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ナガサキノート・35【「のこす」の現場】

託された体験 つなぐ声

写真:被爆者に代わって、体験を語る中島麗奈さん 拡大被爆者に代わって、体験を語る中島麗奈さん

写真:講話で話す広瀬美由紀さん=いずれも長崎市平野町 拡大講話で話す広瀬美由紀さん=いずれも長崎市平野町

《「のこす」の現場(3) 語り》

 長崎市平野町の長崎原爆資料館で7月28日、通信制高校に通う長崎市の中島麗奈(なかしまれな)さん(17)が、来館者に被爆体験を話し始めた。体験と言っても自分のものではない。2年前、市が催した家族・交流証言推進事業=キーワード=の交流会で出会った被爆者の女性「信子さん」(89)の体験だ。被爆の記憶の継承に携わりたい人が、聞き取った体験を代わりに語り継ぐ仕組みを市が2016年度に作った。

 自分のものではない体験を語る――。中島さんは冒頭、この活動に加わった動機に触れた。

 「自分にできることを考え、思いついたのは、被爆者の考えを受け継いで伝え続けていくことでした」

 被爆4世の中島さんが、平和活動に興味を持ち始めたのは中学2年の夏休み。市の交流事業で、米国の姉妹都市であった原爆展を訪れた。客やホスト家族に尋ねられても、学校で習ったことしか話せない。キノコ雲に丸を描いた絵が会場の外に何枚も張られていたのが衝撃だった。「核兵器はいけないものだと聞いてきたのに、肯定する人がいるんだなあって」

 中島さんは帰国後、曽祖母がどんな体験をしたのか母や祖母に尋ねてみた。曽祖母は詳しく語っておらず、祖母は「元気なうちに聞いておけばよかった」と悔やんだ。つらい被爆体験は、家族内でも継承することが難しい現実があった。

     □     ■

 信子さんは原爆投下時には15歳。県立長崎高等女学校の4年生で、学徒動員で行った三菱兵器製作所で被爆した。中島さんは、2年前の交流会で出会い、当時の自身と同じ歳だった点に強く引きつけられた。

 体験の継承に取り組むほかの2人と約10回会って話を聞いた。体験を原稿にまとめては信子さんに何度も確認してもらった。どう伝えるか迷った末、被爆直後の体験やメッセージ部分は女性自身に映像で語ってもらうことにした。

 信子さんは原則、匿名希望。交流証言者の講話でも、名字は伏せることを求めている。そんな信子さんが、中島さんらの依頼で、映像で顔を出して証言した。信子さんは取材に「3人に会って、少しでも自分の体験をつないでいってもらえればと思った」と話した。

 昨年3月、最年少で初舞台を踏んだ中島さんはこう感じている。「被爆者が、うちに秘めたつらい体験を自分から語るのは難しい。若者が動けば、応えてくれる人は必ずいる」

     ■     □

 中島さんに続いて、広瀬美由紀(ひろせみゆき)さん(58)も7月28日、交流証言者として講話に立った。群馬県出身で7年前、宮崎県から長崎市に引っ越してきた。3年前の交流会に参加し、今年3月にデビューした。この日が講話は2度目。「県外出身で身内に被爆者もいない自分は、ふさわしくないのではないか」。長く逡巡してきた思いを冒頭に正直に話した。

 知人に誘われ、子どもたちに平和教育の出前授業をしている「ピースバトン・ナガサキ」に参加。「とにかく知ることが大事」だと交流証言事業にも応募した。担当となった被爆者は、山脇佳朗(やまわきよしろう)さん(85)。今年の平和祈念式典で「平和への誓い」を読み上げる人だ。「私でいいのか」とためらい、原稿が遅々として進まない。いっしょに話を聞いた2人の交流証言者は次々とデビューした。「もう2人が引き継いでいるから、自分がいなくてもいいのではないか」とも思ったが、ほかの2人の原稿を見て、取り上げる場面や視点が違うことに気づいた。「3人いれば3人違った」

 山脇さんも後押しした。伝聞調で「〜そうです」と繰り返すと「自分の体験だと思って話して」と求めた。3月の講話の際、聞いていた山脇さんが声を掛けた。「涙が出ました」

 いつか英語で山脇さんの体験を話したい――。元英語教師の広瀬さんに新たにできた目標だ。英語で被爆体験を語る山脇さんも広瀬さんに期待を寄せる。広瀬さんはこう力を込める。「体験の100%は絶対伝えられないけど、直接人の声で語ることは大事。山脇さんを伝えていきたい」(小川直樹・38歳)

◆キーワード

<家族・交流証言推進事業>

 被爆体験を語り継ぐため、長崎市が2014年度、被爆者の家族や身近な人が体験を継ぐ「家族証言」事業を開始。家族以外でも体験を受け継げるよう、16年度から「家族・交流証言」と改め、自身の体験を託したい被爆者と受け継ぐ人をつなぐ取り組みも加えた。「交流証言者」になるには、交流会で被爆者と顔合わせした後、体験を聞き取り、原稿を作りながら話し方などの研修を受ける。交流証言者として登録されているのは70人。うち32人が講話する認定を受けた。今年9月21、22日には第4回交流会を開催予定で参加者を募集している。

通算3873回目。今シリーズは5回の予定。

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