朝日新聞デジタル：清泉女学院（３） - 神奈川

清泉女学院（３）

英語教師の発音に魅了され、英語を専攻した酒井

松木のもう一つの名「ミネハハ」は先住民の言葉に由来する

■役に立ちたいと活動　いつしか芽

　ドアに絵本の表紙が貼られた、東京都港区のマンションの一室。遠方に住む病児や家族が都内の病院で治療を受ける時、東京での我が家として滞在できる「ちいさいおうち」だ。

　運営する酒井三貴子（７３、１９６３年卒）は、海軍工機学校だった校舎の暗い廊下を、修道服から手の先だけを出したスペイン人シスターが、ひざをついて黙々と磨いていた姿を思い出す。教壇には立たず、掃除や調理だけを担当する役目。「二度と祖国に帰らない覚悟でなぜ日本にいらしたのか、と」

　子育てを終えて「ちいさいおうち」を始め、様々な出会いを経た今は、そんな生き方も近くに感じる。「何かお役に立ちたい、という思い。シスターや先生方の姿に体現されていた」

　そんな思いを後輩たちにも伝えたいと、同窓生と、清泉の母体・聖心侍女修道会のシスターから聞き取りを続け、１０冊にまとめた。「全ての人が幸せになるように働くこと。それが愛」の言葉を残した創立者ラファエラ・マリアにつながった人々から、自分たち生徒の心に「まかれたもの」が確かにあり、いつしか芽が出る、と感じる。

　中１の宗教の授業で初めてキリスト教に触れ、「これは信じるに値する」と直感した中村葉子（７０、６６年卒）は、聖心侍女修道会のシスターとなった。

　体育祭の仮装行列で、流行歌「こんにちは赤ちゃん」に合わせて赤ちゃんに扮し、喝采を浴びた学年。多才な同級生に声援を送る側だった中村は、日曜日には東京都足立区の児童養護施設に通った。掃除をしたり、入所する子どもたちと遊んだり。「温かい家庭に育った一人として、困っている人のために働きたい」という思いを強くした。

　当時知り合ったボランティア仲間は、東ティモールで女子学生寮の運営や開発プロジェクトに奔走する今も、支援してくれる。「志を同じくする方々との出会いは、人生の中で何にも代えがたい宝」と振り返る。

　「フジカラーで写そ」「サッポロ一番」「グリコ」――。約３千曲のＣＭソングを歌った松木美音（６２、７４年卒）。

　清泉小学校の入学式で君が代を歌った時、担任がその声に驚き、「ぜひ音楽の道へ」と両親に告げたことが、歌の才への気付き。小３からカトリック教会の合唱団に入り、ＮＨＫの合唱番組にも出場した。中３の時には、栄光学園のバンドとコンサートを開き、「開校以来のこと」とシスターたちの目を丸くさせた。クラス対抗の合唱祭では指揮をしながら突然振り返ってソロも歌い、優勝した。

　通信簿に並ぶのは３や４、５。音楽だけが１０で、「これは１０段階なのかい？」と父親を青ざめさせた。友人に見せていた教師のモノマネが評判を呼び、教師自身に「私のもやって」と頼まれたことも。「純粋で無邪気で素直」に育った人気者は、４０歳を過ぎてから商業音楽をやめ、「ミネハハ」の名でオリジナル曲を歌い始めた。「誰もが外側ばかり向く時代。でも大切なものは自分の中に全てあるんだと、歌を通して届けたい」

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