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食べぶら【食べぶら】

「出雲うどん」大社そばでなぜ

写真:麺づくりで小麦粉に塩水を混ぜる森山太史さん 拡大麺づくりで小麦粉に塩水を混ぜる森山太史さん

写真:麺棒で生地を広げる 拡大麺棒で生地を広げる

写真:打ち立ての出雲うどん=いずれも出雲市大社町北荒木 拡大打ち立ての出雲うどん=いずれも出雲市大社町北荒木

◆縁が結んだ「褐色の麺」◆

 相当なあまのじゃくだと、初めは思っていた。観光客に人気の出雲そば店が並ぶ出雲大社近くで、「出雲うどん」を売るとは。出雲市大社町のその一軒を訪ねた。

 神門通りの大鳥居を抜けて南に約400メートル進むと、「出雲うどん」ののぼりが見えてくる。うどん店の「山太(さんた)」だ。

 「そばはないの?」とけげんな顔をする観光客がいる一方で、「うどんと聞いて素通りできないと、讃岐方面からのお客さんもいます」。店主の森山太史(ふとし)さん(49)はこう話す。店で出す以外に飲食店5軒に麺を卸し、冠婚葬祭用の注文もこなす。

 麺づくりは前の日から始まる。小麦粉に塩水を混ぜ、水分が行き渡るよう約30分おいて延ばしたあと、4〜5時間ねかす。この間が森山さんの寝る時間。翌朝に麺を打って、朝8時ごろから配達する。注文が殺到すると、工程を守るため徹夜が続く。

     ◎◎     

 そもそもなぜ、そばではなく、うどんなのだろう。

 ヒントは「褐色の麺」。話は7、8年前にさかのぼる。森山さんの友人で、今は「さぎの湯荘」(安来市古川町)料理長、佐藤純雄さん(50)が、平田高校時代の恩師(78)宅で石臼を見つけた。恩師は「祖母が収穫した小麦を石臼でひいて打ってくれた。そのうどんの味が忘れられない」と、幼かった戦時中の記憶を話してくれた。当時そば打ちに凝っていた佐藤さんは、「再現してみましょう」と請け負った。

 昔は小麦を十分磨いていなかったのではないかと思って製粉業者を探すと、小麦の皮のふすまや胚芽(はいが)を残した九州産が見つかった。佐藤さんが打ってみると、甘みのある小麦そのものの味がした。「昔の人はこんなうまいうどんを食べていたんだ」と驚いた。恩師も太鼓判を押した。ただ、小麦の生地は硬く、打つのにひと苦労。柔らかくしようと塩水の量を増やすと、麺がぶつぶつと切れた。佐藤さんの挑戦は、ここでとまった。

 3年前、森山さんから相談がきた。山太の料理人が独立し、物販担当から作る側になったと。佐藤さんは例の小麦粉25キロを持ち込んだ。「何事も工夫する彼なら、きっとモノにしてくれる」と思ったからだ。

     ◎◎     

 当初はそばも考えていた森山さんだったが、薬味の「出雲おろち大根」も卸しており、得意先のそば屋に遠慮もあって新しいメニューが浮かばなかった。相談した佐藤さんが持ち込んだ小麦粉に向き合った。毎日、わらにもすがる思いで打ち、得意先で食べてもらった。

 水の量を極力減らし、塩の量や麺をねかす時間をいろいろ試した。苦労させられた生地の硬さも我慢できるほどになり、その年の秋、得意先からOKが出た。初めは「復刻うどん」としたが、同じころに褐色のうどんを出した他店と相談して、出雲うどんと名付けた。

 「かけつゆ」(税込み550円)をいただいた。麺はうどんとそばの間ほどの細さで少し褐色だ。つるっと口に入り、かむともちもち。小麦の香りにコシもある。麺は常連客の求めで、どんどん細くなった。冬に人気の「鍋焼きうどん」(同850円)は逆に、太い麺だ。

 昨年、新たに「宝庫うどん」(同700円)を作り出した。小麦粉に草餅の材料・ホウコ(キクバヤマボクチ)を合わせたざるうどんで、もちもち感をさらに引き立てる。

 「納得の一杯はまだまだ」と森山さん。出雲うどんの進化は続く。 (今林弘)

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