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平成じげもん2【青来有一さん】

前の時代、抱え込み次へ

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【芥川賞作家・青来有一さん 60歳〈後編〉】

■当事者いなくなっても語るのが継承の本質

 昨年末に60歳を迎えた。昭和と平成を、ちょうど30年ずつ生きてきた。

 《執筆活動を始めたのは、長崎市役所に勤めた昭和50年代後半。ただ、初めの5、6年はほとんど形にならない。小説の新人賞の候補に初めて残ったのが、平成になってから。作家としてもがき始めて、何とか動き始めたのが、すっぽり平成に包まれている。作家としての人生は平成生まれ。平成に抱えられているなというのは、すごくありますね。》

 両親が長崎原爆を経験した被爆2世。父の体験をテーマにした小説も書いた。

 《一方で、昭和が半分入っている人間というイメージもある。戦争を巡る記憶がある人たちや、それを受け継いで育った世代は、どうしても昭和が吹っ切れない。特に広島や長崎は。きれいにぬぐい去って、新しい平成だけを生きてきたかというと、そうでもない。》

 平成の次の時代をどう見るか。大きなテーマとして、外国人労働者の受け入れ拡大を挙げた。昨年の国会では、与党の採決強行の末、改正出入国管理法(入管法)が成立。今年4月に施行され、5年間で最大約34万5千人の外国人の受け入れが見込まれる。

 《日本的なもの以外の要素が、日常生活のレベルにたくさん入ってくる。今までは観光客として受け入れていたのが、全く異質の考え方や文化的背景、歴史を持った人たちがすぐそばで暮らすようになる。良くも悪くも、日本の「開国」の完成形が出てくるのかもしれない。「混じり合う時代」なんだと思う。

 一方では、一種の鈍いナショナリズムが出てくる。そのせめぎ合いになるんでしょう。建前として「国際交流は大事ですよ」とお題目を唱えるのは簡単だけど、一人ひとりの人間が向き合うのは、もっと身近な問題。欧州の移民や難民の問題を見ても、異質なものを迎え入れるのは本当に大変なんだなと思う。理念を現実に根付かせていく大変さは、ずーっとある。》

 米朝首脳会談を控え、トランプ米大統領が長崎原爆資料館をおしのびで訪問する――。そんな小説「フェイクコメディ」を昨年発表した。館長の「わたし」と大統領の対話に、核兵器や戦争を巡るさまざまな立場や考え方、そして議論のかみ合わなさを織り込んだ。

 《作家活動の最初のころは、市役所の暮らしなんて絶対小説になんねえなあと思っていた(笑)。でも、どんな風にそこに虚構を持ち込むかによっては、小説にできるという発見があった。小説的な面白さはフィクションの部類に入るけど、それを支えるリアリティーはやっぱり日々の暮らしにある。それなしでは書けないですよね。》

 平成の次の時代には、どんな物語を紡ぐのか。

 《被爆経験の単なる継承ではなく、未来に対する一つの警告のような話が大きくなってくるかもしれない。その中で、小説として興味深いものをどう持ち込むか。これからはもう少し継続的に、時間をかけてやれることをやってみたい。

 次の時代に期待はあるけど、前の時代をきれいに忘れてはダメ。平成でも昭和を抱え込んだように、今度は昭和と平成を抱え込んでいく。》

 遠からず、被爆者がいなくなる時代が来る。

 《経験した当事者がいなくなっても、何らかの関心を持つ人たちが残り、語っていくのが継承の本質。知らない人間が語っちゃダメってなると、継承は絶対にできない。「自分たちは経験がないから」という萎縮を取り除いてあげるのが大事なんじゃないかという気がしています。

 もう一つ。戦争とは、原爆とは何だったのか。客観的に、冷静なアプローチで実証していく努力を続けていかないといけません。》

(聞き手・森本類)

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