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ナガサキノート・35【「のこす」の現場】

資料に重み 危機感胸に

写真:渡辺千恵子さんの手書き原稿や写真=7月22日、長崎市網場町 拡大渡辺千恵子さんの手書き原稿や写真=7月22日、長崎市網場町

写真:渡辺さんの手書き原稿を手にとる長崎総合科学大の木永准教授=長崎市網場町 拡大渡辺さんの手書き原稿を手にとる長崎総合科学大の木永准教授=長崎市網場町

写真:渡辺千恵子さん 拡大渡辺千恵子さん

《「のこす」の現場(4) 遺品・文書》

 8畳ほどの研究室。天井まで届くキャビネットいっぱいに、封筒に仕分けされた手紙や書類、写真がひしめく。すべて、被爆時に脊椎を損傷し、車椅子で原爆の語り部を続けた渡辺千恵子さん(1928〜93年)の遺品だ。長崎総合科学大の木永勝也(きながかつや)准教授(62)は3年前から学生とともに整理に取り組んでいる。

 もともと渡辺さんと個人的なつながりのあった研究者が遺族から引き取ったものだ。縁あってそれを引き継いだ木永さんは「偶然が重なって残ったものだった」と言う。

 渡辺さんらが長崎で結成した初の被爆者組織「長崎原爆乙女の会」が、1955年から発行した機関紙もあった。木永さんによると、まとまった形では残っていなかった資料だ。終戦直後の被爆者の苦悩が、手書きでつづられていた。

 木永さんは学生時代、原水爆禁止世界大会で演説する渡辺さんを見かけたことがあった。「生きた歩みを示す資料だ」。定年まで分析を続けると決めたが、課題は山積みだ。撮影者が書かれていない写真、日付のない手書き原稿もある。すべてに目を通し、目録をつくるだけでもあと1年はかかるとみている。

 長崎市発行の被爆者健康手帳保持者だけでも毎年1600人前後の被爆者が亡くなっている。一方、長崎原爆資料館への資料寄贈者は昨年7月からの1年間で9人。「『被爆者なき時代』には資料が大切になる。だが、遺品整理に当たるのが孫世代に移っていく中で、失われてしまうものも多いのではないか」と木永さんは資料散逸に危機感を抱いている。

     □     ■

 戦後の歩みをたどる手がかりとなる公文書も、例外ではない。

 高校教諭の新木武志(しんきたけし)さん(59)は数年前、長崎原爆資料館の「見つからない」という回答に肩を落とした。照会したのは、1949年に長崎市が設置した「原爆資料保存委員会」の議事録だ。「原爆のことをどう残し、伝えるか取り組んだ、最初期の組織なのだが……」

 この委員会については、協議事項を箇条書きにした「経過報告書」(59年)が残っている。これによると、浦上天主堂の保存対策や平和祈念像の建設地などが、この場で議論された。数年前、新木さんが照会した際には職員が収蔵庫内を捜しても見つからなかった。資料館の今の職員も「恐らく市にもない」と話す。

 新木さんは、長崎で原爆がどのように受け止められ、反核運動がどうやって生まれてきたのかを考える「長崎原爆の戦後史をのこす会」の事務局を担う。「(52年までの)米軍占領期など戦後初期のことは、存命の人から証言をとることが既に難しい時代。埋もれている資料を収集する必要がある」と話す。

     ■     □      

 同じ被爆地の広島市には、長崎にはない公文書館があり、資料の散逸に歯止めをかける役割を果たしている。

 原爆投下によって広島市役所にあった文書は多くが失われたが、周辺の町村に残っていた文書を保存しようと市は1977年、市公文書館を開設。職員らからの寄贈も受けてきた。

 ウェブ上で収蔵資料を検索できるアーカイブがあり、企画展を年に2〜3回開いている。渡辺琴代・歴史資料係長は「資料は持っているだけでは生きてこない。展示を通じて歴史を伝えていくことで、新たな資料の収集にもつながることを目指している」と話す。

 「新長崎市史」や「長崎市議会史」の編纂(へんさん)にも携わってきた木永さんは、自戒を語る。「執筆に当たって多くの資料を集めたが、保存に関して提言することが頭になかった」

 県は、新県立図書館を大村市に整備するのを機に、2021年度中に長崎市内の旧館跡地に郷土資料センターを立ち上げる予定だ。長崎の研究者たちはこれをチャンスととらえ、県や市に近現代史の資料の保存・公開体制強化を要望しようと、準備を進めている。

(榎本瑞希・29歳)@@@会員向け@@@

通算3874回目。今シリーズは5回の予定。…

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