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今週のこの人【この人】

石田泰弘さん(八代市立博物館長)

  −−石田さんにとって、博物館や美術館とはどういう場所ですか?

  子どもが来る場所。生活の中で、親が何げなく子どもを連れて博物館や美術館に来て、何かを感じてくれればそれでいい。その方が、子どもは自分の力で何かを発見する。そのときに見いだせない子がいてもいいんです。

  福岡市美術館の学芸員だったとき、当時小学生だった自分の子どもを、よく館内に放っておいた。すると、美術に興味をなくした。でも親になった今は、自分の子どもを連れて美術館に足を運んでいる。

  美術館などの建物は、近くになければいけない。近くにあり、いいもの(作品)があることが大事です。

  −−館長に就任してまもなく2年。八代での企画展の評価はどうですか?

  昨年は、大阪国立国際美術館コレクション展「20世紀美術への招待」を開いた。ピカソなど、国内外を代表する作品が集まり、昨年の展覧会の中では最も多い5千人の入りだった。

  福岡市美術館では、近、現代美術の紹介をしていた。最後に担当した大英博物館展は、多額の経費がかかったが、約30万人の入場者があり、企画として成り立った。八代の場合、美術館展の「大入り」といえば、2万人が目安です。八代では普通、3千人入ればいい方だと思う。その意味では、3千人以上入った昨年10〜11月の「武家の婚礼−八代・松井家のお嫁入り−」や、昨夏の特別企画「幽霊と妖怪の世界」は「大入り」だった。

  −−福岡市美術館の学芸員だったときは、どんな方針で仕事していたんですか?

  いろんな博物館や美術館の催事を見て、展示のノウハウを学びました。展覧会の企画では、「見にくる人に強烈な印象を与えたい」と、考えてきた。自分がいいと思うもの、内容のある、企画性のある、斬新なものを展覧会に出すことを意識していましたね。

  −−大学時代からずっと浮世絵を研究していますが、何にひかれたのですか?

  江戸時代の浮世絵師がすごかったというよりも、江戸っ子の美意識が高かったということがすばらしい。いい作品だから買う。当時の庶民の高度な美意識が、版元や刷り師、作者を育てた。

  地方は、美意識が十分に発達していない。ただ、意識向上のいい例として、小西行長が築城した麦島城(八代市)の発掘問題を挙げたい。発掘にとどまらず、行政側も保存が大事と気づいた。それは、市民意識がアップしたということだと思う。

  −−学芸員に望むことは

  福岡市美術館の仕事で学んだのは、自分の研究や、良い展覧会を開いていれば、それでいいというものじゃないということ。学芸員は専門的に勉強し、高度な知識を持っている。でも、市民との温度差は意外に大きい。それに気づいていない。

  もう一つは、大学で美術史を教えていると、今の学生には、美術に対する勉強が足りないと感じます。そういう現状を学芸員が認識し、高めるための努力が必要。このままでは美術館は、市民から離れ、つぶれてしまう。

  −−今後の抱負、目標は

  まず、授業の一環で、小学生たちに、ここに来てほしい。バスをチャーターするなどして、来館しやすくしたい。次に、学芸員が自分のやりたい展覧会を積極的にやれるようにしたい。いい研究で、いい論文を書き、実績を上げて欲しい。僕らの世界の評価は、論文でしかないのだから。

  いしだ・やすひろ 42年、徳島市に生まれる。早稲田大第二文学部に入学し、同大学院(美術史専攻)を73年修了。在学中に浮世絵師の写楽にひかれ、後に歌麿研究も始めた。

  73年4月、東京国立文化財研究所(当時)美術部補佐員に採用され、翌年4月から、旧リッカー美術館で学芸員を4年半務めた。79年4月に福岡市美術館採用。学芸課長として企画した大英博物館展は、入場者約30万人と、同館の入場者記録を塗り替えた。03年4月から現職。

  福岡市早良区内に妻との2人暮らし。地下鉄、JRなどを乗り継ぎ、月の半分を八代通いしている。

  小学生のころから、夢は「絵描き」で、中学時代は美術部に。が、東京芸大の受験は3度とも失敗した。進学した早稲田大では美術史を専攻、大学院へも進んだ。

  西洋美術を学んだが、大学時代に「自分は語学力がなく、本物を見てもいない」と挫折しかけたという。2年ほど大学にもあまり行かなかったらしい。

  ところが、東京・神田の書店で、日本美術史の恩師と出会った。雑談で、江戸期の謎の絵師「東洲斎写楽」や「喜多川歌麿」の話を聞いた。「やりがいがある」。当時は写楽や歌麿については、研究者や文献が少なかったことが、この研究に進むことを決意させた。

  修士論文は「写楽、歌麿同人説」。写楽と歌麿は同一人物だったとの説だ。「耳の描き方など共通点がある」という。だが、「同人説」の研究者は少ないという。

  話していると、浮世絵に関心を示す人が1人でも増えるよう願う気持ちが伝わってくる。05年度は、浮世絵の講座を数回に渡り開催することも検討中だ。今年の夏は、八代で、新たな歌麿・写楽論争が展開されるかもしれない。(花房篤司)

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