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今週のこの人【この人】

和泉真蔵さん

  和泉さんは、99年6月、熊本地裁のハンセン病国賠訴訟で「患者の隔離が必要なくなったのは遅くとも60年ごろ」と、大島青松園(香川県)の外科医長の立場から証言した。

  証言のきっかけは偶然だった。99年2月、京都大での外来診療を終え、同園に向かう船中で国賠訴訟について話している弁護士にたまたま出会った。原告側代理人だった。参考にしてもらおうと、自分が書いたハンセン病の感染力の弱さなどを示す論文を渡した。すると弁護士から国の答弁書と訴状が送られてきた。

  答弁書を読むと、96年にらい予防法を廃止したにもかかわらず、国は隔離政策の誤りを認めていなかった。

  訴状を読み「論理の駆け引きで原告が国に負ける」という危機感が募った。そこで専門家としてデータや医学的根拠、自身が見た患者の実情に基づいて意見書を書き、法廷で証言した。「原告の主張は正しい。負けたら困る」と思ったからだという。

 淡々とした口調。冷静な話しぶり。その裏側からは、弱い立場の人間への思いやりがにじみ出ているように感じた。(長崎緑子)

  ――熊本県合志町の国立療養所菊池恵楓園(けい・ふう・えん)で5月に設立された「ハンセン病市民学会」代表の1人に選ばれました。

  ハンセン病問題に関する検証会議に参加し、3月に最終報告書を厚労相に提出した。しかし、集めた資料は膨大で、まだやり残したことがある。市民学会に様々な分野の専門家が参加し、残された資料を調べれば、隔離政策のような誤りを繰り返さないための教訓を導き出せるのではないかと期待している。

  ――ハンセン病問題は一応の節目を迎えたのでは。

  おかしなハンセン病理解が、まだ残っている。例えば「ハンセン病は感染しにくい病気だから差別してはいけない」という内容の文書を見たことがある。が、この文書は「感染するなら差別してよい」と解釈することもできる。ハンセン病に限らず、医師は何か新しく病気が生じたとき、まず患者と一般の人が共存できる方法を提言するべきだ。

  ――医者を志したのはいつですか?

  戦後、旧満州から16歳で松山市に帰国したころ。週刊誌の写真特集で、ハンセン病療養所が取り上げられていた。桟橋で、白い帽子に白いマスク、白い前掛け白い靴下、白い靴。頭から足先まで真っ白な防護服のような姿で患者を迎える看護師を見て、「こんなに防護して治療しなければならない人がいるのか」と衝撃を受けた。

  治療を受ける患者の苦しみを想像し、「一番役立つことをしよう」と考え、医師を志した。

  ――療養所や研究所はどんな場所でしたか。

  医師としての力をつけようと外科の臨床を3年間経験してからハンセン病療養所に勤めた。療養所は外界から切り離された世界。けがの治療は下手で、根拠のない断種が行われるなど、医療水準は低かった。

  京都大でハンセン病の外来診療をしていたので、療養所外で患者への差別を感じる機会は多かった。ある患者を知り合いの医師に診療するよう頼むと、「感染の危険はないか」と警戒された。「スタッフが納得しないから」と、うそをついてまで診療を断る医師もいた。

  ――医師をやめようと思ったことは。

  海外留学の成果を国内の学会で発表しても「難しいことを言っている」と言われたり、上司の人事に納得いかなかったり、ハンセン病専門の医師をやめる機会は何度かあった。ただ、自分がいなくなれば患者が困ると思うと、やめられなかった。

  75年ごろ、インドで開かれたハンセン病の国際学会で初めて座長を務め、ようやく専門家としての自信がついた。それから、「ハンセン病はもはや感染病ではない」という意見を論文などで発信するようになった。

  ――現在取り組んでいる研究は。

  ハンセン病療養所を定年退職した02年からは、日本よりハンセン病の患者が多いインドネシアのアイルランガ大熱帯病センターハンセン病研究室に移った。保菌者のうちから発病しそうな人を判別し、予防する方法などを研究している。

  研究で使っているDNA解析器は、日本の国賠訴訟の原告たちが賠償金の一部を寄付して買ってくれたもの。感謝しながら使っている。

  いずみ・しんぞう 37年、旧満州生まれ。大阪市立大医学部を63年に卒業。67年に国立療養所の邑久光明園(お・く・こう・みょう・えん)(岡山県)の医官となる。71年に大島青松園(香川県)に勤めたほか、国内外でハンセン病研究を続ける。現在は国際協力機構(JICA)のシニア海外ボランティアとして、インドネシアで研究している。

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