。

 (奈良山雅俊)

 ■ブランド化、地元期待

 稚内での陸上養殖に地元が期待するのは、サクラマスを加工した新たな「稚内ブランド」の創出だ。

 海で漁獲されるサクラマスの成熟魚は30〜70センチと個体差が大きい。これを養殖で50センチまで育てられれば2〜3キロになり、市場価格はより高まる。ただ、安定的に大型の個体を出荷するには、大きい個体同士の交配を繰り返す必要があり、時間のかかる作業だ。

 実証実験は来年度で終わる。その後は道総研が支援する形で地元に引き継がれる予定だ。全国へ通用する「稚内ブランド」の確立には、地元での新たな枠組みづくりが必要だ。

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