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明治維新150周年【いざなう維新】

離島編7 奄美大島 黒糖地獄の中の英雄

写真:ソテツに触れる和田昭穂さん。白い中央部の中に実が詰まっている=奄美市笠利町 拡大ソテツに触れる和田昭穂さん。白い中央部の中に実が詰まっている=奄美市笠利町

写真:丸田南里の墓の前に立つ元野景一さん=奄美市名瀬 拡大丸田南里の墓の前に立つ元野景一さん=奄美市名瀬

写真:笹森儀助の顕彰碑を見上げる奄美市の実業家竹山眞一郎さん。「(笹森の)功績を伝えたい」と建立費を拠出した=龍郷町龍郷 拡大笹森儀助の顕彰碑を見上げる奄美市の実業家竹山眞一郎さん。「(笹森の)功績を伝えたい」と建立費を拠出した=龍郷町龍郷

 薩摩藩政下で「黒糖地獄」と呼ばれる過酷なサトウキビの収奪にさらされた奄美群島。その苦難が明治維新後も続くなか、島民を支えた英雄がいたと聞き、ゆかりの地を訪ねた。

 まず向かったのが、奄美大島北部の奄美市笠利町にある打田原集落。「あれが島人の命の恩人」。斜面に生えるソテツを指さしながら、製塩業の和田昭穂さん(85)が教えてくれた。

 幾度も食糧難に見舞われた島民は、「ナリ」と呼ぶソテツの実や幹から取れるデンプンをおかゆにして飢えをしのいできた。そんな歴史の継承と地域おこしを兼ね、同集落では約2年半前、ソテツがゆを提供する食堂を始めた。

 その中心となった和田さんは、ナリに含まれる毒の抜き方や製粉などの工程をマニュアル化し、住民に作業を委託。ナリ粉を使った天ぷらや団子などの商品化にも挑戦しているという。

 では、その味は。おかゆを試食させてもらうと、ほのかな甘みがあり、失礼ながら予想よりもおいしい。和田さんはたんぱく質や鉄分が豊富なナリ粉は健康食品でもあるとし、「島の宝として育てたい」と話す。

     *

 「歴史的な人物。ぜひ知ってもらいたい」。熱く語る奄美市議で詩人の元野景一さん(70)の案内で、次は市立名瀬小学校そばの墓地へ。墓石の主は「丸田南里」。どんな人物なのか。

 文献によると、丸田は幕末の1851年、名瀬生まれ。長崎で活躍した貿易商トーマス・グラバーに誘われ、14歳で英国に密航したとされる。ちょうど、グラバーが関わって薩摩藩の白糖工場が名瀬に建った時期だが、実際の2人の関係や渡航先ははっきりしない。

 約10年後、海外で見聞を広めて帰島した丸田は憤った。黒糖地獄の元凶だった為政者による砂糖の独占が事実上、維新の世でも続いていたからだ。

 砂糖を市場で売れば、大きな利益を生む。明治政府は砂糖の自由売買を通達したが、薩摩藩を継いだ鹿児島県は利権を手放さなかった。豪商と結んで「大島商社」を設立。島民代表と契約したという形で同社に砂糖売買を独占させ、安値で島民から買い上げた。鹿児島士族の保護のため、西郷隆盛もこれを後押ししたとされる。遠島中に奄美の苦境を知ったはずだが、島を切り捨てたともいえた。

 島民はこの仕組みに怒り、自由売買を求める「勝手世(かってゆ)運動」を展開。「なんぞ鹿児島商人一手の下に拘束をうくる(うける)理あらんや」。丸田はそんな鋭い弁舌で中心人物となったという。

 「運動は悲劇も生んだ」と元野さん。請願のため鹿児島本土に渡った55人は投獄され、多くが西南戦争に従軍させられた。生きて島に戻ったのはわずかだという。丸田も投獄され、暴行を受けた。それでも運動は続き、1878年に自由売買を勝ち取っている。

     *

 勝手世運動は勝利したが、奄美の苦悩は終わらなかった。サトウキビの不作や別会社による独占などで、貨幣経済に慣れていなかった島民は借金地獄に苦しむことになる。

 最後に足を運んだ龍郷町には、その借金返済に尽くした笹森儀助の顕彰碑が建つ。青森出身の笹森は明治政府の命で南西諸島を調査し、圧政や疫病などに苦しむ民衆の様子を「南嶋探験」に記した。その経験を買われ、1894年から奄美大島の島司(現在の県大島支庁長)を4年間務め、借金返済や糖業振興、伝染病対策など島民側に立った施策を進めた。

 顕彰碑は町の元教育長の宏洲(ひろしま)弘さん(81)の呼びかけで今年6月に建立。来年の明治維新150年の節目が「島民から謝意を示すチャンス」と考えたという。

 島民を支えた英雄。その紹介を別々にしてくれた3人が口をそろえた指摘が心に残る。「歴史には光と陰がある。維新を光だけでなく、多面的にみてほしい」

 (外尾誠)

 =この項終わり

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