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今週のこの人【この人】

阿南誠志さん(登山専門店「シェルパ」経営)

  登山専門店「シェルパ」経営(56歳)

  −−山とかかわるようになったいきさつは?

  中学を出て、熊本市の繊維問屋に住み込みで就職した。その社長に久住山(大分)に連れていかれたのが最初。「こんにちは」と山で交わすあいさつが新鮮で、のめり込んだ。約40年前だ。当時は運動靴しか持たず、足首まである米軍の払い下げ靴にあこがれた。

  −−開業した経緯は

  23歳のころ、東南アジアに旅行した。それが岐路になった。貧困の実情を見て衝撃を受けた。平凡な人生を「これでいいのか」と振り返り、「生きている証し」とは何か、と自問自答した。

  結婚も重なり、「好きな山で食べていこう」と思い立った。仕入れをしただけで蓄えを使い果たし、開店前には一文無しになった。

  −−今や「自然を愛する会」の会員は千人を超え、会主催の登山に活発に参加していますね

  開業直後から客を対象にした山岳会をつくり、登山ツアーを企画した。後に現在の会に発展し、常連客が売り上げに結びついた。山に同行すれば商品を使う姿を見ることもできて、いい関係ができた。

  −−店名の由来は?

  当時はネパールについては何も知らなかったが、「ヒマラヤではシェルパ族が山を案内する」という話を聞き、店の方針とも合っているので引用した。これが不思議な縁になった。以来10回近くネパールを訪れ、先日、会を中心に募った寄付金で、高地の村に学校の校舎を寄付した。

  −−菊鹿町に「やまびこ山村塾」を開き、小学生の山村留学を受け入れたこともあるそうですね

  受験戦争の中で自然に触れずに育つ現代の子どもたちを見て疑問を抱き、86年から11年間続けた。自然のなかで伸びのびと育ってほしかったが、実際は宿題などがあり、制約を受けた。

  「子どもが変わる」と過度の期待をする親もいたが、後に本人がどう生かすかであり、場所と時間の提供が役割だと思っていた。

  −−最近の登山の傾向は?

  中高年が多い。健康維持にはいいが、体力が衰えた人もいて、遭難の危険性をはらんでいる。会では救急法の勉強会を開いているが、不十分だ。事故が起きれば、中高年パーティーによる自力救助は難しい。

  ツアー型登山も人気だ。大手旅行会社が企画する登山ツアーのガイドも引き受けている。しかし、30人以上を率いる場合もあり、何か起きても対応が難しく、危険だ。

  ガイドのだいご味もある。山はパーティー全員が同じつらさを味わうが、それを感動に変えることができる。こんなにうれしいことはない。

  −−登山者に何を求めますか

  登山はスポーツだ。だが、細かいルールはなく、楽しみ方はそれぞれ。だからこそ、マナーが大事だ。

  会は今、山のトイレの問題に取り組んでいる。山小屋の処理には限界があり、紙はもちろん、すべてを持ち帰ることが理想だが、現実は難しい。「山にお世話になる」という姿勢が必要だ。

   −−山はどんな存在ですか

  僕にとってのすべてだ。山と共に育った人生だ。客が喜ぶ企画を作り、山を学ぶことを手伝う。これが自然を愛する会の理念「共育共生」で、自分の生き方でもある。自然との「共生」という意味もある。勉強を惜しまず、自然保護意識の啓発に努めたい。

  高校時代に「楽しそう」と安易に山岳部に入って以来、筆者の登山歴は9年になる。15歳の春、日焼けとしわが印象的な顧問に出会った。「この人なら大丈夫」と瞬間的に感じた。山は危険という先入観が消えた。

  その師と共に、夏、冬と幾多の山を歩いたが、どの山でも安心感があった。02年2月、病に倒れ63歳で亡くなった。「いっぱい山に登れる」。退職時に目を輝かせていた姿が脳裏に残る。

  数カ月後、阿南さんと初めて出会ったとき、「あっ」と思った。豊かな経験が裏付ける風格と、満面の笑みで山の魅力を語る様子に、恩師と同じオーラを感じた。

  先日、阿南夫妻と一緒に山に登った。妻まゆみさん(53)は「仕事に手を抜かない。厳しい言葉もあるが、安心感につながる」と夫を評した。

  にじみ出る信頼感は、時に生命の危険が伴う登山でリーダーに求められる資質だ。阿南さんのもとに多くの人が集う理由に改めて気付いた。

      (金子元希)

  あなん・せいし 高森町出身。登山愛好団体「自然を愛する会」代表。熊本版連載中の「山をたずねて」は同会メンバーが執筆。73年、登山用具店シェルパ・アナンを開く(83年にシェルパに改名後、現在の熊本市新屋敷1丁目に移転)。会主催の登山は、海外を含め年に約400回。

  大分から熊本まで参勤交代の道を歩く企画を20年以上続け、阪神大震災では6千食の炊き出しをした。「いつかヒマラヤの8千メートル峰に登頂したい」。菊鹿町在住。

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