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今週のこの人【この人】

原田正純さん(熊本学園大教授)

  −−「水俣病関西訴訟」で最高裁が7月5日に口頭弁論を開き、国と県の責任を認めた大阪高裁判決を見直す可能性があると言われています

  司法の判断が後退することを心配している。しかし、裁判が長引けば長引くほど、責任を認めようとしない行政の姿勢が際立ってくる。つまり、行政には被害を拡大させた責任だけでなく、償いをしてこなかった責任があるということだ。判決がどう出ても一喜一憂することはないと思う。

  −−56年5月1日の水俣病の公式確認から48年。水俣病が忘れ去られると危惧(き・ぐ)する声もあります

  水俣病が最も多く発生していた水俣市湯堂地区を初めて訪ねたのは、61年。患者はボロボロの家の中に隠れるように生きていた。当時「戦後は終わった」と言われ、日本が経済大国になろうとしている時期だったが、水俣に来て「これが同じ日本か」と、落差に愕然(がく・ぜん)とした。

  公式確認から50年近くたち、水俣にはきれいな海もあればきれいな家も建っている。「水俣病はもう終わった」と思われるかもしれない。だが、弱者の人権は果たして守られてきたのか。水俣病が抱える問題は解決したのではなく、見えにくくなっているだけだ。

  各地で続いた裁判の末、政府は95年に和解による政治決着を選んだが、なぜ、霞が関が動くのに何十年とかかったのか。今も、中央と被害の現場との落差を厳然と感じる。水俣病事件は人権問題であり、環境問題でもある。患者たちを大切にせずに過去の問題として封じてしまったら、水俣病の教訓などあり得ない。

  −−水俣病を通して社会のあり方を考える「水俣学」を02年秋に熊本学園大で開講し、今年3月には講義録も出版されました。手応えは?

  1〜2年で完成する学問だとは思っていない。百年単位で考えないと。市民に開かれた学問を目指している。水俣病を通して弱者の立場、中央と地方の問題などを考える場にしたい。まだまだ手探りの状態。学生にとってみれば、この講座は就職の役に立つわけでも何でもないけれど、10年、20年先に「あの時、こんな話聞いたな」と思い起こしてくれると思う。

  −−カナダやブラジルでも水銀汚染の調査をしていますね

  アメリカや中国など世界中で水銀汚染が起こっている。私たちは「どのような症状をもって水俣病とするのか」を長年議論してきたが、日本でその問題にきちんと決着をつけないと、世界でもあいまいなままになってしまう。そういう意味で日本の責任は大きい。

  水俣の教訓を世界に発信しようと、よく言うが、まず、足元の問題にきちんと対処することだ。

  「私の友人は、私のことをあまり医者だと思ってないかもしれないなあ」と話す。

  被害の現場に出かけて患者と対話し、調査を続ける「フィールドワーク」の研究姿勢は、社会科学に近いものがある。自らも「社会医学的研究」と呼ぶ。「公害は医学の問題というより、社会、経済、政治の問題」と指摘し、「医学者はみんながみんな、医学の世界にのみ閉じこもっていてはいけない」と医学のあり方を説く。

  「水俣病の議論をしていても、患者一人ひとりの顔が浮かんでくる。現場を知っているということは、大きな強みだ」と言う。しかし、最近は講演や大学の講義などで忙しく、患者をじかに診る時間がなかなかとれないそうだ。国という権力と闘ってきた医師が、「知らず知らず、こっちも『権威者』になってしまった」と、つぶやいた。

 (沼田千賀子)

  はらだ・まさずみ 34年鹿児島県生まれ。熊本大医学部卒。熊本大体質医学研究所助教授を経て、99年4月から現職。胎児性水俣病や三井三池炭鉱の一酸化炭素中毒事件、世界各地の水銀汚染の調査研究などにも取り組む。各地の水俣病裁判では被害者支援の立場から証言。「水俣病」(岩波新書)、「水俣が映す世界」(日本評論社)など著作多数。

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