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私のこだわり【猫 比名祥子記者】

3:室生犀星の愛した「ジイノ」

写真:イラスト・伊藤真理子さん 拡大イラスト・伊藤真理子さん

写真:室生犀星と「火鉢猫」こと愛猫「ジイノ」=室生犀星記念館提供 拡大室生犀星と「火鉢猫」こと愛猫「ジイノ」=室生犀星記念館提供

写真:室生犀星記念館の入り口には、「火鉢猫」こと「ジイノ」の立体作品も。中央は人気のポストカード=金沢市千日町 拡大室生犀星記念館の入り口には、「火鉢猫」こと「ジイノ」の立体作品も。中央は人気のポストカード=金沢市千日町

◆生き物に注ぐ優しい目◆

 猫という存在は、著名人をも魅了してきた。金沢三文豪の1人、室生犀星(1889〜1962)もそうだ。生涯を通じ多くの猫を飼い、愛らしい写真も残っている。書斎でくつろぐ犀星の横で、火鉢に両前脚をかけ気持ちよさそうに眠る愛猫は「ジイノ」だ。

 室生犀星記念館(金沢市千日町)には、この写真に魅せられた猫好きたちが全国から訪れるという。学芸員の嶋田亜砂子さん(44)は「犀星は生き物が大好きで、猫以外にも犬も鳥も魚も虫も、全部好きでした」。

 館が制作し配っている「室生家の犬猫年譜」を見せてもらい、驚いた。犀星が39歳の年から、本人や家族が東京の自宅や軽井沢の別荘で飼ってきた犬3匹、猫10匹弱が写真とともにずらり。中でもやっぱり、「火鉢猫」と呼ばれるジイノの写真のかわいさは目をひく。

 私をはじめ、猫好きな人は猫の幸せな寝姿を見るのが大好きだ。特に冬、寒さが苦手な猫が暖を取りながら目を細め、ふくふくと丸くなる姿は格別にかわいい。

 ジイノは1957年、犀星の東京・馬込の自宅の庭に迷い込んできたオスの子猫。犀星の長女・朝子さんが、イタリア映画に登場する少年に似ていることから「アンジェリーノ」と名付け、いつの間にか「ジイノ」になったという。

 朝子さんの著書「うち猫 そと猫」を読むと、ジイノが火鉢猫になった経緯がわかる。冬、火鉢の前で両足をそろえ居眠りを始めたジイノに対し、もっと近づいたら暖かいだろうと思った犀星が、背中とお尻の間をそっと押した。すると、ジイノの左足が火鉢のふちにかかり、右足もそえられて、ちょうど両足を火にかざしているようになった。ジイノは以後、よくその体勢を取るようになったという。生き物を優しく見つめる詩や童話を多く残した犀星らしいエピソードだ。

 今、館の入り口ではこのジイノを模した立体作品が飾られ、記念撮影をすることができる。彫刻家で金沢美術工芸大学非常勤講師の渡辺秀亮(ひであき)さん(43)が、館からの依頼で2014年に完成させた。自身も実家で猫を飼うという渡辺さんは「実際の猫の動きを研究して作った。ジイノの毛並みは羊毛のフェルトを使ってあたたかさを出すなど、犀星と猫のなごやかな雰囲気を表現しました。ぜひ一緒に写真を撮ってほしい」。

 館では記念グッズも人気だ。ジイノや妻とみ子の愛猫ミュン子などの写真に犀星の詩や俳句を添え6年前に発売したポストカード(100円)4種は今も1カ月に100枚売れる。犀星の描いた猫柄のハンカチ(1080円)やジイノのしおり(100円、いずれも税込み)などもあり電話注文もできる。

 室生犀星記念館(076・245・1108)は午前9時半〜午後5時。一般300円、65歳以上200円、高校生以下無料。2階には犀星や朝子さんの作品をゆっくり読めるスペースもあり、猫好きには至福の時間が過ごせること請け合いだ。

(比名祥子)

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