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東京を生きる

(1)夢見た都会 いま地元愛

写真:山川文孝さん(右)と長男の翼さん=JR八王子駅前 拡大山川文孝さん(右)と長男の翼さん=JR八王子駅前

写真:ファンキー加藤さん 拡大ファンキー加藤さん

 ◆「ネオン輝く」憧れた父 八王子を歌う息子

 ◇流行歌は時代を刻む。「東京」を歌った多くのヒット曲が、時代の移ろいと、東京を生きる人たちの姿を映し出してきた。

 レコードから流れる歌に遠い大都会を想像した。

 北海道旭川市。家の周りには見渡す限りの畑が広がっていた。「隣の家」まで土の道を歩いて10分。庭でヤギを飼い、道には牛や馬がたたずんでいた。

  ネオンぐらしの 蝶々には やさしい言葉が しみたのよ

 一緒に暮らす伯父が、いつものレコードをかけた。「新宿の女」。旭川で育ったという藤圭子のデビュー曲だった。「ネオン輝く街って、どんなんだ?」。うちの周りには街灯もないのに――。

 1970年ごろのこと。山川文孝さん(58)は中学生だった。両親や伯父、伯母らと10人以上が同居。観音開きの扉がついたテレビで、ディスコブームに沸く東京の映像が流れていた。

 高校進学を控え、推薦で入学できる横浜市の高校の資料を取り寄せた。「横浜も東京だと思っていた」。コンクリート造りの校舎。プールや食堂もあった。「これこそ都会」。進学を決め、寮生活を始めた。

 ボクシング部の練習の合間に、横浜・桜木町のディスコに通った。ギターもかじり、「神田川」(73年)や「なごり雪」(75年)のレコードを買った。上野発の夜行列車と青函連絡船で帰省。まさに「津軽海峡・冬景色」(77年)の情景だった。

 高校を出て、羽田空港で貨物運送の仕事をした後、トラック運転手になった。セント・ルイスのギャグ「田園調布に家が建つ」が流行した80年代の漫才ブーム。「田園調布とまでは言わずとも、世田谷に住むのが夢だった」。財布と相談したがどうにも厳しい。家を買ったのは妻の故郷の八王子市。夫婦で映画を見る時は新宿まで行った。

 「何でこんな田舎に家を買ったんだと、子どもに言われるのが心配だった」

   □   ■

 カラオケで歌うのは地元への愛だ。

 東西に長い東京都。「東京」は東の都心のことで、西の八王子市はあくまでも「八王子」。バンド「Dragon(ドラゴン) Ash(アッシュ)」の「Grateful Days」(99年)をカラオケで歌う時は、《俺は東京生まれ》を《八王子生まれ》と替えて歌った――。

 山川翼さん(26)は八王子で生まれ、八王子で育った。八王子駅前に集まるファストフード店やカラオケ店、ゲームセンター、家電量販店を友人たちとグルグル巡る。「銀ブラ」ならぬ「八グル」だ。都心に足は向かない。2000年、市内に三井アウトレットパークができ、むしろ都心から買い物客が押し寄せた。

 高校生の時、八王子出身の3人組「FUNKY(ファンキー) MONKEY(モンキー) BABYS(ベイビーズ)」(ファンモン)の歌がヒットした。《八王子の南口》とか、《甲州街道のイチョウ並木》とか、八王子のことが歌詞にいくつも出て、「八王子純愛物語」というタイトルの曲もある。もう替え歌は必要なくなった。

 20歳からヒップホップダンスを始めた。ファンモンのように八王子を代表する存在になるのが目標だ。ここに家を買った父が、実は世田谷に買うのが夢だったと聞いて、笑った。「理解できない」

   ■   □

 文孝さんは長男の翼さんに「こんなに地元を愛してくれるなんて、うれしい限り」と笑い返した。

 遠くの東京にあこがれた父。地元を愛する息子。それぞれの青春期の間に、右肩上がりの成長が遠のき、希望を持ちにくいと言われる時代が始まっていた。

 文孝さんは言う。「僕は歌に夢を見た。子どもは現実にあう歌を見つけた」

 (加藤勇介)

   *

 「あこがれの東京」と歌われなくなった。情報化や少子高齢化が進み、大きく華やかな東京のイメージは艶(つや)をなくした。いま、さまざまな立場から、いろいろな価値観で東京の未来が語られる。新たな年。それぞれの「東京」を生きる人たちの姿を見つめた。

   *

 ■都心に対抗 故郷誇る ファンキー加藤さん

 「FUNKY MONKEY BABYS」のボーカルだったファンキー加藤さん(37)は、生まれも育ちも八王子市。「新宿や渋谷に出かけることを、『都内に行く』と言っていました」と振り返る。

 相半ばする「都心」へのあこがれと反発。「最先端でオシャレなことをやっても都心の人間にはかなわない」と思っていた。「大都会東京にのみ込まれず、どうやってサバイブ(生き残る)するか。その答えが地元を誇ることでした」

 いくつもの歌に「母のようなあたたかい存在の故郷の原風景」を描いた。下校時に眺めた夕焼け。友人と語り合った河川敷。「どこにでもある景色だからこそ共感してもらえたと思います」。CDのジャケット写真も市内で撮影した。

 いつか都心の情景も歌詞にしたいと言う。「でも、僕の中では東京は大きすぎる存在。まだ答えが出ていません」

 ■ファンキー・かとう 1978年生まれ。同じ八王子市出身のモン吉さん、DJケミカルさんと2004年に「FUNKY MONKEY BABYS」(ファンモン)を結成。ヒット曲に「あとひとつ」「ヒーロー」など。NHK紅白歌合戦には09年から4年連続出場。13年に解散後、ソロ活動を開始。1月25日にファンモンのメジャーデビュー10周年記念ベストアルバム、2月24日に最新ソロシングルが発売予定。

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