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しまねの人

わくわくする発見したい

写真: 拡大

写真:国立天文台助教の秦和弘さん 拡大国立天文台助教の秦和弘さん

◆ブラックホール撮影チーム 秦 和弘さん(35)◆

 「ブラックホールを撮影した望遠鏡は、何でもやれるスターではないけれど、一つだけとんでもなくすごいことをやれる面白いやつなんです」

 ブラックホールの撮影に世界で初めて成功した国際研究チームの中心的な立場で、撮影対象の提案や、撮影データの解析を担った。

 松江市玉湯町生まれ。星の図鑑を見るのが好きで、宇宙に引かれていった。小学4年の作文には「宇ちゅうは、どんな仕組みになっているのだろうか」と書きつづった。

 高校2年で進路を考える際、好きだった宇宙のことを研究する学者を志すように。1浪して名古屋大理学部物理学科へ入った。

 そこで出会ったのが、今回の撮影にも用いられた技術「VLBI」。世界各地の望遠鏡をつなぐことで、地球サイズの巨大な望遠鏡をつくる。天体からの電波に対する感度は著しく低くなる代わりに、視力はすばる望遠鏡の3千倍、人間の300万倍。ブラックホールすら観測できる可能性があると聞き、心が躍った。以来、ブラックホール撮影が夢になった。

 「VLBIを使った望遠鏡は天文学分野でもかなり変わった、とんがったやつ。自分に似ている気がして、引かれました」と振り返る。

 名大卒業後は、総合研究大学院大に進学し、天文科学を専攻。5年かけて修士と博士号の取得を目指すも、研究がうまくいかない日々が続き、「人生で一番つらかった暗黒時代」だった。

 しかし、ここでのつらい日々が、今回の国際研究チームを引っ張っていく元となる。

 進学当初、先行研究が少ないある銀河のブラックホールを研究していた。しかし、ブラックホールの活動が弱く、観測データが取りづらいため、研究が進まない。

 そこで、今回撮影に成功したM87銀河に対象を変更した。しかし、当てにしていた、地球の衛星軌道上を回る宇宙望遠鏡と地球の望遠鏡をつないで観測するプロジェクトが頓挫。代わりに、別のプロジェクトにM87銀河の観測要望を出したが、注目度の高い天体のため世界中から要望が殺到しており、なかなか採用されなかった。

 望遠鏡が使えず、観測データが得られない――。毎日、不安に駆られながら論文をあさった。

 「最初は周りから心配されていたが、徐々にもうこいつの研究はだめだなという感じになってきた。腫れ物に触るように気を使われていた」

 院生になって4年目。ようやく望遠鏡の観測要望が通った。「この論文が通らなかったら、研究者は諦めよう」。遅れを取り戻すように早朝から深夜3時ごろまで必死に研究に打ち込んだ。覚悟を決めて書き上げたのが、M87銀河のブラックホールの位置を初めて詳細に特定した論文だった。英科学誌ネイチャーに掲載され、今回の撮影にもつながった。

 12年に博士号を取得し、2年半イタリアの研究所に勤務。14年に国立天文台水沢VLBI観測所(岩手県)へ移った。

 研究対象のブラックホールは「相棒でもある」という。院生時代から10年以上、「毎日嫌でも研究室で会っていたから」と笑う。ブラックホールは「(活動の程度や大きさなど)人間と同じように個性があり、見ていて飽きない。不思議だけど面白くて、愛着が湧く」と言う。

 今回の撮影の成功だけでは、満足していない。ブラックホールの周辺で噴出するガス「ジェット」が写っていなかったからだ。ブラックホールとともに写ると想定していたものだという。現在は日本と中国、韓国の約100人の研究者でつくるVLBIネットワークの責任者として、ジェットの観測を目指している。

 「宇宙の研究は、明日何か世の中がよくなるわけでも、お金がもうかるわけでもありません。それでも、たくさんの人が喜んで話をして、わくわくしてくれる。そんな発見になれば」 (市野塊)

■はだ・かずひろ 

1983年生まれ、松江南高校卒業。現在は国立天文台水沢VLBI観測所がある岩手で暮らす。研究の息抜きはドライブで、東北各地を回る。

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