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ぶらりふらり

街に、人生に、絵手紙の彩り 狛江

写真:絵手紙教室の開催を記念した狛江郵便局前のポスト。モニュメントは今年2月に設置された=2018年4月21日、東京都狛江市 拡大絵手紙教室の開催を記念した狛江郵便局前のポスト。モニュメントは今年2月に設置された=2018年4月21日、東京都狛江市

写真:狛江駅前の排気筒に掲げられた巨大な絵手紙=2018年5月13日、東京都狛江市 拡大狛江駅前の排気筒に掲げられた巨大な絵手紙=2018年5月13日、東京都狛江市

写真:仕事場で絵手紙をかく小池邦夫さん=2018年5月7日、東京都狛江市 拡大仕事場で絵手紙をかく小池邦夫さん=2018年5月7日、東京都狛江市

 小田急線を狛江駅(東京都狛江市)で降りると、縦4メートル、横3メートルの絵手紙に出迎えられる。排気筒の壁面に掲げられ、赤いたてがみの馬にまたがった人物が描かれている。「動かなければ出会えない」のメッセージ。人物の傍らには「絵手紙発祥の地―狛江」とある。

 狛江郵便局では、昔ながらの円筒形のポストを見つけた。「狛江市在住の小池邦夫氏が、我が国初の絵手紙教室を狛江郵便局で開催したことを記念して設置したものです」との説明が掲示されている。ポストの脇には、土瓶の絵に「一杯の水で人が生き返るように 一通の絵手紙で生き返る」と添え書きした絵手紙のモニュメントが設けられていた。

 駅前と郵便局の絵手紙はともに市内の小池邦夫さん(77)が手がけたものだ。小池さんは絵手紙の創始者とされる。仕事場を訪ね、話を聞かせてもらった。

 「人見知りで引っ込み思案、不器用。でも、自分のことを分かってほしい。そう思って始めたんです」。1941年に松山市で生まれ、書道を学ぼうと東京学芸大学に進んだ。「自分の思いを書にしたい」と思ったが、講義は有名な書を写すことが中心だった。

 鬱々(うつうつ)とした思いを手紙につづり、日々、都内の別の大学に進学した同郷の親友に宛てた。ほどなく、ある画家の励ましもあり、身近な青果などを描き添えるように。この道で生きていけないか。そう考え、7年間在籍した大学を中退。塾で国語を教えながら、かきつづけた。大学の後輩だった芙美子さんと結婚、2児に恵まれた。だが30代半ばになっても芽が出ない。そんな時、ある季刊誌の編集者から「6万部の雑誌にとじ込む絵手紙を1枚ずつ直筆でかかないか」と声をかけられた。

 「最後の賭けだと思った」。塾を辞め、1年間、連日12時間前後、創作を続けた。芙美子さんは高校の非常勤講師をしながら支えてくれた。78年11月、ついに6万枚は完成。「その夜でした。ホッとしたのか、妻が病気で急死したんです。36歳でした」。企画が載った79年春号の季刊誌は話題を呼び、絵手紙は徐々に知られるように。郵便局での教室は、その2年後のことだ。やがて愛好者は全国に広がり、狛江市は2007年、「絵手紙発祥の地」を掲げた。

 「しばらくぶりに絵手紙をかいて、楽しさを思い出しました」

 NPOフードバンク狛江の田中妙幸さん(65)は笑う。元保育士。植物が好きで、仕事柄、子どもに絵を描くこともあり、20年ほど前の一時期、小池さんに学んだ女性講師から絵手紙を習った。

 NPOは生活が苦しい人たちに食品を無償提供している。昨年末、市と30年来の「ふるさと友好都市」である新潟県長岡市の川口地域(旧川口町)から、魚沼産コシヒカリ2俵(約120キロ)を贈られた。田中さんらは翌月、狛江市役所でお礼の絵手紙をかいた。川口地域にゆかりの市民らも筆をとり、2月に現地に贈った。

 市内では今、多くの市民が絵手紙に親しんでいる。芙美子さんの教え子で、小池さんの再婚相手の恭子さん(65)も絵手紙講師の一人だ。街を歩くと、狛江駅や商店、市役所などに、市民らの絵手紙が飾られていることに気がついた。市が12年に開催したコンテストには、海外からのものも含め、6500枚近く寄せられた。

 季節の草花や生き物、風景――。色鮮やかで、どこか懐かしい絵手紙は、道行く人を和ませる。「ヘタでいい、ヘタがいい」が絵手紙の心得とか。小池さんは言う。「美しいと思ったものを、気持ちを込め、喜びながらかく。それは必ず相手に届きます」。絵手紙が紡ぐ縁は広がり続けている。

 (河井健)

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