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09月30日朝日新聞デジタル朝刊記事一覧へ(朝5時更新)

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角界余話

瓢箪軍配 今や一人だけ

写真:瓢箪型の軍配を持つ行司の木村庄太郎。下は阿炎=恵原弘太郎撮影 拡大瓢箪型の軍配を持つ行司の木村庄太郎。下は阿炎=恵原弘太郎撮影

 朝日新聞では連載や企画記事ごとにマークを作っていて、社内用語で「ワッペン」と呼ぶ。小覧「角界余話」のワッペンは、卵形の軍配をデザインした。でも、「軍配」と聞くと、胴部分がえぐれた瓢箪(ひょうたん)形を思う人もいるだろう。

 卵と瓢箪、行司の軍配には2種類ある。

 富岡八幡宮などで勧進相撲が始まった江戸時代の錦絵を見ると、軍配は瓢箪形が主流だ。その後に卵形が生まれ、木村家の行司は瓢箪形、式守家は卵形を用いた、という研究がある。最古参の式守勘太夫(58)も、先輩行司からそう教わったそうだ。しかし――。

 行司最高格の木村庄之助には、「譲り団扇(うちわ)」という代々の庄之助に受け継がれた軍配がある。江戸後期から伝わっており、細身の紫檀(したん)の柄を握ると、手に吸い付いてくるかのような不思議な軍配だ。東京場所で時々、歴代の庄之助が結びの一番で用いている(現在、木村庄之助は空位)。

 で、この譲り団扇。木村家なのだから瓢箪形――と思いきや、卵形だ。

 木村家なのに、なぜ卵形なのか。相撲博物館でも分からない謎だという。また、いまほとんどが卵型になっている。なぜ瓢箪形は土俵から消えたのか。

 多くの行司が「卵形の方が使いやすい」と話す。式守勘太夫も「扱いやすさは卵形。軍配を新調する時、瓢箪形にしようとは思いません」と語る。また、いまの行司は改名を重ね、いずれ式守と木村の両方を名乗る。改名のたびに軍配を作り直せないので、卵形に統一されていったようだ。

 でも、1人だけ瓢箪形を使う行司がいる。三役格の木村庄太郎(54)。4年ほど前、ある後援者に軍配を作ってもらう際、「誰も使っていないから」と瓢箪形を希望した。

 同じ素材・同じ寸法で作ると、胴がえぐれている分、瓢箪形は軽くなるという。「初めは違和感がありましたが、慣れるもんですよ」と庄太郎。今場所も最初は卵形だったが、後半戦から瓢箪軍配に持ち替えた。

(抜井規泰)

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