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凸凹の輝く教育

「N高校」代々木キャンパス

写真:起業部の活動の時間、開発について話し合うひかりさん(右)とことのさん=渋谷区のN高校代々木キャンパス 拡大起業部の活動の時間、開発について話し合うひかりさん(右)とことのさん=渋谷区のN高校代々木キャンパス

写真:N高の入学式。全国の通学コースのキャンパス(左画面)と自宅にいるネットコースの生徒(右画面)を映像で結んで開かれた。演壇中央の校長先生も映像だ=港区 拡大N高の入学式。全国の通学コースのキャンパス(左画面)と自宅にいるネットコースの生徒(右画面)を映像で結んで開かれた。演壇中央の校長先生も映像だ=港区

写真:N高評議員の夏野剛さん 拡大N高評議員の夏野剛さん

 ◆個性生かし、多様な学び 

春、新学期に胸躍らせる季節になった。だが、できることとできないことの凸凹が大きく、個性的な子たちにとっては、不安な季節でもある。学校や先生、クラスになじめるか……。何事も満遍なくできる子を評価しがちな学校や社会の中で、凸凹の輝く教育を探っていく。

 (宮坂麻子)

 ◇発達障害、めざすは起業家

 今年3月末、「全国高校生マイプロジェクトアワード」で、全国230の応募から、女子高生2人のチームが「ベストオーナーシップ賞」を受賞した。「マイプロジェクト」は、目の前の課題に気づいた自分にしかつくれないプロジェクトで、未来を明るくする企画。受賞したのは「障害者支援プロジェクト」だ。

 2人は、角川ドワンゴ学園「N高校」(本部・沖縄県うるま市)代々木キャンパス(渋谷区)の「起業部」で活動する新高2生。発案したひかりさん(16)には発達障害(ADHDなど)がある。

 思いがうまく伝えられずかんしゃくを起こしたり、漢字を書くことや年号、場所を覚えるのが苦手だったり……。一方で本を読むのは大好きで、国語の読解なら負けない。絵も得意。企画力もあり、話すことも本当は、嫌いじゃない。

 ただ、小学生時代は、休み時間も1人で折り紙に絵を描いて過ごすようなことが多かった。中学受験して私立の中高一貫の女子校に進み、授業で積極的に挙手すると「何アイツ」などと言われ、友達とうまくいかなくなった。押し黙り、勉強も嫌になり、不登校に。ネットでつながる友達はいたが、昼夜逆転になった。

 「でも社会に出たら人と関わらなきゃいけない。いつまでも外に出ないのもよくない。身近で話せる友達もやっぱり欲しくて……」

 自分の好きなことが学べると母から言われ、高1で入ったのが「N高」だ。2016年4月にネット時代の新しい広域通信制高校(単位制)として開校。カリキュラムには、AI、プログラミング、ライトノベル、イラスト……、刀鍛冶(かじ)や船大工から、米スタンフォード大のサマースクールまで準備されている。系列会社のプロが指導する授業もあり、有名進学校からの転入、実学にひかれて途中入学する子もいる。

 ■活動費付き、学内でプレゼン

 ここに今年2月、起業家をめざしてイノベーティブな考え方を学ぶ「起業部」が誕生した。年間1千万円の活動費で、ベンチャー支援専門の「デロイトトーマツベンチャーサポート」の職員が指導に当たる。

 ひかりさんたちは、障害者のコミュニケーションを支援するノートとアプリを売り出そうとしている。ヒントは、ひかりさんが幼いころ母にうまく思いを伝えられなかったことにある。今日学校で友達と遊んだか、ケンカしたか、叱られたか。気分は。困っているのは自分のことか、学校か、友達か……。選択肢から選ぶことで自分でも気持ちを整理でき、周囲の人にも伝えられる。学内の中間プレゼンでは、20チーム中トップに立った。

 ひかりさんと一緒に開発する、ことのさん(16)は、中学時代、人前で話すことができない生徒だった。保育士をめざし別の私立高に合格したが、悩んだ末にほかの道も開ける「N高」を選んだ。

 「起業部」では、大阪・心斎橋キャンパスと映像で結び、進捗(しんちょく)状況を発表、意見交換して改良していく。ことのさんは、弟の小学校で行ったモニタリング調査結果を発表した。「数えられないほど発表やプレゼンするうち、人前で意見も言えるようになった」と、ことのさん。ひかりさんも「どういう話し方だと相手に伝わるかわかってきた」。今は起業に向けて、意欲満々だ。

 今月4日、六本木のホール「ニコファーレ」で、全国の新入生約2800人と生中継でつないだN高入学式が開かれた。冒頭、新入生が思いを語る映像が流れた。「ゲームプログラマーをめざしたい」「小説をたくさん書きたい」「声優になりたい」……。大企業の会社員をめざす声は、ほとんどなかった。

 □急増する広域通信制高校

 2016年の開校時に約1500人だったN高の生徒数は、今春には6500人を超えた。1都3県の生徒は約2500人。ネットコースが約4分の3。通学キャンパスも、今春6カ所増設し、代々木、御茶ノ水、横浜、大宮、千葉、名古屋、大阪、福岡の8カ所にした。

 カリキュラムが比較的自由な広域通信制高校は急増し、人気も高まっている。文部科学省によると、1997年度は全国8校だったが、2017年度は106校(公立1、私立89、株式会社立16)に。東京都では今年、高校入試に先立ち中学校長会進路対策委員会が実施する志望状況調査で、「都立以外の通信制」の志望者が前年の1.6倍になり、約560人増えた。

 不登校の増加が背景とされるが、教育関係者は「集団の一斉授業を好まない子や、ス

ポーツや芸事に打ち込む時間を作りたい子、一般的な会社員をめざさない子たちが、積極的に自分にあう教育を求めるようになったからでは」とみる。

 ■公立含め自由なカリキュラムを N高評議員・夏野剛さん(慶応大特別招聘教授)

 日本の教育システムは、全国津々浦々どこにいても同一の教育が受けられる設計になっている。これ自体は素晴らしい。でも、どこでも同じ情報にアクセスできるようになった今の時代は、個々の子に合った機会を与える教育の方が、重要になってきました。

 どんな子にも凸と凹はあります。凸の部分を生かせる職業や趣味に出会えたら幸せになれる。満足できて、成功できる確率が高いから。でも、凸の部分はできるからやらず、凹の部分ばかり補って均一な人間にしようとするのが、これまでの学校教育です。僕も娘につい「お前は英語はできるからいい。地理やれ」と言っちゃう。地理は嫌々なのに、成績や進学のためにやらなきゃならない。これが均一な教育の弊害です。

 N高では、凹は最低水準までできればいい。むしろ、普通の高校にはないような授業や社会体験をたくさん用意して、それぞれの凸を高める教育を提供している。一つだけでも、一生やりたいと思えること、仕事につながることが見つかれば人生は開けます。

 卓球で日本一になった張本智和君が、学校で卓球の授業を受ける必要がありますか? 将棋の藤井聡太六段が論理的思考を学ぶ必要ありますか? 中学でも高校でも、得意分野の授業をどんどん飛び級できないような日本の硬直した教育制度は、もう時代に合わない。

 起業部を作りましたが、高校時代から起業して会社設立するのは、これからあたり前になってくる。大人たちはそれを支援すればいい。凹があっても、素晴らしい凸の力で起業している。なのに、大企業はなぜそういう子を使わないの?となればいい。

 授業料無償化で私立に流れる子がいるのは、生き残るために私立が、ニーズに合う努力をしているから。できれば公立も含めてもっと自由なカリキュラムにしてほしい。教師もティーチングではなくコーチングへ。一人ひとりの個性を見極めた教育カリキュラムをどう提供できるか。子どもたちの凸を生かす教育にシフトする時代です。

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