メインメニューをとばして、このページの本文エリアへ

08月19日朝日新聞デジタル朝刊記事一覧へ(朝5時更新)

新着記事一覧へ

このエントリーをはてなブックマークに追加

金曜「ライフ・楽しむ」【心臓病と走る 神村正史】

(42)安全な走りは「臆病になること」

写真: 拡大

写真:佐藤医院の佐藤隆久医師=徳島市、神村正史撮影 拡大佐藤医院の佐藤隆久医師=徳島市、神村正史撮影

 実は、マラソンは危険をはらんでいる。

 月刊誌「ランナーズ」で論文「レース中の突然死とメディカルチェック」(2003年11月号)を発表するなど、安全に走るための注意喚起をしている医師を徳島市に訪ねた。佐藤医院の佐藤隆久医師だ。

 佐藤医師は「フルマラソンはゆっくり走っているつもりでも、心臓にかなりの負荷がかかっている。だから心肺停止事故はゴール前後が多い」と話し、ある臨床報告を見せてくれた。

 東京都立墨東病院の黒木識敬医長らによる報告だ。同病院はマラソン大会の開催が多い荒川、江戸川の両河川敷や、東京マラソンのコースの一部が管轄地域。その病院に06年1月〜15年10月に搬送されたマラソン大会中の心肺停止患者、若年群(10〜30代)4人と中年群(50〜60代)4人の計8人を検証していた。

 注目したのは中年群だ。全員ゴール直前で倒れていた。搬送後の検査で、2人に右冠動脈に90%の狭窄(きょうさく)、1人に左前下行枝に75%の狭窄が見つかり、心筋虚血が原因とされていた。残る1人は既往症に冠攣縮(れんしゅく)性狭心症があり、運動が攣縮を誘発したとみられた。

 残念なことに冠攣縮性狭心症以外の3人は、それまでの検診で、動脈硬化の因子となる脂質異常症や高血圧症を指摘されていたが、医療機関を受診していなかった。うち1人は驚くことに、月間200キロ以上を走り、2年以内のフルマラソンの自己ベストが3時間10分というランナーだった。

 佐藤医師は「大会では自己ベストへの意識や、人との競走など、攻撃的な交感神経が働き、緊張、亢進(こうしん)状態になりがち。過度な心負荷が2時間、3時間と続くと、練習で症状が出ない人でも出ることがある。中高年はどうしても動脈硬化が進んでいる。ぜひメディカルチェックを」と訴える。

 少なくとも心臓の超音波検査とトレッドミル(ランニングマシン)による運動負荷心電図検査が必要で、これで心筋症や冠動脈狭窄による狭心症はある程度見つけられるという。しかし「検査は短時間。マラソンはかなりの負荷を長時間心臓にかけるため、これらの検査で大丈夫という保証はない」と言い、「高血圧症や脂質異常症、糖尿病などが指摘されている人は、医師の指導を受けながらのランニングを」と話す。

 この連載の最大のテーマは「中高年が安全に走るには?」だった。私はその答えを「臆病になること」と考える。私は主治医の診察と検査を2カ月に1度は必ず受け、大がかりな検査も何度も受けている。死が怖いのだ。「死の深淵(しんえん)から走って逃げる」。このレースは命ある限り続くのだ。

 (神村正史)

     *

 佐藤隆久(さとう・たかひさ) 1953年10月、徳島県生まれ。徳島大学医学部卒。専門は循環器内科。心電図の研究で医学博士を取得した。徳島県徳島西医師会のホームページに「マラソン中の突然死」と題して調査研究を掲載。35歳でフルマラソンを始め、30回以上完走し、自己ベストは4時間12秒。100キロウルトラマラソンも15回完走し、12時間37分25秒の自己ベストを持つ。160キロのサイクルマラソンも10回完走している。

 <ジョグ日記>

 この連載は昨年5月25日付でスタートしました。筆者としては、1回を1キロと考え、フルマラソン(42.195キロ=42回+α)までは書きたいと願ってきました。本日で42回。ゴール(最終回)まであとトラック約半周です。来週は、お世話になっている主治医の富田文(ふみし)医師、北海道教育大の杉山喜一教授、そして中標津十二楽走の富田光夫会長に寄稿をいただき、本連載を走り終える予定です。

PR情報

ここから広告です

PR注目情報

北海道報道センターから

北海道アサヒ・コムへようこそ。
身のまわりの出来事やニュース、情報などをメールでお寄せ下さい(添付ファイルはご遠慮下さい)
メールはこちらから

朝日新聞 北海道報道センター 公式ツイッター

注目コンテンツ

  • 写真

    【&Travel】送り火見物に自然派たこ焼き

    京都ゆるり休日さんぽ

  • 写真

    【&w】ココナツ香るゴーヤ炒め

    料理家冷水希三子の何食べたい

  • 写真

    【&Travel】エコラベル宿で自然と一つに

    楽しいひとり温泉 長野・松本

  • 写真

    【&M】これぞ老舗の貫禄のカレー!

    口福のカレー

  • 写真

    【&w】見て見ぬふりの問題を改めて

    ほんやのほん

  • 写真

    好書好日ミュージアムグッズの魅力は

    大澤夏美が「チカラ」2を刊行

  • 写真

    論座山口二郎・神津里季生対談上

    今日の編集長おすすめ記事

  • 写真

    アエラスタイルマガジン爽やかな風が体を通り抜ける

    シテラのジャケット

  • 写真

    Aging Gracefully大人の女性必見のアイテム

    いつまでも美しく健やかに

  • 写真

    GLOBE+兵器や軍需物資輸出が最高

    韓国の防衛産業はなぜ好調か

  • 写真

    sippo野犬2匹預かりボランティア

    同じ環境下でも真逆の性格

  • 働き方・就活

  • 転職情報 朝日求人ウェブ