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東京150年

農業編/(1)多様で多角的 特産の宝庫

写真:東京の特色ある農産物と主な産地 拡大東京の特色ある農産物と主な産地

写真:たわわに実ったナシの「稲城」を満足そうに見つめる加藤和弘さん。大きいものは1キロを超える重さになる=稲城市東長沼 拡大たわわに実ったナシの「稲城」を満足そうに見つめる加藤和弘さん。大きいものは1キロを超える重さになる=稲城市東長沼

写真:農業体験農園でモロヘイヤを収穫する利用者と話す園主の加藤義松さん(右)=練馬区南大泉3丁目 拡大農業体験農園でモロヘイヤを収穫する利用者と話す園主の加藤義松さん(右)=練馬区南大泉3丁目

 ◆高い技術 消費者らに還元

 東京だけの「幻の梨」がある――。

 9月初め、多摩川の豊かな伏流水に恵まれる稲城市にある果樹園「加弥園」。棚にはわせた枝から、色づいたソフトボールほどの大きさの実がいくつもぶら下がっていた。同市で生まれた大型ナシ「稲城」だ。

 稲城は、水分がたっぷりでシャキッとした食感に甘みが強いのが特長だ。1個500〜700円ほどだが、重さ1キロ以上の大玉は1千円を超えるものも。園主の加藤和弘さん(60)によると、今年は気温が高かった影響で例年より大きな実になったという。

 稲城は、熟れ具合など実の状態を一つひとつ見てもぎ取る。手間がかかり、少量しか収穫できない。市場には出荷せず、各農家が畑近くの直売所でのみ販売している。「幻」たるゆえんだ。稲城の梨生産組合の城所貞夫組合長(58)は「幸水や豊水とは違い、東京でしか作られていない。贈答品として送るのにいいと喜ばれるよ」と目を細めた。

     *

 「東京農業史」によると、1872(明治5)年の東京府(現在の23区内)の耕地面積は2万5511ヘクタールで、米の生産が56%を占めていた。麦が19%、野菜が12%と続いた。雑穀は5%、豆類は4%で、果実類はわずか1%だった。

 だが、1世紀以上が過ぎ、多摩地域や島しょ部が加わったこともあり、東京の農業は様変わりした。

 東京都の耕地面積6900ヘクタール(2017年)のうち、普通畑が72・3%、樹園地が23・0%、水田が3・8%。地域別でみると、区部(23区)が7・7%、多摩地域が76・3%、島しょ部が16・0%だ。

 生産品目の種類も豊富だ。多摩川源流に位置する奥多摩町では、清流を利用してワサビを栽培。温暖な気候の小笠原村、八丈町などでは、熱帯果樹のパッションフルーツが特産だ。作付面積トップの小松菜は江戸川、葛飾、足立などを中心に1年を通して栽培されている。狭山茶産地の東大和市や武蔵村山市にはもえぎ色の茶畑が広がり、ブランド茶「東京狭山茶」が製造されている。

 農林水産省の資料によると、東京の16年の農業産出額は286億円で、47都道府県で最も少ない。ただ、野菜に限ると37番目(171億円)で、山梨や三重より上位だ。小松菜の産出額は26億円で全国で4番目。米や畜産の産出額が少ないため、総額では最下位ながら、野菜や果樹では健闘している。

 都農業振興課は「広範囲に地域の自然や環境に応じた特色ある農業が営まれている。大消費地の利点を生かし、加工・直売・観光にわたって多様で多角的な農業経営が展開されている」と説明する。

     *

 練馬区南大泉。住宅街の一角に、農業体験農園が広がる。「緑と農の体験塾」と名付けられたこの農園では、153人の利用者が約30平方メートルの区画を借り、野菜を栽培する。キャベツにダイコン、ナス、落花生など1年間で約30種類を育てる。9月はブロッコリーの苗を植え、ホウレンソウの種をまいた。10月後半に収穫が始まる予定だ。

 農業体験農園は園主である農家が開設し、作付け計画を立て、講習会を開いて野菜のつくり方を教える。1996年、加藤義松さん(64)が自身の畑で始めた。「練馬方式」と呼ばれるようになり、他の地域にも広がる。加藤さんは「近隣住民を意識する都市農業だから生まれたスタイルだ」と言う。

 都農業委員会の上部団体「東京都農業会議」事務局長として長く東京の農業に関わってきた原修吉さん(67)は言う。「消費者の好みを取り入れて少量でもさまざまな野菜をつくったり、利用者に栽培・収穫をさせる農園を運営したりしてきた。東京の農家が持っている技術は高い」

(山田知英)

       ◇

 江戸が東京となって150年の節目の企画「東京150年」。最終シリーズの今回は、時代の流れに合わせて都市やその周辺で営まれてきた農業の姿を描きます。毎週日曜日掲載で計4回の予定です。

 

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