朝日新聞デジタル：アメフット高校日本一　関学　中尾昌治監督 - 兵庫

アメフット高校日本一　関学　中尾昌治監督

グラウンドで練習する選手と中尾昌治監督＝西宮市上ケ原一番町

昨年１２月のクリスマスボウルで２連覇を果たした関西学院高等部＝本人提供

昨年１２月、アメリカンフットボールの高校日本一を決める「クリスマスボウル」で、関西学院が早大学院（東京）を破り、２年連続１８度目の優勝を果たした。中尾昌治監督（５０）に、２００３、０４年の連覇以来、優勝から遠ざかっていたチームを復活させた指導法や強さの理由を聞いた。

　――２年連続の高校日本一。決勝では昨年６月にひざの靱帯（じん・たい）を断裂した八瀬（や・せ）慶人主将を試合終了直前に出場させました

　選手は八瀬主将を決勝に連れて行こうと団結し、彼もチームをどう鼓舞すればいいかを本を読んで考えていました。この試合にかける思いは彼が一番強かった。けがが悪化する状況ではなかったので出場させました。

　――２０１４年、１０年ぶりに頂点に返り咲きました。復活へ何かを変えたのですか

　ここ数年、昨春の共学化にむけて仕事が忙しかったため、なかなかグラウンドで指導できませんでした。１３年には全国選手権準決勝で敗れました。相手を十分に研究できず、パスをいつもよりインターセプトされました。選手のミスではなく、私の戦略やプレーの選択が相手の守りに対応できていませんでした。

　１４年度からはこれまでのＯＢの大学生コーチに加え、社会人ＯＢに継続的にコーチとして来てもらいました。最新の戦術を採り入れ、選手の動きの精度をより高めるのが狙いでした。

　高校日本一を経験した社会人ＯＢらが新たな戦術を授けて、選手の力を引き出してくれました。２連覇した選手の多くは一昨年の優勝を経験しており、劣勢の展開でも自信を持ってプレーしていたように思います。今年は仕事が落ち着いたこともあり、私と大学生コーチが主に教える指導体制に戻しました。

　――指導する際に心がけていることは

　選手が自ら考えることです。週２回ほど開くミーティングでは、試合や練習で生まれた反省点や対策をコーチが選手に詰め込むのではなく、一緒に考えさせています。選手は試合で活躍することに目を奪われがちです。否定はしませんが、３年間で自分の力をどうやって伸ばすかも考えて欲しいですね。

　――大学まで競技を続け、卒業後はいったん銀行に就職しました

　教員志望でしたが、まずは社会の仕組みを知ろうと銀行に入りました。仕事をするうち、教員やフットボールの指導者になりたい思いが強くなり、４年ほどで退職しました。その後、関西学院大で社会科の教員免許を取り、高等部に赴任しました。

　――日本でのアメリカンフットボールの現状をどうみていますか

　昔と比べると小学生への指導が盛んになり、普及する土壌ができつつあるように感じています。とはいえ、サッカーやラグビーの人気に押されがちなので、メディアでもっと取りあげてもらえるようにしたいですね。

◆　なかお・まさはる　１９６５年７月生まれ。西宮市出身。関西学院の高等部からアメリカンフットボールを本格的に始め、ランニングバック（ＲＢ）で活躍した。関西学院大では１、２年時に大学日本一を決める「甲子園ボウル」で優勝した。９４年から高等部の監督に就任し、これまで５度、高校日本一に導いた。

◆◆取材を終えて

　グラウンドでの指導は主にＯＢの大学生コーチが担い、試合中の重要な局面では中尾監督が判断する。コーチで関西学院大４年の松竹直人さんも「チームの現状を的確に分析してくれる」と恩師を頼りにしている。監督もコーチも関西学院高出身。監督は「オール関学で一体になれた」と振り返っていたが、その団結力も強さの理由の一つではないかと感じた。

（大川洋輔）

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