メインメニューをとばして、このページの本文エリアへ

01月18日朝日新聞デジタル朝刊記事一覧へ(朝5時更新)

新着記事一覧へ

このエントリーをはてなブックマークに追加
mixiチェック

企画特集 3【神奈川の記憶】

(135)「神奈川の記憶」展、きょう開幕

写真:キリシタンの信仰画も展示され、「神奈川の記憶」展の準備が整った=横浜市都筑区 拡大キリシタンの信仰画も展示され、「神奈川の記憶」展の準備が整った=横浜市都筑区

■身近な歴史、分かりやすく

◇キリシタン信仰画 急きょ公開

 「神奈川の記憶」展が23日、横浜市歴史博物館(市営地下鉄・センター北駅)で開幕する。「歴史を見つめる新聞記者の視点」をテーマに、連載記事の題材となった歴史資料や文化財が展示される。ジャーナリストの視点と、実物ならではの存在感という博物館の持ち味を合わせ、身近な歴史を分かりやすく立体的に提示しようとの試みだ。年明け1月14日までの開催。

     *

 潜伏キリシタンが世界遺産になった年、クリスマスに向け街がにぎわい始めたのに合わせるように展示が決まったのが澤田美喜記念館(大磯町)のキリシタン信仰画。「ご聖体の連祷(れんとう)と黙想の図」と名づけられた。

 「千五百九十二年」と書かれており、制作年とみられる。豊臣秀吉の軍が朝鮮に攻め入った年だ。記念館と横浜市歴史博物館の共同調査で、その時代の作と考えられるとの結論に達し、急きょ公開が決まった。

 「黙想の図」はイエスとマリアの生涯を描いた15の場面で構成される。1549年にキリスト教は日本に伝わり、1590年代は信徒が増えた時期。日本の風習を重視する方針をイエズス会が打ち出した成果だとされるが、描かれた人物や風俗は日本的だ。

 このような信仰画が各地で描かれ、祈りを捧げたのだろうと思わせる。

 「ご聖体の連祷」はミサで用いる「聖体=パン」をたたえる祈りの言葉。ラテン語の言葉を仮名文字で丁寧に記していた。

 どこで作られ、どう伝来したのか。どこから入手したのか。すべては謎だ。

 それには理由がある。

 澤田美喜(1901〜80)がキリシタン資料の収集に乗り出したのは36年。隠れキリシタンゆかりの地を訪ね、遺物が大切にされていないことに心を痛めたからだった。三菱財閥を築いた岩崎家出身の美喜に経済的な制約はなく、すぐに有数の規模のコレクションとなった。

 お金持ちの道楽ではなかった。「コレクションには澤田美喜の強い思いがこもっています」と記念館の西田恵子館長は語る。

 敗戦の混乱の中、エリザベス・サンダース・ホームを創設して孤児の保護に乗り出し、2千人に上る子どもの「母親」となった。

 だが孤立無援だった。財政的に困窮し、家宝の類を売り払い、カーテンを外しおしめを作り、茶室をつぶしてミルクを温める薪にしたと伝わる。それでもキリシタンのコレクションだけは手放さなかった。もっと厳しい環境でも信仰を守り抜いた先人がいた――との思いが支えだった。

 コレクションには「玉石混交」の評がつきまとう。ホームの運営と同じで分け隔てなく受け入れたからのようだ。整理を思い立った矢先に美喜は急死。来歴を知る人はなく、調査されることもなく今日に至った。

 手つかずだったコレクションの転機となったのは日本刀の鍔(つば)の整理だった。日本刀剣保存会理事の中西祐彦さんが3年かけて調査。359点のうち50点ほどをキリシタン鍔と分類した。驚くような品が含まれていた。調査の機運が高まり、手始めとして取り組んだのが今回の信仰画だった。

 「調査は始まったばかりです。多くの人の意見を聞いて進めたい」と西田さん。これまでの調査結果の報告会を25日午後1時から博物館講堂で開催する。

     *

 「神奈川の記憶」展では、「幻の画家」笠木治郎吉の作品が7点展示される。明治・大正期に横浜で活動した治郎吉だが、県内で作品が展示されるのは今回が初めてだ。

 横須賀で盗撮された明治天皇の写真、藤沢の遊行寺に伝わった後醍醐天皇の肖像、三浦半島で確認された津波の痕跡の地層なども展示される。

 新聞記者が伝えるべき歴史とは何かを考え、足元に眠る記憶を掘り起こしたいと歩き続けて3年余。教科書で習った歴史とは違うかもしれない。聞いたことのない出来事や人ばかりかもしれない。異なる視点から歴史を眺める機会にしてもらえれば幸いである。

(渡辺延志)

 ■「神奈川の記憶」展の関連事業

 ◇キリシタン信仰画の調査報告会=25日午後1時、定員150人

 ◇ミニシンポ「幻の画家笠木治郎吉とその時代」=12月15日午後1時半▽「新たな歴史像を求めて―原始・古代史の新展開」=12月24日午後1時半

 ◇講座「地域の視点から見た明治150年」=12月16日午後1時▽「関東学院のコベル宣教師とその時代」=1月6日午後1時

 会場は報告会、ミニシンポ、講座とも同博物館講堂。先着順で30分前から受け付ける。資料代500円。展示解説は12月9日、23日、1月14日のいずれも午後2時から。

ここから広告です

横浜総局から

身近なニュース、教えてください。
身の回りの出来事、ニュースや記事へのご感想などをお寄せください。
【E-mail:kanagawa@asahi.com】
★ツイッターでの情報発信も始めました。
https://twitter.com/asahi_yokohama

朝日新聞 横浜総局 公式ツイッター

注目コンテンツ

  • 写真

    【&BAZAAR】炊飯も無水調理もおまかせ

    半世紀以上愛される無水鍋

  • 写真

    【&TRAVEL】1万足を超える靴の博物館

    トロントでミュージアム巡り

  • 写真

    【&M】絶景広がる魅惑のダンボ地区

    昔の危険な匂いは消えた……

  • 写真

    【&w】クラフトとデザインの橋渡し

    川島蓉子のひとむすび

  • 写真

    好書好日サリンジャーの見事な人生

    映画「ライ麦畑の反逆児」公開

  • 写真

    WEBRONZAZOZO前澤ポエムにご注意

    今日の編集長おすすめ記事

  • 写真

    アエラスタイルマガジン上海ユニークなリノベホテル

    古きよき時代と現代性を体験

  • 写真

    T JAPAN対談・水晶玉子×濱 美奈子

    激動の時代、どう生きる?

  • 写真

    GLOBE+王家の末裔、王位に意欲?

    イタリアで今も続く争い

  • 写真

    sippo交通事故で大けがの子猫

    懸命な治療、リハビリで快復

  • 働き方・就活

  • 転職情報 朝日求人ウェブ