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改元のとき 北海道【改元のとき 北海道】

平成⇔令和、迷いの中で

写真: 拡大

写真:札幌の中心街にたたずむ文月悠光さん=いずれも佐久間泰雄撮影 拡大札幌の中心街にたたずむ文月悠光さん=いずれも佐久間泰雄撮影

写真:当時から通っているカフェは本に囲まれている 拡大当時から通っているカフェは本に囲まれている

 「令和」の時代が始まった。新しい「時代」に一歩踏み出したり、立ち止まったり、流れに身を任せてみたり。道内でも様々な人たちが、それぞれの「令和」を迎えた。平成生まれの詩人、文月悠光さん(27)=東京在住=と生まれ育った札幌の街を歩き、「平成」と「令和」への思いを語ってもらった。

■平成⇔令和、迷いの中で 詩人・文月悠光さん(27)が語る 

 日付が変わった札幌・大通公園の噴水の前で、文月さんは立ち止まった。「街の景色は昨日と変わらないけど、急に昭和も平成も遠くなったような気がします」。そうつぶやいて、噴き上がる水を見つめた。

 平成半ば過ぎの2005(平成17)年の秋。中学2年生だった文月さんはこの場所で原稿用紙を握りしめ、自作の詩を朗読した。ギターをかき鳴らす若い路上パフォーマーにも刺激をされ、公園の一角に立ち「言葉」を解き放った。

 大通公園のそばには当時、20世紀末に破綻(はたん)した旧北海道拓殖銀行のビルがそびえていた。14年を経たいま、あのビルはない。

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 文月さんは1991(平成3)年に生まれた。阪神・淡路大震災や地下鉄サリン事件などの明確な記憶はないが、2001(平成13)年の米同時多発テロの前後からは、世界で、国内で起きた重大な出来事が、痛みや違和感を伴って刻み込まれている。

 平成の時代はインターネットが爆発的に普及し、コミュニケーションの方法が様変わりした。デジタルとアナログが混在する時代。中学生の時に携帯電話を持ち、ブログに詩をつづった。学校では、スクールカーストの底辺で、自分自身を出せないでいた。でも、ネットというバーチャルな世界の中では、名前を変えて何度でもやり直せた。そうして「詩人、文月悠光」は産声を上げた。

 ネットを通じて遠方にいる顔も知らない詩人とつながり、同人誌を発行した。一方で、足しげく通った博物館やアート作品の展示場では、作家とじかに出会いも重ねた。当時から通っているカフェが札幌市内にある。ギャラリーが併設された店内には、心地よいギターの音色が流れる。ここで詩を書き、本を読み、アートに触れた。

 いまも当時も、詩を書くときはシャープペンシルでノートに書く。「アナログな作業は、その過程が残る。ネットに載せるものも、紙に書くことで俯瞰(ふかん)できます」。コーヒーをすすりながら文月さんは話す。

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 18歳の春、進学のために上京した。ケータイは、いつしかスマホに変わり、SNSが表現の世界にも影響を与えた。

 無数の「人」と「場所」の組み合わせが、画面からあふれる。そんな時代を生きる自分たちを「新しい世代の価値観が、それまでの世代と大きく違っているわけではないと思う。環境や媒体が変わっただけで、物事の受け止め方はそれほど変わっていないのでは」。

 新元号が発表されて1カ月。平成を懐かしみ、令和を待ち望む雰囲気が街を、ネットを覆った。そして迎えた令和の初日。日付が変わる瞬間は、様々なイベントであふれた。

 「ある種の祝祭のようだ」と、文月さんは言う。自身の世代は経験したことのない改元。「昭和から平成の時は随分と違ったと聞きます。令和への改元は、どのように受け止めればいいのか、正直まだ迷っています」と苦笑する。

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 「ここ10年ほど世の中の課題とされてきたこと、例えば被災地の復興や子育て世代の支援などが、平成という『箱』に入れられて、時代の波に押し流されるのではないか、そんな不安もあります。新しい時代がスタートしたという前向きなとらえ方より、後ろを振り返りながらの方がいいのかもしれない」

 「令和が20年、30年と経つ中で、自分が生きてきた平成がいろんな角度で語られ、照らし出されてくると思う。そのとき、平成がどう解釈されていくのか。それが楽しみです」

 「詩」を生業に時代と向き合う文月さんは、平成の終わりにツイッターにこう書き込んだ。

 「平成生まれなので、平成への思い入れはそれなりに強い」「これから先10年は、様々な語りによって平成⇔令和を行き来する。その最中で懐かしい再会もあるに違いない」

 言葉を携えて、文月さんはこの日始まった令和の時を歩いてゆく。

 (今泉奏)

     ◇

 ふづき・ゆみ 1991(平成3)年、札幌市生まれ。中学時代にネットや雑誌に詩の投稿を始め、札幌旭丘高校3年で発表した第一詩集「適切な世界の適切ならざる私」(思潮社)で中原中也賞を史上最年少で受賞。近著に「臆病な詩人、街へ出る。」(立東舎)。

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