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東日本大震災【2020年】

「被災者」って誰? いつまで? 考える

写真:飯塚正広さん 拡大飯塚正広さん

写真:雁部那由多さん 拡大雁部那由多さん

写真:河村和徳・東北大准教授 拡大河村和徳・東北大准教授

  来年で東日本大震災から10年。この間、「被災者だから」「被災者なのに」といった言葉をたくさん見聞きし、使ってきた。復興が曲がりなりにも進み、「もう被災者じゃない」と言う人もいる。ここらで一度立ち止まり、考えてみよう。「被災者」って誰?

 (編集委員・石橋英昭)

 ■「卒業」しようとしていた矢先「後戻り」

 「いつまで被災者か」。担当専門部署を廃止する自治体も相次ぐ。

     ◇

 「いつまで被災者か」。最近、行政担当者から聞くようになった言い方だ。住宅の再建がほぼ終わり、国からの手厚い財政措置は来年度からは細る。被災者支援策は福祉などの一般施策にいずれ移行すべきだ、との考えがにじむ。被災者担当の専門部署を廃止する自治体も、相次いだ。

 岩沼市で被災し2015年から仙台市太白区の災害公営(復興)住宅で暮らす飯塚正広さん(59)も、少し前までそう考えていた。復興住宅は一般入居者が増えている。共存しつつ、被災者も「市民」に戻る時期が来ている、と。

 ところが昨年、妻が急死し、自身は心の病をわずらった。振り返れば、震災以来の疲れが心身にずっしりとたまっていたのだ。「後戻りしてしまった僕のように、助けを求める被災者が見えないところで埋もれている。『復興住宅入居者』といった一くくりでなく、個々に応じた支援が必要」と話す。

 ■あいまいな区分け越え「経験者」として

 同級生は「被災組」と「被災していない組」とに自然と二分されていた。

     ◇

 若者の意見も聞いてみよう。

 「『被災者』って、あいまいで便利なカテゴリーだったと思う」というのは、震災の語り部を続ける東北学院大生の雁部那由多(がんべなゆた)さんだ。小学5年のとき東松島市で自宅が被災。津波に襲われた学校では目の前で水にのまれた人も見た。

 地域では浸水しなかった地区もある。同級生は自然と「被災組(ひさいぐみ)」と「被災していない組」とに二分され、お互いに口をきかない。被災組は皆仲がよかったが、震災の話はしないのが暗黙のルールだった。

 「身内を亡くした人、身内は無事だった人、家を流された人、津波を目の当たりにした人……。それぞれ被災の傷や程度は違い、それを気にしだすとぎくしゃくしてしまう。でも『被災者』とくくれば、違いを埋めて『あ、同じですね』と安心できる。緩衝材のような言葉なんです」

 雁部さんは今、あいまいな「被災者」をそろそろ脱しようと考えている。

 「心の復興のためにも、自分は被災した事実にどう向き合うか、自身で定義し直すべきだと思う。僕の場合は、『被災経験者』として語り部を続けつつ、災害社会学の研究者をめざしています」と話した。

 ■復興は「少数決」難しくなる過程

 政治家は「被災者に寄り添って」と、口では言い続けてきた。

     ◇

 政治家は「被災者の皆さんに寄り添って」と、口では言い続けてきた。

 河村和徳・東北大准教授(49)は「政治学からみれば、復興とは、被災者と非被災者のはざまで、『少数決』がどんどん難しくなる過程だ」と言う。どういうことなのか。

 県や市といった自治体単位でみると、必ずしも全住民が直接・間接的被害を受けたわけではない。ただ災害直後は非被災者も、復興政策を進めることに同意する傾向が強いという。だから政治家は選挙で多数の支持を得ようと、復興を声高に訴えた。

 だが暮らしの再建が進むにつれ、自分は被災者と思う人は減り、非被災者の中からは、「もう被災者支援はいい」と考える人が現れる。多数決に基づき、政治の争点は「ポスト復興」に移ってゆく。「選挙のたびに震災は風化する」と、河村さんは指摘する。

 本当はいま政治を必要とするのは、少数派になった被災者のはず。菅義偉政権はどう向き合うのだろう。

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