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カフェ日和

暦は日常を彩るスパイス

◇◆エッセイスト 福島礼子◆◇

 歳事や日々の吉凶を記した暦は、古くから私たちの暮らしに根付いてきた。迷信と思いつつも、やはり大安に結婚式を望み、友引には葬儀を避ける。暦の吉凶との縁はなかなか切れそうにない。

 日本の暦の始まりは奈良時代、陰陽寮で中国暦に基づいて作られた。吉兆や禁句が細かく書かれ、平安貴族が方違(かたたが)えをしたのは枕草子などでおなじみ。

 暦博士なる人物が貴族用の暦を作る権利を独占してきたが、鎌倉時代になると、地方暦が生まれてくる。その一つが加茂杉太夫という暦師(こよみし)が作った多気の丹生(にゅう)暦(ごよみ)。仮名を使い簡略化し、版木で刷った摺暦(すりごよみ)が庶民に広まった。中でもコンパクトな柱暦が珍重されたらしい。

 全国的に有名なのは、伊勢神宮が販売した伊勢暦。最初は御師(おんし)が丹生暦を土産として、お札と共に各地を回った。ところが江戸時代に入り、全国に配る暦は膨大で、それではと宇治や山田の暦師が作り始めた。享保年間には伊勢暦は毎年200万部刷られていたというから、その影響力はさぞや大きかったことだろう。

 ところで暦を読むと、まるで異文化体験のようにおもしろい。たとえば庚申(こうしん)の日。人の体内には三尸(さんし)という虫がいて、庚申の日に天に昇って主人の悪事を告げる。そうさせないために、この日は寝ずに皆で起きている日であった。庚申信仰はつい最近まで残り、私の母は夜に庚申さんにお参りに行ったことを覚えている。その夜は、かがり火が焚(た)かれ村中の人々が庚申塚を参拝したそうだ。

 暦も生活のスパイスとして位置づけると、平凡な日常の色づけになる。7月7日は小暑。『暦便覧』には「大暑来れる前なればなり」と書かれている。

 ◎丹生暦、伊勢暦の資料は多気町立勢和郷土資料館にあります。また現在の暦は神宮暦、高島暦などで親しまれています。

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