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変わる進学

「頑張り」蓄積 電子データに

写真:授業後、eポートフォリオに活動を記録する生徒ら=世田谷区用賀の三田国際学園中学校・高校 拡大授業後、eポートフォリオに活動を記録する生徒ら=世田谷区用賀の三田国際学園中学校・高校

写真:森本康彦・東京学芸大教授(教育工学) 拡大森本康彦・東京学芸大教授(教育工学)

 ■校内外活動・実績…生徒が「学び」記録

 中高生が、自分の「頑張り」をパソコンやスマートフォンから随時入力し、電子データとして蓄積していく。探究学習でどんな研究をしたか。部活動ではどんな役割を果たし、実績を残したか。ボランティア活動は――。蓄積した記録を大学入試に活用する動きが、新たな入試改革の一環として広がりつつある。

 ◆教員共有、資質・成長を知る

 「では、振り返って記入してください」

 三田国際学園中学校・高等学校(世田谷区)の教室で、生徒たちが授業の終わりにタブレットに向かって入力を始めた。中2、中3合同のゼミ「経営実践講座」だ。この日は文化祭の模擬店についてビジョンや戦略を立てるに当たり、良い面と悪い面を考えて発表。最後に授業を振り返って「Classi(クラッシー)ポートフォリオ」というシステム内に記録した。

 同校では、eポートフォリオと呼ばれる生徒による電子データの蓄積を今春、本格的に始めた。

 文部科学省が大学入試改革推進事業の一つとして8大学に委託した「JAPAN e−Portfolio」=キーワード=が昨秋、開設された。大学入試改革で、従来の筆記試験に加え、高校3年間の生徒の成長、主体性や学ぶ意欲を評価する資料として、蓄積データを活用することを始める。

 同校では、昨年度までは教員が個人的に試していたが、今春から全校に広げた。中学時代からゼミのほか、国語などの教科、合宿や体育祭などの行事でも利用し、最終的にはAOや推薦入試の出願資料への活用もめざす。「入試対策だけが目的ではない。生徒が自分の学びを内省し、蓄積、整理して次へつなげれば、自分の資質や成長を知ることにもなる」と、田中潤教頭(37)は言う。

 これまでも、高校教員が作成して大学側に提出する「調査書」には、各生徒の部活の実績や生徒会活動、検定などの取得級、コンクールの受賞歴などが記入されていた。だが、eポートフォリオでは、生徒自身が、実績だけでなく、体験から得た教訓なども、その都度、データで残し、振り返ることができる。

 すでに様々なeポートフォリオが開発されていて、同校が使う、ベネッセホールディングスとソフトバンクの合弁会社であるクラッシーのものもその一つ。19年度入試からは「JAPAN e−Portfolio」と連携する予定という。

 田中教頭は「単なる生徒の活動記録のツールではない。教員と双方向で共有することで、教員側の次の取り組みにも生かせる。入試が終わっても生徒は記録し続けて欲しい」と話す。

 桐蔭学園中等教育学校(横浜市)の野原剛教諭(33)も、昨年度から中2の週1回の探究学習でeポートフォリオを使い始めた。「中学生では自分の活動を記録してまとめること自体がまだ難しいが、使い始めてから確実に力は伸びている」と評価する。

 全国の高校の4割以上がeポートフォリオの導入を決めているが、本格活用するのはまだ、私立・公立の中高一貫校や進学に積極的な高校が多い。ある都立高校の教諭は「中学から多様な活動を記録できるような高校もあれば、そうでない高校もある。教員側にも活用能力が必要だ。不登校などで空白のできる生徒もいる。どういう形で入試に使われるのかわからないが、格差が広がらないような使い方をしてほしい」と話す。

 (宮坂麻子)

 ■「入試攻略ツールにしないで」 東京学芸大教授(教育工学)・森本康彦さん

 旅行に行き、写真を撮って、思いを添えてフェイスブックなどに記録する。もう一度見てその時を振り返る。「旅行」を「学び」に変えた「学びのアルバム」が、私が提唱してきた「eポートフォリオ」です。

 大学入試に利用するものとして「JAPAN e−Portfolio」が注目され、部活動や生徒会などの実績を証明するものだと勘違いされがちですが、そうではない。素晴らしい記録にすることを目的化したり、入試攻略ツールにしたりはしないで欲しい。

 野球部員がノートに試合記録を残して、また次の試合に生かすように、自分の学びのプロセスを記すことで、自分の成長を感じて、雪だるまのように学びを膨らましていく。そのうち自分自身で何がしたいか、次に何をすればいいか、伸びしろまで見えてくる。

 紙では膨大な量になり、読み返すのも、画像や動画を統合するのも難しい。だから電子データ化して、自分でもすぐに振り返ることができ、共有できるように「見える化」する。

 私もかつて、公立中学の教師だった。数学のようにテストの点数で測れるものもあれば、総合学習のように点数化できないものもある。でも、生徒自身がまとめた振り返りには成長が見られる。友達との意見交換で気づいて、変わった部分もある。だから入試などの評価でも結果でなく、過程をきちんと見て欲しい。

 eポートフォリオは、大人の使い方次第で全く違うものになってしまう。生徒が自分のために、自分で工夫して、楽しんで記録していけるような使い方と評価をして欲しい。

 ◆キーワード

 <JAPAN e−Portfolio> 文科省大学入学者選抜改革推進委託事業で構築・運営する、高校eポートフォリオと大学出願ポータルサイト。高校生自身がアクセスし、校内外の活動や実績など「学びのデータ」を記録し、教師が確認できる。項目は、探究活動▽生徒会・委員会▽学校行事▽部活動▽学校以外の活動▽留学・海外経験▽表彰・顕彰▽資格・検定の8種類。蓄積データは大学出願時、ネット出願システムで利用できる。4月末時点で、80を超える国公私の大学・短大が19年度(18年度実施)の入学選抜に利用する予定。

 

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