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ナガサキノート・32【福井絹代さん】

思い出したくない経験

写真:相川国義さんが書いた似島でけが人を看護した時の様子=広島平和記念資料館提供 拡大相川国義さんが書いた似島でけが人を看護した時の様子=広島平和記念資料館提供

《福井絹代さん 1930年生(9)》

 広島市内で被爆した福井絹代さんと弟・相川国義さんは瀬戸内海に浮かぶ似島に渡り、負傷者の看護に当たった。「広島原爆戦災誌」によると、原爆投下後、この島には約1万人の負傷者が運び込まれた。被爆直後のことはあまり覚えていない福井さんだが、似島での経験の記憶は痛烈だ。「あまり思い出したくない。あまりに残酷で……」

 広い講堂のような建物に次々と負傷した人が運ばれてくる。性別が判別できず、顔もよく分からない人たち。次々とうじがわき、治療らしい治療もできないまま、息絶えていった。大人の手伝いをする福井さんの傍らで、12歳だった国義さんは恐怖のあまり、絹代さんの服の裾をつかんで離さなかったという。

 国義さんの手記によると、2人は島の農家の家に身を寄せたが、「面倒を見てあげられない」と言われた。身寄りのない2人は8日に再び広島市内に戻ったが、混乱の中、市内にいた伯父夫婦に出会うことはできず、列車で故郷の長崎を目指すことにした。

通算3570回目。今シリーズは40回の予定。

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