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06月16日朝日新聞デジタル朝刊記事一覧へ(朝5時更新)

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今週のこの人【この人】

安永蕗子さん(荒木精之文化賞受賞歌人)

  −−大病を患った後に短歌を始めたそうですね

  短歌を始めたのは30代半ば。20代の終わりで結核を患い、7年ほど闘病しました。父も母も歌を詠むので、もともと短歌は身近でした。それで、病気が治ったときに、母が「(病気が治ったばかりで)ほかに何もできないだろうから、一日一首ずつ、歌でも作ったら」って。

  「一日一首」と「一つのことを歌え」と、母は言いました。これは短歌の鉄則です。

  −−「一つのことを歌え」とは

  例えば、バラの花が咲いているとすると、咲くということはバラにとっては一大事です。バラが全力投球しているなら、こちらも全力で歌う。隣に咲いているスミレまで詠み込む必要はないんです。

  私はいつも「日常」を歌います。日常とは日常生活のことではなく、日が出て西へ沈む、つまり「日の常なる姿」が「日常」です。日常を歌うということは、太陽の動きや日の光を歌うこと。「事情」や「人情」ではなく自然を歌うんです。

  −−宮中歌会始には、どんな気持ちで臨んできましたか?

  選者の中で女性は私1人ですが、楽しんでやっています。昨年は全国から2万7千首の歌が集まりました。これを一首ずつ見なきゃいけない。7月ごろから忙殺されます。

  力のほどは、上の句を見ただけでわかります。書き出しで、どういう態度で歌っているのかがわかる。短歌は無駄な言葉を捨てないといけない。短いところが魅力ですね。31文字で瞬間をとらえることができるのが、短歌のいいところ。

  −−なぜ熊本で活動を続けているのですか?

  熊本には風景があります。北東には阿蘇がありますよね。世界一の阿蘇です。南には天草。海がある。こんないい土地を離れられますか。現在は江津湖のそばに住んでいます。

   −−県の文化発展に貢献した個人に贈る、荒木精之文化賞(県文化懇話会主催)を受賞し、23日に授賞式があったばかりです。熊本を拠点に活動した作家の故荒木精之さんとは知り合いでいらしたとか

  もともとは、父と荒木先生が知り合いでした。私は36歳の時に第2回角川短歌賞を受賞し、周りから羨望(せん・ぼう)の目で見られて圧迫感を感じた時期もありました。そんなとき、荒木先生は温かい目で見守ってくださいました。

  今でも覚えているのは、「安永さん、あなたはちっとも私に泣きついてこないな」って言われたこと。「泣きつくってなんですか」と聞くと、「女の人は時々、ああだこうだって不満があって泣きついてくるよ」と。「私に不満はありません」と言うと、先生は笑っていました。

  淡々としたおつきあいでしたけど、荒木先生は私の力を信じてくれました。

  やすなが・ふきこ  1920年、熊本市生まれ。教職を経て、父・故信一郎氏が創刊した歌誌「椎(しい)の木」を主宰。56年、第2回角川短歌賞を受賞。県教育委員長などを歴任した。歌集に『魚愁』『青湖』など、エッセー集に『書の歳時記』など。98年から宮中歌会始選者。歌壇の最高賞とも言われる迢空(ちょう・くう)賞など多くの受賞歴がある。

  なぜ、「事情」や「人情」ではなく、自然を詠むのか。

  「生活で語り合うとトラブルが起こる。人情で歌えば憎悪の心が起こる。しかし、自然を歌えば皆一つ。よけいな歌は作る必要はないんです」

  安永さんは、いつも自然に敏感だ。例えば「靴を履くときでも、足元にちょっとした風の動きを感じる」という。

  「冬の空ことなく晴れて北を指すひとり歩みも白雲(はく・うん)のした」。「歩み」が題だった今年の歌会始でも、自然を詠んだ歌を披露した。

  主宰する歌誌「椎(しい)の木」の歌会に書の指導、原稿の執筆やテレビ番組の収録……。多忙で、深夜の午前2時、3時まで仕事をすることもあるという。「忙しい方が歌はできる」のだとか。

  窓から飛ぶ鳥を見ては「北に行くのだな」と思いをはせ、花を見ては色を愛(め)でる。「いつも自然と歌のことを考えている」というエネルギーには、圧倒された。 (沼田 千賀子)

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