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今週のこの人【この人】

満屋裕明さん

  みつや・ひろあき 50年、長崎県佐世保市生まれ。75年、熊本大医学部卒。82年に原発性免疫不全症の病態解析で医学博士号を取得し、米国立保健研究所(NIH)、同国立がん研究所(NCI)に勤務。91年からNCI内科療法部門レトロウイルス感染症部長、97年から熊本大医学部内科学第二講座主任教授。自宅のある米国ワシントンと熊本を往復する生活を送っている。

  ――7月に神戸市で開かれた国際学会でエイズ新型薬「AK602」を開発したと発表した。

  1日2回、10日間の短期投与で血中のエイズウイルス量が約100分の1に減ることが確かめられている。アメリカでは「アプラビロック」という名で、臨床試験の最終段階に進んでいる。

  しかし、長期間投与した時の効果や安全性が確認されるには早くても2年はかかる。この間に不測の副作用が判明したり、臨床効果が期待はずれだったりすると開発が中断されるので、まだ開発が成功したとは言えない。

  ――現在使われているエイズ薬との違いは。

  エイズウイルスがヒトの免疫細胞内に入るのを阻害するのが特徴だ。

  エイズウイルスの感染はおよそ4段階に分けられる。(1)エイズウイルスがヒトの免疫細胞へ侵入する(2)ウイルスの遺伝情報であるリボ核酸(RNA)が、ヒトの遺伝物質と同じDNAに変わる(3)そのウイルスDNAはヒトの遺伝子内に組み込まれ、ウイルスの原料となるたんぱく質が作り出される(4)最後に、プロテアーゼという酵素が原料のたんぱく質を加工して、できたウイルス粒子が細胞を破壊して外へ出て次の細胞に感染する。この行程を繰り返し、ウイルスは増殖する。

  現在日本では16種類のエイズ薬が使われているが、性質で二つに分けられる。一つはRNAをDNAに変えるウイルス酵素の働きを阻害するもので10種類。もう一つは、プロテアーゼの働きを阻害するもので6種類。この中から3、4種類を組み合わせて服用する「多剤併用療法」が、現在主流のエイズ治療法。

  だが、それぞれには副作用がある。そのうえ、薬の種類が多く、服用方法がややこしい。また、ずっと薬を飲み続けていると、ウイルスは遺伝子の突然変異を起こすので薬が効かなくなることがある。

  今回開発したエイズ薬が狙っているのは、ヒトの細胞表面にあるCCR5という、ウイルスが細胞に入る際にドアの役目をする部分。侵入をブロックすることで、ウイルスが変異しても薬の効き目は長く続くはずだ。

  ――副作用はどうですか。

  白人の約1%は、新しいエイズ薬の標的となるCCR5を持っていない。したがって、CCR5には特別な機能はないとみられ、その働きを抑えても副作用は少ないと期待している。CCR5を持たない人については、新しいエイズ薬の効果はないと考えられる。

  初期の臨床試験でも、副作用は便が2、3日軟らかくなる程度で、心臓や肝臓などへの副作用はまず無いと確かめられている。

  ――いつから開発に取り組んだのか。

  84年からエイズ薬研究はしていた。今回の新薬は99年から薬品会社と共同で研究をはじめた。主にヒトの培養細胞とエイズウイルスが入った試験管に入れ、効き目を試す実験を試行錯誤しながら繰り返す。これはと思った場合は、エイズウイルスに感染したマウスで効き目を試すなどして、4年がかりで「AK602」にたどり着いた。

  薬品の開発には時間がかかるうえ、副作用などで開発が中止になるリスクもあるが、日本で開発した新薬だから、できるだけ早くこの薬が使えるように努力を続けたい。

  エイズの治療薬開発を84年から米国で始めた。感染経路もはっきりせず、「握手をすると感染する」との流言も飛び交っていた時期。文字通り命がけの研究の中、世界初のエイズ治療薬AZT(アジドチミジン)を開発した。

  現在は、アメリカと日本を往復する日々。「エイズを感染させたマウスにかまれれば、自分もエイズに感染する」という研究現場に身を置きながら学生を指導する満屋教授には、緊張感が漂っている。

  記者が「熊本という土地柄が研究に役立ちましたか」と尋ねると「場所は関係ない。今回のAK602の開発は自分だからできた」と言い切った。真剣勝負をしている人の厳しさと気迫に圧倒された。(長崎緑子)

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