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明治維新150周年【いざなう維新】

新年編4 西郷の教え 今なお山形で

写真:西郷隆盛と菅実秀の対話座像=山形県酒田市 拡大西郷隆盛と菅実秀の対話座像=山形県酒田市

写真:西郷隆盛の書を前に、南洲翁遺訓を朗読する菅秀二さん=山形県鶴岡市 拡大西郷隆盛の書を前に、南洲翁遺訓を朗読する菅秀二さん=山形県鶴岡市

写真:西郷隆盛をまつる南洲神社=山形県酒田市 拡大西郷隆盛をまつる南洲神社=山形県酒田市

 政治や政治家のあり方などについて、西郷隆盛との問答をまとめた「南洲翁遺訓」。現在はインターネットでも購入できるこの本は1890(明治23)年、戊辰戦争で西郷ら新政府軍と戦った庄内藩(山形県)の人たちの手で刊行された。敵として戦った西郷の姿と教えは、今もなお山形で受け継がれている。

 西郷をまつる「南洲神社」は国内に四つある。鹿児島市、沖永良部島の和泊町、宮崎県都城市、そして山形県酒田市だ。

 同市の南洲神社を訪れた。鳥居をくぐってまっすぐ進むと、拝殿の左隣に2人の男が正座して向かい合う像があった。庄内藩の家老、菅実秀(すげさねひで)が西郷を鹿児島に訪れた様子を描いた「徳の交わり」という銅像だ。

 創建は1976年。庄内藩士の手による南洲翁遺訓を広めようと、地元出身の故長谷川信夫氏が私財を投じて自宅に建てた。隣接する南洲会館には西郷直筆の書や愛用の器など約40点を展示。なかには南洲翁遺訓の初版第1刷りもある。会館では月1回、西郷の精神などを学ぶ勉強会も催している。

 南洲神社の芳名帳をめくると、北海道や愛知県など東北以外の地名が並ぶ。神社を運営する荘内南洲会の阿曽昇・常務理事(69)は、毎日2〜3時間は西郷に関する本を読むという。「西郷の魅力は一言では言えない。知れば知るほどわからないからこそ、魅力なんでしょう」

     *

 庄内藩と西郷は、敵同士として出会った。

 庄内藩は東北諸藩などでつくる奥羽越列藩同盟に加わり、薩摩・長州などの官軍と敵対。激戦の末に降伏したが、朝敵とされた庄内藩に下された処分は軽く、それが西郷の指示と知った庄内藩士たちは感動したという。

 それから、藩主の酒井忠篤や家老の菅実秀をはじめ、多くの藩士と西郷との交流が始まる。政府から離れて鹿児島に戻った西郷がつくった私学校にも庄内藩の留学生がおり、西南戦争で西郷と戦死している。

 西郷は西南戦争で「逆賊」となったが、1889(明治22)年に正三位が贈られて名誉が回復されたことを受け、庄内藩家老の菅らが中心となって南洲翁遺訓の編纂(へんさん)に着手した。

 下敷きになったのは、庄内藩士らが西郷から直接聞き取った内容をまとめたメモ書きなど。約10カ月かけて完成し、1千部刷られた初版本は庄内藩士が全国を行脚して配ったという。

 初版本の1冊を、菅実秀の玄孫(やしゃご)にあたる菅秀二さん(71)=山形県鶴岡市=が所有している。「誰に言われたわけでもなく、庄内藩士たちが自発的に西郷の教えを筆録し、その集積を全国に広めた。刊行に至った経緯が大切だと思う」

 藩校としては東北で唯一現存する庄内藩の致道館の近くにある致道博物館の酒井忠久館長(71)によると、庄内藩では自発的な学習と、得意なところを伸ばすことが重んじられたという。「西郷の教えを受け入れる素養があったからこそ、交流を深めることができたのでは」と話す。

     *

 毎年、西郷の命日には酒田市の南洲神社に約100人が集まり、菅実秀の命日には致道博物館で西郷と菅の肖像画を飾って2人を追悼しているという。そして明治維新、戊辰戦争から150年にあたって、西郷と庄内のゆかりを紹介するイベントなどが増えている。

 昨年11月、西郷のひ孫の西郷隆夫さんが初めて山形県内で講演。12月には鹿児島市の維新ふるさと館が菅秀二さんを招いてシンポジウムを開催した。致道博物館や酒田の豪商・本間家の敷地に併設された本間美術館(酒田市)などでも、企画展の計画を進めている。

 菅さんは「西郷さんは宗教家で哲学家、政治家で軍人でもある。これほど多方面にわたって、大きな徳量を持った人は歴代いなかったのでは。これからも西郷さんのような人が出てきてほしい」。(井東礁)

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