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変わる進学

「探求」子どもの興味開発

写真:探究学舎の授業は、自由に発言できる=三鷹市 拡大探究学舎の授業は、自由に発言できる=三鷹市

写真:「探究学舎」の宝槻泰伸代表 拡大「探究学舎」の宝槻泰伸代表

 ◆科学・数学・宇宙…教室が人気

 ◇中学受験の塾も導入

 「探究」が、いま注目を集めている。理数探究基礎、理数探究、古典探究、地理探究……。来春から始まり2022年度に本格実施される高校の新学習指導要領では、様々な探究の選択科目ができる。新大学入学共通テストの第1回試行調査でも、探究活動を重視する問題が出た。出願時に高校時代の探究活動について提出させる大学も。こうした動きは小中学生の学習にも広がりつつある。

 「人が2人で『比』。では、人と人が背を向けているこの形はどんな漢字?」

 小学校高学年の25人に向かって講師が問いかける。見学していた保護者らは首をかしげるが、1人の子が即答した。「北!」。この日の講義は、そんなふうに漢字の成り立ちを考えた。

 今月の探究テーマは「ことば」。古代エジプト文字のヒエログリフから始まり、中国の古代文字の甲骨文字、そして世界の言葉へ。「ことばに関連することを系統立てて広く深く考えていくんです」と講師。

 この「探究学舎」(三鷹市)は2012年に開講した探究の専門塾だ。科学、数学、宇宙、戦国史など、テーマごとに何日もかけて学ぶ。子ども同士議論したり、研究したり。小1〜高3まで約300人が毎週1回90分間学ぶ。大阪や福岡でも授業イベントを開き、年間約4千人が参加する人気教室となった。

 代表の宝槻(ほうつき)泰伸さん(37)は、弟2人を含めた3兄弟とも、高校も塾も行かずに京都大へ進学したことで知られる。「一人ひとりの興味関心の芽を育ててやれば、学ぶことが好きになり、自ら学ぶようになって伸びる」という。

 授業を受けていた小5の江頭嵩(えがしらしゅう)さん(10)は、この塾で量子力学に興味を持ったという。「いま常識となっている知識がどう生まれたのかを探究していくうち、自分もそのストーリーの後継ぎとなる科学者になりたくなった」

 今年度から保護者向けの「探究ラーニングバー」も始めた。ワークショップ企画で知られる中野民夫・東京工業大教授や、「ティール組織」の本の解説者でもある嘉村賢州(かむらけんしゅう)さんら、毎回違うゲストを招き、議論する。

 千葉県柏市の塾「ネクスファ」も「サス学」という授業を2011年から始めている。持続可能(サステイナブル)な未来をつくることをめざし、小3〜中3まで30人以上が、貧困や食などについて学ぶ。問い合わせが増え、週1回だった小学生クラスを、今年度から週3回に増やしたという。

 ■中学受験の塾も導入

 中学受験対策の塾でも、探究型の授業を展開する。

 サピックスは、2015年から「農業科学講座」を始めた。今年も小4を対象に、借りた農園で作物を育てる。ただ育てて観察、収穫するのではない。肥料を変えて育ててできた作物の成分を測定して比較したり、雑草がどれほどの悪影響を与えるか調査したり。

 サピックス環境教育センターの担当者は「15年ほど前に環境問題の探究型実験の講座を始めた時、なぜ受験塾が、との意見もあった。しかし、実験要素を入れて生徒と活発にやりとりすることは、暗記ではない思考力をつけることにつながる。まさに新しい大学入試を先取りする教育だ」と話す。

 日能研では、小5、小6の塾生を対象に、大型連休や夏休みなどを利用して「論理を探究する」「論理を追究する」などの講座を開いている。災害やSDGs(持続可能な開発目標)などをテーマに議論する。同広報担当者は「大学入試だけでなく、中学入試でも知識の獲得量を競うのではなく、社会の問題を自分のこととして深める力が求められる時代になってきた」としている。

 (宮坂麻子)

 ■好きなことする姿、大人も見せて 「探究学舎」代表・宝槻泰伸さん

 探究活動、探究学習、課題研究……。最近、あちこちでこうした言葉が聞こえるようになりました。

 でも、なんとなく違和感があるんです。叫ばれている「探究」は結局、従来の学校教育が請け負ってきた「能力開発」の延長上にあるように思える。国の求めることを開発できる「よい人材」を育てて国の発展に役立ってもらう。近代社会の求めることが形を変えただけではないでしょうか。

 僕の「探究」の定義は違います。「能力開発」ではなく「興味開発」。個々の「興味」を開発する。造語ですが、好きなことの後押しをするのが、本当の探究だと思っています。

 小学校低学年の「種まき」の時期は、様々なことを見せて、何に興味があるかを自分自身で見つける手助けをする。高学年でいくつかの「芽」が出たら、中高生は一つか二つに絞り、時間をかけてじっくり深める。向かないと思ったら変えたっていい。そういう過程があるから大学でその分野の「プロ」から学ぶことに本当の喜びを感じる。

 一般的な学校の探究学習では、課題設定をし、調査、考察、まとめて、発表……ということを教えます。でもこれは手法であって探究ではない。どんなことに疑問を抱き、何を知りたいと思うかが一番大切。目の前の課題をうまく調べてこなす適合型の優等生は、イノベーターにはなれません。真に探究したい生徒は適合型でなく、創造的になる。

 探究の一番の近道は、大人の働き方改革ではないかと思っています。与えられた仕事だから、評価されたいからと時間を惜しんで深夜まで働く「仕事人間」の背中を見せるのをやめる。もちろん、大好きなことを仕事にしている人はいいですが、そうでない人はさっさと帰宅し、自分のやりたいこと、好きなことをする姿を子どもに見せる。そこから子どもも自分の好きなことを深めようと思える。

 「探究したいこと? 何もないよ」という大人たちが、子どもだけに探究を叫んでも実現しないのでは。

 (聞き手・宮坂麻子)

 

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