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各支局の話題【農は楽し 特区第1号の現場から】

(73)「域学連携」養父から

写真:「養父での取り組みを成功させ、モデルにしたい」と語る衛藤彬史さん=養父市八鹿町八鹿 拡大「養父での取り組みを成功させ、モデルにしたい」と語る衛藤彬史さん=養父市八鹿町八鹿

 「いい人が来てくれました」と、養父市役所で広瀬栄市長から1年余り前に紹介されたのが京都大学大学院生の衛藤彬史(あき・ふみ)さん(28)だった。

 学究を続けながら、養父市大屋町に住み込み、同市地域おこし協力隊として活動。その後、市長や「田舎暮らし倶楽部」の西垣憲志代表(64)らから衛藤さんの活躍は聞いていたのだが、このほど「今年1月より神戸大学農学研究科の学術研究員として職を得た」との知らせをもらった。衛藤さんの取り組みは養父に役立ったばかりでなく、「研究」として認められたわけだ。

 衛藤さんは東京の生まれ育ち。「農村計画」や「地域おこし」を専門的に学ぶうちに「農村に住んだこともなくて何がわかるのか」という思いが自身の中に強まっていた。その時にニュースで知ったのが、養父市の農業特区の指定だった。

 学生でも協力隊になれることを確認し、2014年10月、養父でも山深い大屋町中間の古民家に移住した。近くの名所「天滝」が気に入ったこともあった。

 協力隊員としての任務は、誰もが参加でき、広範的に情報発信できる「ソーシャルメディア」を使った村づくり。「フェイスブックを使っていない人に、上手に使ってもらおう」と考えた。

 衛藤さんの提案で高柳地区自治協議会のホームページ(HP)と衛藤さんや西垣代表のフェイスブックをリンクしたところ、変化が起きた。西垣さんが作ったというHPへのアクセスが増え、1日3件ほどから多いときは1千件ほどになった。田舎暮らし倶楽部が作物の収穫体験会などを計画すると、たちまち参加者が定員いっぱいになった。「以前は行事をホームページとチラシでPRしてましたが、今ではチラシがなくても済むようになった」と西垣代表は話す。

 まだある。

 「移住のサポートをしながらも、『仕事はありますか』と聞かれると、『仕事はハローワークで探してください』としか言えない」。西垣代表らの悩みを聞いた衛藤さんは、耕作放棄地を解消するため、在来種の大豆「八鹿浅黄」の生産に乗り出している西垣代表らの取り組みに注目した。農業の6次産業化にも使える国の補助制度を紹介、協力して「八鹿浅黄プロジェクト」を立ち上げた。みそなどに加工する作業場が市内に4月に完成見込みで、今年はいくらかでも「雇用」もうまれそうだ。

 衛藤さんはいま、週の大半は篠山市で過ごし、神戸大学篠山フィールドステーションで地域と大学が協力する「域学連携」に取り組んでいる。近く京都の大学寮は引き払って篠山に住居を探す予定だが、大屋での住まいも続け、今後も田舎暮らし倶楽部のコンサルタントを続ける。養父市の特区の取り組みが「中山間地農業の改革拠点」のモデルづくりなら、衛藤さんや西垣代表らは豊かな田舎暮らしへのモデルづくりであり、両者は切っても切り離せない関係とも言える。

 時間の流れやその使い方で大屋での生活にゆとりを感じる一方で、交通の不便さに「正直、田舎の一人暮らしは難しい」とも思っている衛藤さん。養父でのソーシャルメディアの活用に始まり、在来種作物の6次産業化で耕作放棄地の解消や雇用創出ができれば、豊かな田舎暮らしのモデル地区になると確信している。

(甲斐俊作)

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