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なにわ平成食探訪

menu:4 パクチー 

写真:パクチーを抱く代表の田淵雅圭さん(右)と妻の香菜子さん 拡大パクチーを抱く代表の田淵雅圭さん(右)と妻の香菜子さん

写真:人気メニューのパクチー炒飯。パクチーのペーストを米にまとわせて緑色に。パクチーの根の素揚げが香ばしい 拡大人気メニューのパクチー炒飯。パクチーのペーストを米にまとわせて緑色に。パクチーの根の素揚げが香ばしい

写真:パクチーの生春巻きは、パクチーペーストが練り込まれたゴマだれで頂く 拡大パクチーの生春巻きは、パクチーペーストが練り込まれたゴマだれで頂く

■香り効かせて、広がり無限

 パクチーへの愛が止まらない。「昔からパクチーに共感して生きてきました」。大阪市中央区でパクチー料理専門店「GOGOパクチー」を営む田淵雅圭(まさよし)さん(35)は、そう語る。

     *

 パクチー。「カメムシソウ」とも呼ばれ、独特の香りから敬遠する人も少なくない、セリ科の野菜だ。「パクチーと自分の人生を重ねてしまうんです」とは、どんな人生なのか――。

 大阪市西淀川区出身。日本人の父と台湾人の母との間に生まれた。「おふくろの味」は母が作る台湾料理。水ギョーザやスープ、魚の揚げ物、すべてにパクチーがどっさり載っていた。

 幼い頃は苦手だった。「くっさー」「ない方がええわ」。そっと箸で皿の端によけた。

 だが中学生になって目覚めた。ある日食べていた中華がゆを物足りなく感じ、ふと母が冷凍でストックしていたパクチーをパラリ。「これや!」。なぜかわからないが、急にパクチーが大好きになった。

 パクチーへの感情移入が始まったのもその頃から。小学生時代、「ハーフ」であることを気にしていた。料理になじみきれず浮くパクチーと、あの頃の自分。一方で本場仕込みの母の料理は「お店よりおいしい」と同級生に人気で、パクチーたっぷりの料理を通して友達付き合いも広がった。

 大学を卒業後、カメラマンとして広告会社に就職。やがて父が当時経営していた会社を畳むのに合わせ、2010年、両親と市内で担々麺の専門店を始めた。

 パクチー愛を抑えきれず、店でパクチーを豪快に使った料理を提供すると評判に。もっとパクチーの良さを知ってもらいたい、パクチーを普及させたい――。両親に反対されながらも14年10月、パクチー料理専門店「GOGOパクチー」を開いた。

     *

 18年12月のある日。緑色を基調とした「GOGOパクチー」の店内は、大勢の客が食事を楽しんでいた。

 人気メニューは、パクチーペーストをたっぷり使ったパクチー炒飯(チャーハン)、あんにパクチーをたっぷり加えたパクチー麻婆(マーボー)豆腐など。どの料理も追加で更にパクチーをトッピングできる。

 田淵さんと一緒に店を切り盛りするのは妻の香菜子さん(35)。パクチーは中国語で香菜(シャンツァイ)。愛する人の名前まで一致してしまう奇跡に運命を感じる。

 女性客を中心に店は最初から好調だった。パクチー風呂を考案するなど風変わりな戦略も功を奏し、メディアの取材も相次いだ。世間ではパクチー愛好家を「パクチスト」と呼ぶ造語まででき、2016年にはその年に流行した食べ物を選ぶ「今年の一皿」(主催・ぐるなび総研)にパクチーが選ばれた。薬味から主役へ。時代は完全にパクチーに味方した。

 同時に感じる違和感。「目的は達成したんとちゃうか」。ブームが続くからこそ、決めた。目指していたのは、専門店など必要ない、パクチーが普及した社会。「その時が来たんや」

 今年3月15日を最後に閉店することを決めた。4月1日からは、パクチー炒飯やパクチーコースなど人気メニューは残し、ルーツである台湾食堂にリニューアルオープンする。

 パクチーブームとは何だったのか。愛するからこそ今、田淵さんは考える。パクチーの根は良いだしが出るが、トッピングで使われる葉のようなインパクトはない。パクチストたちは強い香りを求め、アンチは「パクチー」というだけで敬遠する。実はどちらもパクチーの一面しか見ていないのではないか――。

 「老虎菜(ラオフーツァイ)という伝統料理を試してほしい」と、田淵さんは言う。パクチーと白髪ネギ、青唐辛子の千切りを、ごま油としょうゆであえるだけの簡単な前菜だ。

 「パクチーも人付き合いも同じ。ある一面だけでなく、いろいろな表情を楽しむことで豊かな人生が広がる」。苦手意識が人生を狭める。ルーツを教えてくれたパクチーは、実は人生の歩み方を教えてくれているのかもしれない。そんなことを考えながら、パクチーを刻む毎日は続くのだった。(山根久美子)

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