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企画特集 2【記者推し!】

真っ黒い温泉

写真:銭湯「太平館」で真っ黒い温泉につかる常連客ら=横浜市港北区、西畑志朗撮影 拡大銭湯「太平館」で真っ黒い温泉につかる常連客ら=横浜市港北区、西畑志朗撮影

 470円の料金を払って浴場に入ると、真っ黒な湯船が二つ並んでいる。近づくと底は全く見えない。これが根強いファンがいる「黒湯」だ。

 体を洗って湯船に入ろうとするが、勇気がいる。記者は温泉が好きで、白く濁った湯や茶色の湯にも入ったが、真っ黒は初めてだ。とりあえず下から泡が吹いている湯船に足を入れる。浅いので一気に体全体を沈める。「うーっ」。やや熱めの湯で背中にしみる。

 横浜市港北区大曽根の商店街にある「太平館」。瓦屋根が昔ながらの風情を残す銭湯だ。

 さらさらとした湯に、手を10センチほど沈めるともう見えない。地下約80メートルからくみ上げて温めた温泉だが、枯れた葉や草が地中で分解された腐植質(ふ・しょく・しつ)のために、暗黒色の湯になるという。

 隣の浴槽にも入ってみる。こちらは狭いが深くて、段があるので座ることができる。首までつかるとぐんぐんと体が温まる。

 5分ぐらいしかつかっていなくても体がほっかほっかだ。顔や手、足先までピンク色に染まっている。「さっぱりするし、よく温まる」と常連客の男性(52)。家族でよく利用する男性(38)は「最初は真っ黒なので驚きましたが、今は慣れました」と話す。

 ここ綱島温泉には1960年代、70軒を超える温泉旅館があった。大正時代の初めに鶴見川近くで源泉が見つかったとされ、26年に東京横浜電鉄神奈川線の綱島温泉駅が開業すると、たくさんの旅館が生まれた。「東京の奥座敷」として人気を集めた。

 だが、64年に東海道新幹線が開通すると、箱根や熱海の温泉に足を延ばす人が増え、客足が遠のいた。いま、宿泊施設はなくなり、温泉街の面影はない。地下の温泉をくみ上げて利用している公衆浴場としては太平館のほか、日吉湯(横浜市港北区日吉本町)などがある。

 太平館を経営する谷口昭一さん(83)は石川県出身。妻光子さん(79)の父親から銭湯を受け継いだ。「妻と2人で何とかやっているよ。お客さんに入ってもらえればうれしいから」と谷口さん。

 66年に建て替え、湯と水が出るカランが男湯と女湯のそれぞれに45個もある。周辺は戦後、住宅地として開発され、風呂のないアパート住人らでにぎわった。建て替え当時は1日約800人の利用があったが、内風呂の普及から、今では1日約50人だという。

 午後6時過ぎ、男湯の客は5、6人。ゆっくりと温泉につかり、皆さん、実に気持ちよさそうだ。壁には雄大な富士山や海沿いの松。世界遺産を構成する名勝、「三保の松原」を描いたものだという。

 銭湯の入り口には、詩人田村隆一の詩句が書かれている。「銭湯すたれば 人情もすたる 銭湯を知らない子供たちに 集団生活のルールとマナーを教えよ」。確かにアットホームな雰囲気があふれている。父親と来た子どもに「大きくなったね」と話しかける客や、七五三の記念写真を持参する客もいた。

 シャッターには親子が風呂に入る絵に「いいもんだ! つきあいのびのび 町内温泉」と書かれている。太平館も後継難というが、都市部にある近所の温泉として、これからも頑張ってもらいたい。

◇綱島温泉・太平館

 営業時間は午後3時半から午後10時半まで。定休日は毎週金曜日。

 泉質はナトリウム―炭酸水素塩冷鉱泉(旧泉質名・純重曹泉)で切り傷、末梢(まっ・しょう)循環障害、冷え性、皮膚乾燥症に効くとされる。主成分は重曹という。

(高木和男)

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