メインメニューをとばして、このページの本文エリアへ

08月26日朝日新聞デジタル朝刊記事一覧へ(朝5時更新)

新着記事一覧へ

このエントリーをはてなブックマークに追加

変わる進学

大学入学共通テスト 課題は

写真:法政大学入学センター長の菊池克仁さん 拡大法政大学入学センター長の菊池克仁さん

写真:開成中学・高校の柳沢幸雄校長 拡大開成中学・高校の柳沢幸雄校長

写真:東京大先端科学技術研究センターの近藤武夫准教授 拡大東京大先端科学技術研究センターの近藤武夫准教授

 大学入試センター試験が始まった。3年後には廃止され、代わって新しい「大学入学共通テスト」がスタートする。約30年ぶりの大改革ともいわれ、思考力、判断力、記述力を問うという新テスト。その課題を、昨春入学者の学部一般入試の志願者数が関東でトップだった法政大学入学センター長の菊池克仁さん▽米ハーバード大学のベストティーチャーにもなり、東京大学名誉教授でもある開成中学・高校校長の柳沢幸雄さん▽障害のある生徒や不登校生などの大学入試の支援をしている東京大学先端科学技術研究センターの近藤武夫准教授――の3人に聞いた。

 (聞き手・宮坂麻子)

 ■教育環境の格差反映も 法政大入学センター長・菊池克仁さん

 東京にある大学だからといって、首都圏出身者だけにはしたくない。できるだけ多様な学生が刺激しあう大学にしたい。新しい「大学入学共通テスト」で一番気がかりなのは、大学入試センター試験を利用した入試で確保していた、学生の多様性に影響がないかという点だ。

 法政大学では、センター試験利用入試の定員枠を年々増やし、全学部に拡大した。今春の学部一般入試の入学者約4750人の約2割がセンター利用だった。

 センター試験に我々が期待することの一つに、地方の優秀な学生の確保がある。法政大では全国10カ所の会場で入試を行うが、東北は仙台のみ。センター試験は全国に多数の会場があり、交通費などの負担が少なく受験できるため、地方の受験生が受けやすい入試である。一度の受験で複数大学に出願できるため、地方国公立大との併願生も少なくない。

 新テストは思考力、判断力、表現力を問うという理念は素晴らしいし、試行問題を見ても、よく考えられていると感じた。

 一方で、量も質もかなり難化している。部活などの高校生活を満喫し、引退後に本格的に受験勉強を始める生徒や、新テストに慣れていない浪人生が、短期で十分な準備ができるか心配だ。首都圏の中高一貫校などのように、中学や高校の最初からじっくり学習する習慣や環境が整っているかどうかも影響するのではないか。できる生徒とできない生徒の差が広がる可能性も高いと思う。実施までに問題の難易度の調整が進むことが期待される。

 何よりも怖いのは、「どうせできない」と、新テストの受験をあきらめてしまう高校生が増えないかという点だ。これまでにない思考力や表現力の壁は高く、これだけ頑張ったからここまで届くという結果が受験生に見えにくい。高校教師も生徒に応じて、どのように受験指導するか、苦労するのではないだろうか。

 日本の将来につながる改革なので、じっくり検討して、地域や学習環境により、大きな差が出ない試験になることを期待したい。

 ■出口評価へ転換、早急に 開成中学・高校、柳沢幸雄校長

 今回の大学入試改革の一番の問題は、出口の評価ではなく、入り口で評価するという、従来の発想から変わっていないことだ。

 親子とも、求めているのは大学卒業後に職業人としてちゃんと生きること。卒業前に、社会と結びつくようなきちんとした到達度テストがあれば、おのずと大学の教育も変わる。入り口は、各大学の学生像にあう生徒を選ぶ大枠で十分。高校に基本的な民間テストを導入するが、入試に使う前提ではない。高校時代の成績と論文、活動履歴で、大学入学者は選べばいい。入り口で絞るほど高校教育は入試対策に傾斜し、人格形成への視野が狭くなる。

 今回の改革の理念が的外れだとは思わない。ただ、技術的に無理だという「技術論」が入ってきて、理念がゆがんでしまった。

 一番残念だったのは、新共通テストが複数回の実施でなくなったこと。生きていく中で、自己評価が社会の評価と一致することは、自分も生きやすい。しかし、一発勝負では「苦手な問題が出た」などと自己評価につながらない。米国のSAT(大学進学適性試験)は数回受験できるので、自分の力は大体こんなものと納得して次のキャリアを選べる。日本もせめて2、3回に増やせないか。

 記述問題の効果は疑問。出題者、採点者、合格者を教育する人、の三位一体でなければ意味がない。こういう教育をしたい。こういう生徒が欲しい。だからこういう答えに得点を与える、という形で初めて意味をなす。書かない子が増えているので、高校でちゃんと書かせて欲しいというメッセージだろうが、長く書かせれば短時間で採点はできず、今の短さでは思考力や表現力は問えない。

 むしろ、与えられた条件だけでは解けない出題を混ぜてはどうか。必ず解があるわけではないという発想が思考力を高める。また、選択問題で間違えたら減点する方法もある。

 いずれにせよ、日本も早く出口評価に転換すべきだ。入学試験で合格さえすれば、適当に過ごしても卒業できる大学教育では、もう世界に通用しない。

 ■多様な生徒の排除懸念 東京大先端科学技術研究センター・近藤武夫准教授

 数学でも社会でも、グラフや表など複数の情報ソースを見比べ、論理的帰結を読み解く。問いを立てた人の求めることを踏まえ、破綻(はたん)のない文に限られた字数で仕上げる……。「大学入学共通テスト」が総合的な力を問う選抜であることは、試行問題で

もわかる。

 これまで多くの生徒が大学に進んだ後につけてきた力を、大学入学前に一律に求める流れにある。

 一方で、障害のある生徒や不登校の生徒は、年々増えている。大学は本来、学ぶ意欲があれば不登校の生徒にも障害のある生徒にも開かれているべきだ。入試は各大学が独自の理念で求める能力を、公正に測れる形にする必要がある。

 形式としては、センター試験も、能力はあっても、印刷された字を読んだり鉛筆で文字を書いたりすることが苦手な生徒を想定した形になっているとは言い難い。新テストでは、立ちはだかる壁が追加される。

 数学などに突出した能力があっても、答案作成に総合的で平均的な能力が求められると得点に結びつかないことがある。複数の資料や長文を短い時間内で読むことは、字を読むのに障害のある生徒には思考力以前の壁になる。記述問題は、字を書くのが苦手な生徒の解答に厳しさを加える。

 適切な配慮があれば、試験形式で壁のある受験生も、公正に力を評価することができる。例えば東大入試では、字が下手でも、採点者が丁寧に答案を通じて受験生と対話し、何を答えようとしたのかを評価する。だが、55万人が受けるテストの記述でそうした対応がどこまで望めるか。

 一律の形式の一斉テストで、総合的で平均的な力のある生徒以外は排除される。特定領域に優れた力のある生徒が、大学進学を早々にあきらめ、別の道に進むのを加速することにもなりかねない。多様な人々に専門的な学びの機会を保障する役割は、大学から失われてしまうのではないか。

 日本全体の子どもたちを見て、専門学校なども含めた高校以降の進む道を、きちんとグランドデザインし直す必要がある。

 ◆キーワード

 <大学入学共通テスト>

 現在の中3が大学受験する2021年1月から大学入試センター試験に代わって導入される新テスト。知識重視から脱却し、思考力、判断力、表現力を問うことを狙いとする。記述式問題も順次導入する。英語は、読む・書く・聞く・話すの4技能を外部検定試験で評価。

 13年に政府の「教育再生実行会議」が、(1)高校在学中に基礎力を測る到達度テスト(2)大学入試センター試験に代わる発展的テスト、の複数回実施を提言。中央教育審議会や有識者会議を経て、民間業者の「高校生のための学びの基礎診断」と、大学入試センターが実施する「大学入学共通テスト」になり、共通テストは当面1回だけの実施となった。

 

PR情報

ここから広告です

PR注目情報

東京総局からのお知らせ

東京総局では、都内の最新のニュース、企画、特集などをお届けしています。
身の回りで起きたちょっといい話をメールで「東京取材班」あてにお寄せください。メールはこちらから

朝日新聞 東京総局 公式ツイッター

注目コンテンツ

  • 写真

    【&w】カカドゥの不思議な野鳥たち

    ノーザンテリトリー〈PR〉

  • 写真

    【&TRAVEL】遊び心満載の豪華客船

    船上でサーフィン?〈PR〉

  • 写真

    【&M】廃虚の朽ち果てていく美しさ

    「変わる廃墟展 2019」

  • 写真

    【&w】劇場鑑賞券を3組6名様に

    「&w」読者プレゼント

  • 写真

    好書好日旅するように異国料理を作る

    宮崎あおいさん初の料理本

  • 写真

    WEBRONZAカーシェア急拡大

    今日の編集長おすすめ記事

  • 写真

    アエラスタイルマガジンこれぞ手軽な手土産の大本命

    手土産に縁起のよい「虎家喜」

  • 写真

    T JAPAN未来を変えるコスメ 第2回

    全米で話題の「CBDオイル」

  • 写真

    GLOBE+注目は年齢差だけではない

    マクロン大統領夫人の実像

  • 写真

    sippo絶滅の危機に瀕するトラ

    生態は猫とほぼ同じ

  • 働き方・就活

  • 転職情報 朝日求人ウェブ