メインメニューをとばして、このページの本文エリアへ

06月26日朝日新聞デジタル朝刊記事一覧へ(朝5時更新)

新着記事一覧へ

このエントリーをはてなブックマークに追加
mixiチェック

ぐるり東海 三重尾鷲通信

漁村の食堂 活気呼ぶ

写真:網干場は魚を味わいながら、海が一望できる絶好のロケーションだ=2018年11月24日午後0時27分、三重県尾鷲市九鬼町、広部憲太郎撮影 拡大網干場は魚を味わいながら、海が一望できる絶好のロケーションだ=2018年11月24日午後0時27分、三重県尾鷲市九鬼町、広部憲太郎撮影

写真:豊田宙也さん=2018年11月7日午後3時20分、三重県尾鷲市九鬼町、広部憲太郎撮影 拡大豊田宙也さん=2018年11月7日午後3時20分、三重県尾鷲市九鬼町、広部憲太郎撮影

写真:今年7月、古民家にトンガ坂文庫を開いた本沢結香さん=2018年11月24日午後1時37分、三重県尾鷲市九鬼町、広部憲太郎撮影 拡大今年7月、古民家にトンガ坂文庫を開いた本沢結香さん=2018年11月24日午後1時37分、三重県尾鷲市九鬼町、広部憲太郎撮影

 熊野灘に面したリアス式海岸沿いに、漁港が点在する三重県尾鷲市。毎週末、観光客らが訪れるようになった人口約430人の漁村がある。地域住民と移住者が協力して開いた食堂が原動力だ。

■九鬼町 地元と移住者力合わせ

 尾鷲市中心部から南に延びる山道を下ると、突然視界が開け、太陽の光を浴びた海面がきらきらと輝いていた。

 同市九鬼(くき)町は、戦国時代に武力を誇った九鬼水軍発祥の地とされ、今も漁船が行き交う。11月下旬、海に面した赤い屋根の飲食店「網干場(あばば)」は老夫婦や家族連れ、ライダーたちでにぎわっていた。

 営業は毎週土日の昼間で、地元住民が調理や接客にあたる。名物はワラサやムツなど地元産の魚を使った刺し身とフライの定食だ。店を15回以上訪れた奈良県橿原市の竹中妙子さん(66)は「魚の種類が多くておいしい。九鬼町は静かで潮の香りがする」。

 飲食店が途絶えていた九鬼町に、網干場が開店したのは2015年5月だった。調理を手がける元幼稚園教諭の川上尚子さん(72)は「町がにぎやかな時は、うどん屋やお好み焼き屋があったのに、急に人が減り、灯が消えていくようだった」。飲食店の経験もない地域住民が、過去に営業していたスナックを衣替えした。

 助っ人となったのが、東京都出身の豊田宙也さん(32)だ。早大などで哲学を学んでいたが、祖父が三重県亀山市にいた縁もあり、14年9月、地域おこし協力隊員として九鬼町に移住。「隔絶された漁村に独特の文化や言葉、祭りが息づき、一つの世界を作っているのが魅力的でした」

 議論を重ね、地元の人が協力しやすいよう、魚がメインの飲食店を考えた。豊田さんは海が一望できる大きな窓のカーテンを開けようと提案した。外から丸見えになるため反対もあったが「シーサイドビューが一番の売り。町の人にこそ見てほしかった」。

 開店から3年あまり。店には一時、1日100人前後が訪れ、今も30〜40人が来る。観光客だけでなく、九鬼町出身者が店で何十年ぶりに再会して、同窓会のような集いの場になることもある。

 協力隊員の任期は満了したが、豊田さんは九鬼町に残った。「交易の拠点だったこの町には、人が行き交う開放感があったはず。九鬼町に住むことを面白がり、誇りに思ってもらえるようにしたい」

 川上さんは町の変化を感じている。「宙也が町外でも顔を広げ、店に知り合いの人たちを連れてきてくれる。九鬼以外の人が歩いても不思議ではない町になった」

■会話弾む古本屋も

網干場から徒歩5分。迷路のような道の石段を上ると、1軒の古本屋が現れた。店の名は「トンガ坂文庫」で、築80年ほどの古民家を改装して今年7月に開店した。金土日の営業で、小説や絵本、思想書など2千冊が並ぶ。

 トンガとは地元の言葉で「大風呂敷を広げる」という意味だ。店を運営する本沢結香さん(32)は「かつて店の周りに『トンガ』と呼ばれる人が3人ほど住んでいて、坂の俗称になったそうです」

 長野県出身。16年秋に東京から移住した。ともに本が好きな網干場の豊田さんと意気投合し、古本屋を作った。読書を通じたコミュニケーションの場にしようと、店では飲み物なども販売している。

 開店から4カ月。大阪から客が来たり、市中心部の尾鷲高校の女子生徒が反対方向の列車に乗ってきたりした。店にある1923年発行の九鬼町の同人誌には短歌や詩、エッセーが掲載されている。「同人誌が作られていた九鬼は、文化的素地があったと思う。町に楽しく住み続けられるようにするため、本で出会いの場を作りたい」。歴史ある漁村に、活気と文化の香りが少しずつ漂い始めている。

漁業や日本有数の多雨地帯として知られる尾鷲市には、少子高齢化の荒波にも負けず、海や山、街の魅力を、伝え続ける人たちがいます。この町に根付く伝統や新たな息吹を、9回にわたってお届けします。

◆担当します 広部憲太郎記者◆

 2000年入社の40歳。16年9月から半年、津総局員として尾鷲市を含む東紀州を担当し、魅力にはまる。地方勤務は海の無い町ばかりだったので、磯の香りをかぎながらの取材は今も新鮮。

PR情報

ここから広告です

PR注目情報

津総局から

津総局への情報提供・ご意見・お問い合わせなどお寄せ下さい。メールはこちらから

朝日新聞 津総局 公式ツイッター

ここから広告です

広告終わり

ここから広告です

広告終わり

ここから広告です

広告終わり

注目コンテンツ

  • 写真

    【&w】カカドゥの不思議な野鳥たち

    ノーザンテリトリー〈PR〉

  • 写真

    【&TRAVEL】遊び心満載の豪華客船

    船上でサーフィン?〈PR〉

  • 写真

    【&M】TEPPEI×ハマ・オカモト

    自分に合った服装とは?

  • 写真

    【&w】劇場鑑賞券を3組6名様に

    「&w」読者プレゼント

  • 写真

    好書好日旅するように異国料理を作る

    宮崎あおいさん初の料理本

  • 写真

    WEBRONZAカーシェア急拡大

    今日の編集長おすすめ記事

  • 写真

    アエラスタイルマガジンこれぞ手軽な手土産の大本命

    手土産に縁起のよい「虎家喜」

  • 写真

    T JAPAN未来を変えるコスメ 第2回

    全米で話題の「CBDオイル」

  • 写真

    GLOBE+注目は年齢差だけではない

    マクロン大統領夫人の実像

  • 写真

    sippo絶滅の危機に瀕するトラ

    生態は猫とほぼ同じ

  • 働き方・就活

  • 転職情報 朝日求人ウェブ