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企画特集 1【ルポ かながわ】

最先端医療 技磨く拠点

写真: 拡大

写真:カテーテル操作の技術を指導する弘前大学の奥村教授(右)=川崎市川崎区 拡大カテーテル操作の技術を指導する弘前大学の奥村教授(右)=川崎市川崎区

写真:模擬臓器の説明をする後藤センター長=川崎市川崎区 拡大模擬臓器の説明をする後藤センター長=川崎市川崎区

 川崎市の臨海部にある生命科学の研究拠点「キングスカイフロント」。再生医療や遺伝子治療の研究も進む地に2014年8月、ジョンソン・エンド・ジョンソンが医療従事者のトレーニング施設「東京サイエンスセンター」をオープンした。

 「はい、そこでクロックして(時計回りに回して)。焦らないで、ゆっくりでいいですよ」

 講師を務める弘前大学大学院医学研究科教授の奥村謙さん(64)の声が研修室に響く。画面を見ながらカテーテルを操作する医師らは真剣そのもの。

 「もう少し、引きましょう。そう、上手です」

 笑顔がこぼれた。

 2月下旬の日曜日、カテーテルを足の付け根の血管から通し、心臓に到達させて不整脈を治療するトレーニングがあった。奥村さんは「アブレーション」というこの手術の第一人者だ。

 「(被爆国の)日本人こそ、被曝(ひ・ばく)量を減らさないといけません」

 心臓に達した後はX線を使わない奥村さんの手法は、これまでの方法と比べて画期的に放射線の被曝量を減少させた。患者はもちろん、医師も安全で、環境への影響も減らすことができた。

 「安全で確実な技術を若い人たちに伝えたい」と奥村さん。センターで講師を務めるのは8回目だ。

 福岡県久留米市から訪れた折田義也医師(39)は「ごく一部の医師しかできなかった手術が、こうした研修で広がるのは、いいことです」と話す。筑波大学付属病院の太田千尋医師(36)は「患者さんのために新しい手法を奥村先生に習いたかった」。

 病院の診療がない土日を中心に週に約200人が集まり、様々な医療のトレーニングに取り組む。視察なども含めると、オープンから1年半で訪れた人は3万5千人を超えた。外科や整形外科だけといった研修施設はあるが、多岐にわたる診療の研修が1カ所でできるのは、日本ではここだけで、世界でもまれという。

 中国、台湾、韓国、インドネシア、カンボジア、インドなど、海外から訪れる人も増えている。受け入れるスタッフは40人ほどで、英語を使える人のほか、中国語ができる人も2人いる。

 後藤肇克(とし・かつ)センター長(49)は「今後、海外から年間500人を受け入れる計画です」。

◇模擬臓器で手術 まるで本物

 東京サイエンスセンターで研修がない平日、後藤センター長の案内で施設を回った。10台の手術台が並ぶ手術室に入ると、骸骨や足の一部、肺や肝臓などがずらり。いずれも模擬臓器だ。上半分がきれいに切り取られた頭の骨格標本もあり、一瞬、どっきりする。肝臓に触れた時の弾力は人体を確かに思わせる。

 手術台の一つには「チャッピー」と名付けられた人体骨格標本があった。肋骨(ろっ・こつ)の中には肺と心臓の模擬臓器。後藤さんが肺切除の操作を始めた。画面に映し出された肺は、血管が赤く網の目のように広がる。トレーニングでは「チャッピー」を模擬皮膚で囲み、より人体に近づける。後藤さんがアイデアを出し、反映させた工夫の一つ。樹脂製の模擬臓器が使えることもセンターの特徴だ。

 臓器は複数社との共同開発で、数千円から十数万円するものまであり、症例に合わせた臓器も特注する。1回の手術で使い終える。

 3Dプリンターの登場で、本物の臓器に近づけることが可能になった。医師とセンターのスタッフがアイデアを伝え、日々改良している。後藤さんは「より実際の臨床に近い環境でシミュレーションできるように努めています。命に関わる手術ですから、患者の安全のために、ここでしっかり手術に習熟してほしい」

 遠隔地で映像を見ながら学べるシステムも備える。「地方でも都会と同じような治療が受けられるように」というのが後藤センター長たちの願いだ。器具などは日進月歩で改良が進むため、操作技術の理解や訓練などが不可欠で、習得すべき技術が多い。研修を終えた医師が「おかげで自信をもって治療ができます」と伝えて笑顔で帰って行く。後藤さんたちスタッフが、やりがいを感じる瞬間だという。

◇東京サイエンスセンター

 腹腔(ふく・くう)鏡手術や胸腔鏡手術をはじめ、血管内治療、整形外科のプログラムや糖尿病のケア推進など、ジョンソン・エンド・ジョンソンが提供する最先端の医療機器について、医師らに安全で適正な使い方を教える。外科、整形外科、脳神経外科、呼吸器外科、循環器科、産婦人科、泌尿器科などさまざまな分野の医師が研修を受けている。

(阿部俊幸)

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