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変わる進学

都立高志願者 なぜ減った?

写真:都立高校入試最終応募状況の推移 拡大都立高校入試最終応募状況の推移

写真:私立高校進学者への助成制度 拡大私立高校進学者への助成制度

写真:安田教育研究所の安田理代表 拡大安田教育研究所の安田理代表

 都立高の2018年度一般入試(第1次・前期)の最終応募状況が15日確定した。全日制全体の志願者数は前年より約3千人も少ない4万5216人で、倍率も10年ぶりに1・5倍を切った。「都立復権」「都立人気」などと言われる中、減少した背景には何があるのか。

 ■前年より3千人減、倍率1.5倍割る 「実質無償化」の私立高へ

 衝撃が走ったのは、1月上旬だった。高校入試の出願に先立ち、都中学校長会進路対策委員会が毎年12月に実施している中3の志望状況調査で、都立高全日制の志望予定者が前年より3千人以上減ったからだ。平均志願倍率もこの10年で最も低かった。一方、私立、国立、他県公立高の志望予定者は約1500人増え、04年以来、久々に1万7700人を超えた。

 都教育委員会の担当者は「この調査は、例年かなり正確な結果が出る。私立高校の授業料軽減助成を拡充した影響が大きいのではないか」と話した。実際、15日発表の都立一般入試の最終応募状況でも、全日制の応募者は前年より約3千人減り、平均倍率も10年ぶりに1・5倍を切った。

 拡充した「授業料実質無償化」は、小池百合子知事が、2016年夏の知事選で公約に掲げたもの。家族構成で異なるが、年収760万円未満のモデル世帯の生徒には、17年度は国の就学支援金と合わせて授業料に限り44万2千円まで支給された。この額は、都内私立高の授業料平均相当額。当初は約5万2千人分約138億円の予算だったが、交付者数はすでに5万3千人を超える見込みという。

 都立高の校長の1人は「助成金の大幅拡充で私立に流れる生徒が出るとは思っていたが、ここまで多いとは……」と驚く。

 そもそも、都内の中学校の卒業予定者数は年々減っており、今年3月の卒業予定者は約7万7千人。前年より約1100人少ない。私立や国立、他県公立の志望者の増加分と合わせると約2600人になる。

 東京私立中学高等学校協会会長で八雲学園中高の近藤彰郎校長は「私立と都立がようやく同じ土俵に近づいてきた。学費の壁がなければ、生徒は教育の中身できちんと学校選択し、工夫している学校ほど選ばれる」と歓迎する。

 先行した大阪府では、年収610万円未満を対象に助成した11年、私立高の入学者が前年より約3千人増え、私立高の専願志願率も6%増の約27%になった。助成制度を充実する埼玉県や神奈川県でも私立志向が見えるという。「国で検討されている無償化が実現したら、都の浮いた予算で助成対象をもっと高収入の世帯まで広げるという考え方もある」と近藤校長はみる。

 18年度は、都内私立高の平均授業料のアップなどに伴い、支給額を44万9千円まで増額する予定。前年度より6千人多い、約5万8千人分、約156億円の予算を計上している。

 ■私立人気、通信制でも

 15日に発表された都立高の最終応募状況では、総合学科や専門学科の志願倍率が過去最低に落ち込んだ。「確かなことは言えないが、総合学科や専門学科に進学していた層が、私立にかなり動いたのではないか」と都教委は見る。この層が受験する私立は、授業料を比較的低く設定しているケースが多い。

 都立晴海総合高の庄司一也校長は「私立高の助成の影響は明らか」と説明。総合学科や専門学科より普通科を志望する傾向がある中、「総合学科が伸び悩むのは、将来に必要な力を付けられる学科の特色が伝えきれていないのではないか」と話す。

 また、いまの中3が初めて受けることになる新しい大学入試を見据え、私立大の付属高校へ流れている可能性もあると言う。

 一方、都中学校長会進路対策委員会の調査では、都立以外の定時制・通信制高校を志望する生徒が、前年より約600人増えた。都内の公立中学校の不登校生が2016年度、この15年で最多の約8400人と増えていることや、私立や他府県の通信制高校の教育の充実も背景にあるようだ。

 都では18年度から、新たに都認可の私立通信制高校9校(うち1校は募集停止)に通う生徒にも、助成金を支給する見込み。対象世帯は全日制と同じで、約1千人に22万3千円までの支給を予定している。

 (斉藤寛子、宮坂麻子)

 ■面倒見の良さ、時代にも対応 安田教育研究所・安田理代表

 今年の高校入試では、東京都だけでなく、埼玉県も神奈川県も、公立志望が減り、私立に流れる傾向が顕著です。どの都県も、私立の授業料などの助成制度を拡充しているからです。大学進学、生活指導を考え私立に行かせたいと考える保護者は大勢います。

 例えば、世帯収入は多くなく、本人の内申点も学力もあまり高くない場合、公立の総合学科や専門学科を選んできた層が、費用負担が減るなら、私立の推薦入試で普通科に進もうということになります。

 大学が入りやすくなっていることも背景にあります。少子化で定員割れしている大学は多数あり、簡単な面接などで入学できるようなところもある。普通科の高校を卒業していれば進学でき、専門学校なども同じことが言えます。

 もう一つの背景は、私立の面倒見の良さです。生活指導以外にも、グローバル教育やキャリア教育など時代にあった対応が進んでいるように見える。

 また、私立の広域通信制高校の志願者も増えています。不登校生の受け皿というだけではありません。例えば、通信制に進んで、スポーツや芸事に集中するための時間を確保する。大学入試に向けて効率的に勉強するために、予備校のように学習できる通信制を選ぶ生徒も増えています。社会の「効率的に」という風潮が学校選択にも反映しているように感じます。

 国の「私立高校無償化」が進めば、この傾向はもっと強まるでしょう。公立高を運営するより、私立高生に助成金を出すことで財政負担を減らそうという自治体も出るかもしれません。

 本来は、国や自治体が子どもの教育に責任を持つべきだし、公立には公立らしい自由さや校風もある。学習環境においても格差が拡大する今、私立も公立も通信制もそれぞれの立場で子どもの将来が少しでも豊かになる教育をして欲しい。

 (聞き手・宮坂麻子)

 ■助成対象になる見通しの都認可の通信制課程のある私立高校

 大原学園高     (千代田区) 

 科学技術学園高   (世田谷区) 

 北豊島高      (荒川区) 

 聖パウロ学園高   (八王子市) 

 東海大付属望星高  (渋谷区) 

 日本放送協会学園高 (国立市) 

 日出高       (目黒区) 

 立志舎高      (墨田区)

 (東京都資料より 注:国士舘高は募集停止中)

 

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