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今週のこの人【この人】

後藤和文さん(鹿児島大学農学部元教授)

 マンモス復活に夢託す 鹿児島大学農学部元教授(53歳)

 ――マンモスの復活を考えたきっかけは

 90年、凍結と融解を繰り返して完全に殺した牛の精子を使って、赤ちゃん牛を生ませるのに成功した。これをアメリカの学会で発表したら、新聞記者から「シベリアにはマンモスが氷づけになっている。それから赤ちゃんが生まれるんじゃないか」といわれた。思いもよらなかった。それがきっかけ。

 ――これまでの成果は

 ロシアと商取引のある宮崎市の会社社長と意気投合し、「マンモス復活協会」ができたのが96年。これまで4回、シベリアの永久凍土でマンモスを探し、牙や歯など300以上の骨と、前脚と皮膚をみつけた。

 皮膚は氷づけで新鮮だったが、細胞を調べてみたら、中の遺伝子は壊れていた。今年もロシアの研究グループに予備調査をしてもらい、その結果を受けて7〜8月にシベリアに行くことになると思う。目的は、雄マンモスの精子を見つけること。

 ――どうして、精子なのか

 中の遺伝子が壊れていなければ、死んだ精子でも赤ちゃんは生ませられる。精子の中の遺伝子は、ほかの細胞と比べても壊れにくいんですよ。

 ――なかなか、難しいのでは

 20世紀には3頭のマンモスがまるごと見つかっている。最近では88年に赤ちゃんマンモスがみつかったが、惜しいことに凍結保存されなかった。シベリアの永久凍土は泥が凍ったようなもので有機物が腐敗しにくい。可能性は大いにある。

 ――具体的には、どうやってマンモスを誕生させるのか

 一番現実的なのが、顕微授精を使った方法。氷づけのマンモスから採取した精子を象の卵子に注入して、マンモスの血を半分受け継いだ雌の象を誕生させる。その象の卵子に、さらにマンモスの精子を入れる。これを繰り返し、マンモスに限りなく近い動物をよみがえらせる。現代の科学技術でも十分実現できる。

 ――映画「ジュラシック・パーク」のようなクローン技術による復活は

 クローンにはマンモスの体細胞の遺伝子が必要。だが、精子と違って普通の細胞の遺伝子は壊れやすい。何万年も冷凍保存されていた体細胞の遺伝子が、壊れていないとはまず考えられない。

 ジュラシック・パークのように、壊れた遺伝子をつなぎ合わせるのは、話としてはおもしろいんだけど、今の科学技術では不可能。どうつなぎ合わせればいいのかも、わからんわけですよね。方法としては二つあっても、顕微授精の方が現実的。

 ――マンモス復活。その意義は

 復活は、あくまでも最終的な目標。その過程で、様々なことがわかってくる。

 現在、冷凍保存されている絶滅しそうな野生動物の精子や卵子が、果たして何年間もつのか。何万年も前に凍結されたマンモスを調べることで、わかる。マンモスの遺伝子を象などと比較して、進化の過程を遺伝子レベルで調べることができる。マンモスと同時代に生きていたアジア象やアフリカ象は、今でも生きている。なぜマンモスが絶滅したのか。その答えが、みつかるかもしれない。

 過去だけでなく、現在から未来につながっているのが、マンモス復活プロジェクト。私にとっては、一生の夢であり、いきがいですね。

   *

 ごとう・かずふみ 熊本市出身。鹿児島大助教授だった90年、世界で初めて、死んだ精子から生命を誕生させた。同大教授だった98年に退職。現在、熊本市の画図幼稚園で園長を務める。マンモス復活協会の学術部代表。専門は動物発生工学。著書に「マンモスが現代によみがえる」「マンモス復活大作戦」「子どもが輝くとき」など。

 ○赤ちゃんにあう、その日心待ちに

 幼稚園の広場で写真を撮っていると、「園長せんせぇ〜」と園児が集まってくる。

 「おお〜、すごいな」

 にこやかに、子どもたちをほめる後藤さん。正直、取材前に抱いていた「鹿児島大元教授」のいかめしいイメージとは違っていた。(それに、予想以上に、若かった)

 後藤さんが鹿児島大を依願退職したのは98年。当時47歳だった。専門の動物発生工学は、人間の不妊治療の技術と密接に関係している。退職のわけを尋ねると、「新技術で生命を誕生させても、子どもが育つ環境が悪かったら、なんにもならない。教授のイスにどかんと座るのも、向いていなかったしね」。

 1万年以上氷づけになった遺伝子が、正常に機能するのか。科学者の探求心から始まったマンモス復活計画。だが、「マンモスにあいたい」と子どもたちにせがまれるうちに、自分もマンモスの赤ちゃんにあう日を夢見るようになったという。

 後藤さんが、子どもたちにマンモスの赤ちゃんにあった話をする日を、僕も心待ちにしています。
 (渡辺翔太郎)

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