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08月21日朝日新聞デジタル朝刊記事一覧へ(朝5時更新)

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変わる進学

学びの格差解消へ、支援の輪 

写真:「Learning for All」が公民館の一室に置いている学習支援の拠点。生徒と大学生が向かい合って勉強を進めていた=東京都葛飾区 拡大「Learning for All」が公民館の一室に置いている学習支援の拠点。生徒と大学生が向かい合って勉強を進めていた=東京都葛飾区

 経済的な事情などから学びの機会が少ない子どもの学習を、NPOや自治体が支援する例が広がっている。教育による格差を解消しようと、進路指導や受験対策も充実させており、子どもたちの将来的な自立を後押しする。

(横川結香)

 ◆無償で個別指導、受験対策も

 土曜日の昼。東京都葛飾区の公民館の一室で、中学生たちが学習プリントに向かっていた。

 「あ、この計算の式の作り方がわからない」。高校受験を控えた中3の男子生徒がつぶやくと、様子を見ていた大学生が声をかけた。「確かに難しいけど、一緒にやってみよう」

 ここは、経済的な理由などから学ぶ機会に恵まれない小中学生の学習支援をするNPO法人「Learning for All(LFA)」(東京都新宿区)が運営する拠点のひとつだ。

 学習支援などを行っていた別団体から3年前に独立したLFAは、「教育格差の解決」を目標に、ケースワーカーや他の団体から紹介を受けた生徒に学びの場を届けている。個別指導にはボランティアの大学生らがあたり、週2回の支援はテキスト代も含めて無償で提供する。

 今年度は葛飾、墨田両区に計11の拠点を置き、千人を支援する。とりわけ中3生は、高校受験に向けた指導を重点的に行う。

 目指すのは、経済的に負担の少ない都立高への進学だ。石神駿一事業部長(31)は「学校選びは本人の意思を尊重する一方で、私立の併願校を受ける余裕のない家庭も多い」と話す。保護者との三者面談を通じ、学力や家庭の状況を考慮し、決めていく。LFAが今春に送り出した34人の卒業生の多くは、商業科や総合学科などの都立高に進学した。

  合格のためには「基礎学力の定着」を重視する。都立校の入試で出される5教科の共通問題は基本から応用まで幅広い。例えば数学(100点満点)は基本的な計算問題もあり、1問につき5点と配点も高い。過去の入試や学習テキストを反復学習させ、宿題も出して「苦手」を確実につぶして本番に備える。

 高校ごとの対策指導も手厚い。試験に面接や作文を課す「エンカレッジスクール」を志望する生徒もおり、面接の練習や作文の添削も行う。高校の学校説明会の参加を勧めたり、模試の受験を促したりと、情報提供も欠かさない。

 受験で積み重ねたがんばりは、社会で生きていく自信もつける。都内で無料塾を開き、高校や大学進学をサポートするNPO法人「キッズドア」の渡辺由美子理事長(54)は「支援の対象になる子どもたちは『努力をしても報われない』という無力感が強いが、受験勉強を経て自信をつける子も多い。一つのことをめげずに行う経験をさせることも、支援の大切な役割だ」と話す。

 ◆金銭的負担を軽減

 学費や塾代などの、金銭的な負担を和らげる支援もさかんだ。

 民間塾に通う余裕のない成績上位層の進学指導を支援する「足立はばたき塾」(足立区)の塾生は毎年数人、入学金や授業料などが免除される特待生制度で私立高校に進学する。経済的負担が減るだけでなく、合格が早く決まることによるメリットもあるという。区の担当者は「難関都立高を目指す力がある生徒でも、私立の併願校に通う余裕がないため、志願先を合格確実な都立高に変えることがある。合格の確約をとることで、難関高へのチャレンジも可能になる」と話す。

 渋谷区では、クラウドファンディングで募った寄付を、学習塾や通信教育代として高校受験生に提供する試みが始まっている。事業を運営する「スタディクーポン・イニシアティブ」はこの春、中3生54人に年20万円分のクーポンを提供し、8割以上の生徒が活用しているという。

 同区では、塾に通って受験勉強をする中学生が多い。今井悠介代表は「学校の友人と同じ空間に通いたい子どもにとっては、劣等感を覚えずに学ぶことができる。支援の選択肢の一つとして広げたい」と話す。

 都では、低所得世帯の受験生向けに「受験生チャレンジ支援貸付」を設けている。高校、大学受験を目指す20歳未満の都民が対象で、家庭教師を除く学習塾代が20万円までと、受験料(高校は2万7400円、大学は8万円まで)を無利子で貸し付ける。1校でも合格したら返済は免除しており、都は「全国的にも珍しい制度」と話す。

POINT!将来像を描けるかが課題

 経済的に恵まれない子どもたちの学習支援について、認定NPO法人「育て上げネット」の井村良英さん(43)に聞いた。

 都立高で、学習支援や進学・就職指導のお手伝いをしています。進学希望者の中には経済的に厳しい家庭の生徒もいますが、最近は給付型の奨学金が充実し、受験費用を社会福祉協議会が貸し付ける制度もあります。

 金銭や学力よりも大きな課題は、将来のイメージにつながる大人と接する機会が限られ、自分が大学や社会でどう活躍できるのか、考えられないことです。入試の面接や小論文の指導を通じて、成長を支援しています。

 将来をなかなか描けない生徒は、専門学校より大学を勧めます。特定の分野を教える専門学校の場合、「合わない」と感じると、中退する確率が高いからです。

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