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企画特集 2【列島をあるく】

北欧流子育て支援 各地へ

写真: 拡大

写真:千葉県浦安市の「ネウボラ」では、出産前の女性が産後の生活などについて相談していた=9月27日 拡大千葉県浦安市の「ネウボラ」では、出産前の女性が産後の生活などについて相談していた=9月27日

写真:フィンランドでネウボラに通った安藤由紀子さん。「ネウボラもよかったけど、それ以上に子育てしやすい雰囲気が社会全体にあった」と振り返る=東京都世田谷区 拡大フィンランドでネウボラに通った安藤由紀子さん。「ネウボラもよかったけど、それ以上に子育てしやすい雰囲気が社会全体にあった」と振り返る=東京都世田谷区

■国境を越えて

 ◇「ネウボラ」担当保健師に相談

 かかりつけの保健師が、出産前から小学校入学まで相談に乗ってくれる「ネウボラ」という子育て支援制度がフィンランドにある。行政が親子に丁寧に関わることで、児童虐待の兆候を早く見つけたり、子育て世帯の孤立を防いだりすることが狙いだ。国内の自治体でも、これにならって「子育てしやすい街」を目指す取り組みが始まっている。

 9月下旬、千葉県浦安市。綿石智子さん(37)が、長女(1)を連れて市役所近くの「子育て応援ルーム」を訪れた。11日後に出産予定日を迎える。出迎えた子育てケアマネジャーの原田まどかさん(38)が「おなかがぱんぱんで、子育てが大変じゃない?」「1人目の時と違うのは、上の子がいるってことですよ」などと語りかけた。産後の生活などについて40分ほど話した後、育児支援のサービスを一覧にした「ケアプラン」を手渡した。

 「一人ひとり環境が全く異なるので、よく話を聞いて、必要なアドバイスは何かを考えています」と原田さん。相談を終えた綿石さんは「ついつい一人の世界にこもってしまいがちなので、話を聞いてもらって安心できます」と話す。

 浦安市が「浦安版ネウボラ」を始めたのは2014年度。市内のすべての妊産婦を対象に、妊娠期、出産前後、1歳の誕生日前後の計3回、市の研修を受けた「子育てケアマネジャー」らが面談する。市内は転出入者が多く、孤立しがちな母親が相談しやすい態勢を整えるのが狙いだ。

 「ネウボラ」はフィンランド語で「アドバイスする場所」を意味する。フィンランドでは、妊婦一人ひとりに担当のかかりつけ保健師がつき、出産前から小学校に上がるまで家族全体の相談相手になる。妊娠期間中に10回前後、1歳になるまでは毎月のように、その後も半年〜1年に1回ほど定期健診を受けるという。

 浦安市は「かかりつけ保健師」まではできず、相談回数も3回と限られている。妊婦健診や乳児健診は、医療機関や市による集団受診を利用するという事情もある。市少子化対策室の並木美砂子室長は「限られた回数の面談であっても、行政ができるだけ多くの親子に寄り添っていきたい」と話す。

 浦安市の取り組みには注目が集まり、毎月のように各地の自治体が視察に訪れる。三重県名張市や東京都世田谷区、埼玉県和光市などで、すでに「ご当地ネウボラ」が始まっている。

■フィンランド 待機児童ゼロ・父親8割が育休

 本場はどうなのか。

 東京都世田谷区の安藤由紀子さん(43)は、2011年にフィンランドで長男を出産。家族でネウボラに通った。子どもを床に落としてしまったり、子どもに高熱が出たりして慌てると、担当の保健師に電話をかけてアドバイスをもらった。「気軽に相談でき、安心感がありました」

 ところが、子どもが2歳の時に日本に帰国すると環境は全く違った。初めて経験する集団の乳児健診。たくさんの子どもが一斉に集められ、流れ作業のように回る。ゆっくり相談できる雰囲気ではなかった。

 違うのは相談態勢だけではない。フィンランドはだれでも保育所に入れるし、父親が育児のために早く帰宅するのも見慣れた光景だった。帰国後は認可保育所に空きがなく、最初は高額な認可外保育所を利用した。家事や育児の主力になろうとする男性は少なく、社会には「子育てをしている女性」という特定のカテゴリーが存在していた。

 「男性も含めた働き方やサポートのあり方を考えないと、日本の子育て環境は変わらない」と安藤さんは感じている。

 フィンランド大使館によると、フィンランドではすべての子どもの保育所を用意することが法律で自治体に義務づけられているため、待機児童はいない。父親の8割が育児休業を取得し、育児をする男性を特別視するような「イクメン」という言葉は存在しない。

 手厚い子育て支援を支えるのは、24%の消費税など高い税金だ。国全体に「子どもは将来の納税者」という共通認識があり、子育て支援に対する理解があるという。大使館の担当者は「将来、稼いで税金を納めてもらうために、健やかに育つ環境を整えることは重要。フィンランドの社会は、そうやって回っているんです」と語る。

(田中聡子)

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