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しまねの人

伝統と変化 技を未来へ

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◆建築板金「現代の名工」吉水 博さん(68)◆ 

 「1枚の金属の板が、自分の思い描いた形に少しずつ変わっていく。時間を忘れるね」

 今年、国内最高水準の技能を有する、現役の卓越した技能者を表彰する国の「現代の名工」に選ばれた。神社の屋根の伝統的な装飾である「千木(ちぎ)」や「勝男木(かつおぎ)」などの銅板加工に加え、海からの潮風によってさびやすい銅板の代わりに、塩害に強い「カラーステンレス」を積極的に利用する先進的な取り組みも評価された。

 19歳から50年近くにわたり、主に銅板加工の技を磨いてきた。出雲大社の平成の大遷宮にも携わった。だが、「板金の業界ではまだ中堅。先輩方を差し置いてまさか自分が選ばれるとは」と驚きを隠せない。

 現在の松江市美保関町で生まれ育った。板金の仕事に初めて触れたのは、高校1年生のとき。義理の兄の板金店でアルバイトをしたことがきっかけだ。職人に交じり、道具運びなどの雑用を手伝った。高校3年生になるころには、屋根や壁の板金の簡単な修繕作業も任せてもらった。

 しかし、板金の仕事は夏は暑いし、冬は寒い。「とてもそんなところで一生やってられん」。そう思って高校卒業後は背広にネクタイを締め営業職を担当したものの、やりがいを見いだせず、数カ月で辞めた。そんなとき、義兄から誘われたという。

 「板金は、自分の仕事が何十年も残っていくのを、じかに見ることができる」。そんな気付きもあり、仕事の過酷さを覚悟の上で挑戦しようと決意した。「まあ、義兄が『給料、2倍やるで』と言ったことも大きかったね」と笑う。

 以来、18年間、義兄の店で働いたが、「職人は見て盗め」が口癖で、あまり教えてはもらえなかった。必死に先輩の職人の作業を学んだ。1989年に独立。地元の美保関町で板金店を構えた。

 3年ほど前から、神社仏閣の板金の修繕にさびにくいステンレスに色をつけた「カラーステンレス」を積極的に用い始めた。

 ただ、柔らかい銅板に対して、カラーステンレスは硬く、加工には数倍の時間がかかるという。加工の難しさから、扱う職人は県内にはほとんどいない。それでもあえて取り組むのには訳がある。

 「人口減少や高齢化が進んで、神社の氏子も減っている。さびやすい銅板を頻繁に修繕したり管理したりするのは負担が大きい」。カラーステンレスなら50年はきれいに維持できるといい、「伝統を残しながら、板金も時代に合わせて柔軟に変わっていかなくちゃならない」。

 若い世代への技の継承が課題だ。県板金工業組合によると、組合に所属する事業所は、89年の203事業所から現在は103事業所。職人の高齢化も進んでいるという。「金属加工の魅力を若い世代に伝えていかなければならない」と話す。

 そんな理由もあって、20年ほど前から年間10回ほど県内各地の小中学校や公民館で銅板のレリーフ(浮き彫り細工)の体験教室を開いている。アニメキャラクターなどが描かれたうすい銅板をへらで押し込み、少しずつ絵柄を浮かび上がらせていく。その後、溶液につけて味のある色合いに仕上げていく。「子どもたちに金属を加工する楽しさを感じてほしい。板金でなくても、たとえば美術作品をつくるとか、何らかの形で金属加工に携わる仕事に関心を持ってもらえれば」 (浪間新太)

■よしみず・ひろし 

1951年、美保関町生まれ。2019年、現役の卓越した技能者を表彰する国の「現代の名工」に選ばれた。県建築板金技能士会で会長を務める。銅板を加工した小物作りが趣味で、ほうきに乗った魔女やカエルなどをモチーフに多数制作している。

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