メインメニューをとばして、このページの本文エリアへ

08月23日朝日新聞デジタル朝刊記事一覧へ(朝5時更新)

新着記事一覧へ

このエントリーをはてなブックマークに追加

金曜「ライフ・楽しむ」【わたし色】

共感する力と人間らしさ 美馬のゆり

写真: 拡大

 ●公立はこだて未来大教授・美馬のゆりさん

 1年ほど前、人間にできて人工知能にできないことは何だろうと、SF作家の友人と話をしました。その時彼は、「共感」と答えました。プロの将棋の世界ではすでに、人工知能相手に練習しているといいます。私たちの日常に入ってくる日もすぐそこです。

 そもそも共感とは何でしょうか。英語に訳そうとすると、「sympathy(シンパシー)」あるいは、「empathy(エンパシー)」と二つあることに気づきます。前者は「同情」とも言い換えられます。後者には他者の立場に身を置き、積極的に相手を理解しようとする、といった意味があります。つまり共感とは、他者の感情だけでなく、意図を理解し、共有することなのでしょう。

  □  ■  □

 数年前、人工知能やロボットの普及によって無くなる仕事に関する論文が話題になりました。そこから、子どもたちがなくならない仕事に就けるよう教育すべきだ、大人も機械に置き換わらないよう新たなことを学ぶ必要がある、などとされました。

 最近話題になっている深層学習という人工知能の技術は、写真や音声のような複雑なパターンを、意味をもつ記号や数値として「まとめる技術」です。人間の意識や意図、ましてや他者に対する気遣いのようなものを組み込んでいるわけではありません。一方、人と人のつながりを意識することで成り立っている職業はなんでしょうか。

 看護師、介護福祉士、旅客機の客室乗務員、ホテルの案内係などが思い当たります。これらの仕事には、感情を抑制することや緊張、忍耐などが必要で、精神的なストレスが多い割に、賃金が低いものが多くあります。最近これらの労働を、肉体労働、頭脳労働に続く、第3の概念「感情労働」とよび、社会問題となっています。

 医療分野における人工知能技術の応用は、遺伝子解析や総合診療支援、画像診断、医薬品開発などで既に始まっています。これらが進んでくると、共感が求められる職種の方が賃金が高くなる逆転現象が起こる可能性もあります。

  □  ■  □

 重要なのは、相手の思いに寄り添い同情するだけにとどまらず、共感によって意図を理解し、そこから問題を見いだし、解決していく力。ある時は仲間を見つけて問題を共有し、解決に向けて行動を起こすことです。

 ここでいう共感は、忖度(そんたく)とは異なります。特定の個人の利益を考えるのではなく、背後に潜む、根源的な、より大きな問題を見つけ解決すること。それが、有意義な人生を送り、多様で寛容で創造的な社会の実現に向かうと信じています。

PR情報

ここから広告です

PR注目情報

北海道報道センターから

北海道アサヒ・コムへようこそ。
身のまわりの出来事やニュース、情報などをメールでお寄せ下さい(添付ファイルはご遠慮下さい)
メールはこちらから

朝日新聞 北海道報道センター 公式ツイッター

注目コンテンツ