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今週のこの人【この人】

野田功さん

  熊本城は07年末の完成を目指して99年から復元工事中だ。今年2月に完成した飯田丸五階櫓(やぐら)のほか、南大手門、戌亥櫓、未申櫓、元太鼓櫓、西大手門がすでに復元され、残すは本丸御殿大広間のみ。外観は平屋建てだが、構造上は、地下1階地上3階建ての木造建築を約50億円の予算で建てる。

  野田さんは、身長165センチ、体重65キロの小柄な体格。現場では高さ約10メートルに渡された梁の上を命綱一本で歩いて、大工に指示を出す。

  若くして棟梁に任命された時のことを「緊張した。とりあえず毎日を一生懸命働くしかないと思った」と話す。勤めるカワゴエの川越一弘社長は「曲がっている木同士を組み合わせる技を感覚的に覚え込んでいる」と、図面を3次元でとらえる能力の高さを評価する。

  一緒に働いている大工さんも「よけいな話はしない人」と言いながら「仕事に関しては肥後もっこすで職人気質」と信頼を寄せている。
(長崎緑子)

  ――現在取り組んでいる仕事を教えて下さい。

  本丸御殿の復元を4人の棟梁(とう・りょう)を含む21人の大工で進めている。私の担当は図面と現場をつなぐ仕事。図面に合わせて木材の切る場所に印を付け(墨付け)、大工さんに指示を出して加工を頼んでいる。

  ――復元作業の何に苦労しますか。

  全部。建物の規模が大きすぎます。これまでも文化財の修復作業は手がけたことがあるので、昔の建築技術について知識はあります。しかし実際には作業すると、例えば柱1本にノミを入れるにしても削る場所を変える際、重たくて、ちょっと転がすというわけにはいかない。

  他に、石垣の上に土台とする木を置く作業でも、大きい石を並べた表面の凹凸に合わせて木を削る手間がかかる。

  梁(はり)を組む時だって、図面ではある程度まっすぐな梁を想定している。が、実際使うのは樹齢100年以上で直径が太いところでは約1メートルある天然木。曲がっているので、木に合わせた加工をしなければなりません。

  ――工事はどう進めるのですか。

  本丸御殿の建物は一つですが、大工サイドで見ると分解できる。平面では台所、広間、小姓部屋、麒麟(き・りん)長之間、数寄屋棟の五つ、断面では土台、梁まで、屋根の部分という3層に分けて作業しています。

  私たち大工が、ある場所で屋根までの骨組みを造れば、あとは左官さんや瓦屋さんが仕上げていく。しかし新たな史料が出れば、それを根拠に図面や段取りがどんどん変わります。

  ――失敗はありますか。

  使っている木は樹齢100年を超えるヒノキ、ケヤキ、マツ、クリなどで1本が数百万円する。高い物だと約1千万円するのですから失敗なんてできません。

  ――でも、失敗はあるでしょう。

  柱の継ぎ目の加工で、大工が間違えて削り過ぎたことがあります。そういうときはまず、継ぎ目の形を変えて対応できないか考えます。それがだめなら、木を継ぎ足す「埋め木」を考える。でも埋め木は余り良くないので、木材自体を他の場所へ転用することになる。だが、転用を決めると大変。ミスで欠けた木材を調達するのに、設計者に相談するので時間を取られる。工期を守るのも棟梁の仕事なので、頭を切りかえて、取りかかれる場所の仕事を進めるしかない。

  設計者からは工期を守るようにプレッシャーをかけられるが、わざとミスをしたわけではない大工を責めることはできない。中間管理職の板挟み状態です。

  だからこそ、大きな丸太がうまく組み合わさる瞬間は一番うれしい。うれしいというより「これで酒が飲めるばい」と安心できる。

  ――特色や見どころはどこですか。

  「釿(ちょうな)はつり」という方法で表面を削った丸太やその丸太が組まれている様子を地下通路からぜひ見て欲しい。かんなとは違い、曲がった柄の付いたノミを手前に振り下ろしてたたき削った感じの仕上げです。釿という道具自体を復元したので最初は作業が進まなかった。1日木材1本の加工がせいぜい。今では1日2本できるようになったが、慣れた頃に作業が終わり残念です。

  熊本は台風や雨が多いので、今後はその対策に力を入れたい。後世にのこる熊本城ですから、長持ちするように作りたいです。

  のだ・いさお 1969年、岱明町生まれ。玉名工業高校卒業後、88年株式会社カワゴエ(本社・熊本市)に入社。大工の修業をつづけ、02年8月、熊本城の南大手門復元工事で棟梁になる。03年には文化財建造物保存技術協会(東京都文京区)から文化財建造物木工技能者の認定を受けた。熊本市に家族4人暮らし。趣味は旅行。

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