朝日新聞デジタル：「私の減災地図」作り、広めたい　 - 神奈川

「私の減災地図」作り、広めたい　

■鈴木光さん　一般社団法人・減災ラボ代表理事

　気温３５度という盛夏のある日、横浜市港北区の師岡町会館に、近隣の小学生や保護者、町内会役員など２０人余りが集まった。用意されたスクリーンの前に、穏やかな笑顔で立ったのは鈴木光さん（４３）。防災・減災のプロフェッショナルである。

　日本は南北に長い島国。海、山、川、平野と変化に富み、四季おりおりの自然にも恵まれている。しかし、恵むばかりが自然ではない。時として牙をむく。地震、津波、洪水、近年はそこに地球温暖化が加わり、予想もつかない大災害が続いている。

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　災害に対する意識を変えなければと鈴木さんが強く思うようになったきっかけは２０１１（平成２３）年に起きた東日本大震災だった。防災関連の会社に勤めていたが、退社してフリーになり、被災地へ通った。車が燃えながら海を漂っている。その光景を見ながら、泊まり込みでボランティアを続けた。その後も、大災害が起きるたびに被災地へ足を運んだ。これまでやってきた防災は正しかったのだろうか。そんな疑問にかられずにはいられなかった。

　ハザードマップはどこの行政も出している。だが範囲が広いせいか、意外に個人の足下が見えてこない。自宅、仕事先、学校など、災害時、自分がそこにいる可能性が高い場所こそ、もっと知っておくべきではないか。それぞれの「ｍｙ減災マップ」という構想はそこから生まれた。

　町会館での講義は「災害ってなに？」から始まった。スクリーンに阪神・淡路大震災の生々しい動画が映し出される。物が四方八方から落ちてくる震度７の揺れ。身を守るすべもなく、しゃがみ込む人々。子どもたちも息をのむ。「いま、なにが起きた？」「こんな時、どうする？」。鈴木さんは子どもたちへの問いかけを挟みながら、映像を解説していく。

　次はマップ作り。テーブルにはクリアファイルに入った近隣の拡大地図４枚、航空写真、五色の油性ペン、シールなどが用意されている。まずは１枚目の地図に、クリアファイルの上から、大きな道路や川などをペンで色分けしてなぞっていき、避難場所になる公園や避難所を確認する。

　「え？　そんなとこに川がある？」「水路だよ。ザリガニ獲ったもん」「そういえば！」と、大人も子どもも一緒に記憶を辿（たど）る。

　次のマップは危険箇所となる崖くずれや川の浸水範囲を塗る。どれもクリアファイルの上から描きこみ、さらに自宅、学校、コンビニなどのシールを貼っていく。こうして自分の地域状況を確認し、自分で作った、オリジナルの減災マップが出来上がる。

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　２時間ちょっとの講義は少しも飽きない。大人も子どもも、自分の身近な場所を脳裏にしっかり刻み込んだ。参加者の連帯感も自然に生まれていた。

　「最近は学校や行政も減災マップ作りに協力してくれてます。小さな単位で、なるべくたくさん。それが大事だと思ってます」

　私もそう思う。災害は遠くではなく、足元で起きるのだ。

（文・山崎洋子、画・安藤ニキ）

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