メインメニューをとばして、このページの本文エリアへ

10月18日朝日新聞デジタル朝刊記事一覧へ(朝5時更新)

新着記事一覧へ

このエントリーをはてなブックマークに追加

今週のこの人【この人】

園村昌弘さん(映画評論家)

  ――映画にのめり込むようになったきっかけは?

  実家が熊本市二本木の花街にあった雑貨屋で、小さい頃から廓(くるわ)の仲居さんや娼妓(しょう・ぎ)、登楼客によく映画に連れて行ってもらっていたそうです。本当に映画を好きになったのは高校1年のときに見たジョン・フォードの「リオ・グランデの砦(とりで)」から。続けて見た「駅馬車」とともに心をわしづかみにされた。その頃は「サンセット大通り」や「史上最大のショウ」などの名作が続々と町の映画館にかかる良い時代だった。大学時代から年平均100本の映画を劇場で見続けています。中学教員時代は、選択授業の時間に生徒に映画の面白さを講義しました。

  ――教員をやめて映画評論の仕事を始めたいきさつを

  映画や小説に触れるうち、いくつもの生活を体験したいと思ったから。行き付けだった喫茶店に共同経営で入ったところ、お客に来た人から声がかかって、映画を紹介する民放の深夜番組に出演しました。ニューヨークロケに引かれて引き受けたが、5年続いたこの番組がきっかけで映画評論の仕事が入るようになり、今はテレビのレギュラー2本と新聞やマンガ雑誌に連載を持っています。

  ――映画評論をどんな思いで発信していますか

  賞を取っているからいい映画じゃない。過大評価されていたり、10年たてば色あせたりする作品はいっぱいある。自分で見る目を持って、一生の財産にできる映画を見つける手がかりにしてくれればと思ってます。

  ――どんな観点で映画を見ていますか

  好き嫌いの基準は好奇心を満たしてくれるかどうか。人間に迫って、ちらりとでもいいから心の核や奥行きを描いて見せてほしい。それが無ければスペクタクルなんて意味がない。「プライベート・ライアン」なんて目くらましだけの大愚作。母親の心情と時代の空気、生きていくことの尊さが描けていればそれでいいのに、大事な中身がちょっとしかない。恋人の死体を背負って砂漠を歩く「情婦マノン」に比べると「セカチュー」は食い足りない。恋愛を描く映画ならそれに徹してほしい。テレビではあまり言えませんが割と辛口で見ます。

  ――印象に残る仕事は?

  黒沢明、小津安二郎監督の葛藤(かっ・とう)を描いた伝記マンガの原作執筆です。両監督らと現場を共にしたカメラマン、脚本家やキャスト40人に3年間かけて取材しました。有馬稲子や若尾文子らそうそうたる顔ぶれでぜいたくな仕事でした。ままならぬ映画制作に苦悩を深める黒沢監督の回は、雑誌連載中から関係者の抗議が殺到しました。大家といえども、血みどろになって映画を作ってほしいという思いで続けました。

  ――ミュージカル熱もすごいですね

  血みどろの訓練の果てに成り立つ洗練へのあこがれですかね。人間は酸素だけ吸って生きるのではなくて、私にとって空気のほかの要素の一つが「洗練」ですね。2年に一度はブロードウエーも訪れます。

  ――最後に、愛してやまないミュージカル映画を10本どうぞ

  絶対入るのはアステアの「バンド・ワゴン」。ジーン・ケリーは「巴里のアメリカ人」「雨に唄(うた)えば」「踊る大紐育(ニュー・ヨーク)」の3本。ボブ・フォッシー関連では「くたばれヤンキース」に「キスミーケイト」「キャバレー」。それからマーロン・ブランドとシナトラの「野郎どもと女たち」。ヨーロッパではバレエもの「赤い靴」と「ホフマン物語」が良いなあ。

 そのむら・まさひろ 熊本市出身。熊本大教育学部を卒業し、59年から中学の国語教師に。28年間続けた教員をやめて87年から同市新市街で喫茶店経営を始める。映画の豊富な知識を生かし、テレビや雑誌で映画評論を手がける。原作を書いた「クロサワ 炎の映画監督・黒澤明伝」で01年度の文化庁メディア芸術祭マンガ部門の優秀賞を受けた。

  ちょうど1年前、熊本市街を散歩中にふらりと入った地下の喫茶店が園村さんの店だった。こちらは熊本に来たばかりで評論家とは知らず、店内に張ってあるポスターから映画の話に。園村さんの博覧強記ぶりに圧倒された。「『掠奪された七人の花嫁』のセットが途中で妙にぼろくなるのはなぜか」といった、こちらの記憶の網にたまたま引っ掛かっている細かな疑問にもぴしぴしと答えを返してくれた。数日後私は、水野晴郎氏に似た映画に異様に詳しいマスターをテレビで見て驚くことになった。

  園村さんが熊本大で3年間続けた映画の講義の年表資料をもらった。ミュージカルの舞台と映画の流れや関連映画を並べたアメリカの西部開拓史が細かい字でびっしりと書き込まれている。マニアックな代物だったが、口ぶりに嫌みがないのは、映画を見る好奇心の先にいつも人間が座っているからだろうか。

  喫茶店の名「ホワイエ」は仏語でロビーの意味。映画館の行き帰りに寄ってほしいという思いを込めたという。(奥村 智司)

PR情報

ここから広告です

PR注目情報

熊本総局から

「熊本アサヒ・コム」へようこそ! 熊本版に掲載されたトップ記事や話題ものを毎日更新しています。身の回りのニュースや情報、記事の感想を、メールでお寄せください。
メールはこちらから

朝日新聞 熊本総局 公式ツイッター

注目コンテンツ

  • 写真

    【&w】カカドゥの不思議な野鳥たち

    ノーザンテリトリー〈PR〉

  • 写真

    【&TRAVEL】遊び心満載の豪華客船

    船上でサーフィン?〈PR〉

  • 写真

    【&M】TEPPEI×ハマ・オカモト

    自分に合った服装とは?

  • 写真

    【&w】劇場鑑賞券を3組6名様に

    「&w」読者プレゼント

  • 写真

    好書好日旅するように異国料理を作る

    宮崎あおいさん初の料理本

  • 写真

    WEBRONZAカーシェア急拡大

    今日の編集長おすすめ記事

  • 写真

    アエラスタイルマガジンこれぞ手軽な手土産の大本命

    手土産に縁起のよい「虎家喜」

  • 写真

    T JAPAN未来を変えるコスメ 第2回

    全米で話題の「CBDオイル」

  • 写真

    GLOBE+注目は年齢差だけではない

    マクロン大統領夫人の実像

  • 写真

    sippo絶滅の危機に瀕するトラ

    生態は猫とほぼ同じ

  • 働き方・就活

  • 転職情報 朝日求人ウェブ