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今週のこの人【この人】

宮田昭さん(日赤ERUチームリーダー)

  みやた・あきら 56年長崎市生まれ。熊本大大学院修了後、熊本赤十字病院へ。在ブラジル日本大使館勤務などを経て、現在、同病院集中治療部長と国際医療救援部副部長兼務。96年のアフガニスタン戦傷外科病院勤務以来、コソボ紛争、インド西部地震、イラク戦争、イラン南東部地震など紛争・災害地での医療活動多数。スマトラ沖大地震では日赤ERU(緊急対応ユニット)チームリーダーとして約1カ月間、救援活動に従事した。専門は外科・戦傷外科など。

  ――スマトラ沖大地震発生から3カ月。各国の救援チームは26日撤収でしたが、現地の状況は変わりましたか

  テントから建物に寝泊まりできるようになったとか、野菜が手に入るようになったという変化はある。だが、本質的にはほとんど変わっていない。被災者にとってはずっと「災害時」が続いている。住人の8割が亡くなった地域もある。復旧には少なくとも2年、完全に元に戻るには5年はかかるだろう。

  ――拠点にしたインドネシア・ナングロアチェ州ムラボの印象は?

  カオス(混沌(こん・とん))。海岸線の形が変わり、唯一の道路も崩壊していた。ヘリを降りると、手足に大けがをした兵隊が自動小銃を握って近づいてくる。アチェには独立派もいて、誰がどの立場か全く分からない。イラクやイラン、アフガニスタンのゲリラ活動地域より「やばい」感じがした。

  ――救援活動の内容は?

  県立病院を拠点に手当を始めた。今回は到着が早く、多くの患者を診て、手術もできた。我々が着く頃には既に多くの人が亡くなっていることが多い。待っているのは軽傷で、生きるための水や食べ物、トイレがない、という人たちがほとんど。感染症予防のための予防接種や、そのための被災者の調査などを積極的に行った。

  ――危険を感じましたか

  感じた。最近は前線の無い紛争がほとんど。人々の生活地域が度々戦闘に巻き込まれる。赤十字である以上、自衛隊とも距離を置かねばならず、安全のための情報収集には気を使う。「医療のために来た」「赤十字だ」といっても、100%ではない。

  ――医師の健康管理も難題では?

  その通り。井戸は塩水になってしまっているし、食べ物もない。平時に14〜15リットル必要とされる水は、医師たちは約5リットルでやっていた。高熱を出した医師や、体の異常を訴える医師もいた。交代で休みながら、何とかやってきた。

  ――災害医療に長く取り組んでいますね

  特に自分から進んで、というわけではなかった。96年に偶然、アフガニスタンの戦傷外科病院に派遣され、戦傷外科という分野を勉強した。もともと、医者になったのは「人の役に立ちたい」という思いから。災害の現場は純粋にそれを考えていられるやりがいのある場だった。医療人として「役に立ちたい」という思いを純粋な形で結晶できる。

  ――水俣豪雨災害や中越地震、福岡沖地震と国内でも災害が多発しています

  今一番必要なのは、救助する組織間の連携。消防、警察、自衛隊、赤十字、そして各ボランティアがうまく連動していない。現場では連携しているが、意思決定レベルの連携が足りない。「書類はできています」というのでは足りない。そして行政を動かすためには、やはり住民からの意思表示が必要だ。

  ――熊本で何ができますか

  熊本には自衛隊があり、赤十字病院は日赤が全国に四つ置く国際医療救援の拠点病院の一つ。日赤県支部と熊本市、三角海上保安部などは災害時の相互協力の協定を結んでいる。それでも、それぞれが同じことをやったり、情報が共有できなかったりすることがある。熊本県は災害対策のモデル的な県になりうるはずだ。そのために、自分にできることがあれば力を尽くしたい。

  「正直、行くことにならなきゃいいなあと思っていました」。地震の発生は昨年12月26日。宮田さんは2日後の28日夜、上司から「明日行けるか」と聴かれた。家族に電話し、予定をキャンセル。翌日には13人のチームを率い、ジャカルタに飛んだ。

  96年以降、毎年のように国際援助活動に参加してきた。最近は他機関との調整、交渉をするチームリーダーを任されることが増え、「医者の仕事がなかなかさせてもらえない」と苦笑いする。

  1枚の写真を見せられた。建物や木の破片、そしておびただしい数の遺体が、泥に浮いている。ブラジルの雑誌の1ページだった。「災害直後にはたくさんの報道陣がいて、衝撃的な映像を世界中に配信した。でも1カ月たつと、ほとんどいなくなってしまう。被災地は、これからが大変。報道されないことが、現場にはたくさんあるんです」

  災害対策で、マスコミの役割は大きい。それは責任でもあるのだと、胸に刻んだ。(渡辺淳基)

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