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ぶらりふらり

キンテツウラの歴史 吉祥寺(1)

写真:風俗店などが残る駅の東部地区。スーツ姿の客引きが通行する男性に盛んに声をかけていた 拡大風俗店などが残る駅の東部地区。スーツ姿の客引きが通行する男性に盛んに声をかけていた

写真:「近鉄裏」の環境浄化を訴えてパレードする市民委員会のメンバー。市、警察、市民ら150人が参加した 拡大「近鉄裏」の環境浄化を訴えてパレードする市民委員会のメンバー。市、警察、市民ら150人が参加した

写真:かつて風俗店が並んだ「近鉄裏」に立つ近藤さん。路地は広がり、雰囲気も大きく変わったという 拡大かつて風俗店が並んだ「近鉄裏」に立つ近藤さん。路地は広がり、雰囲気も大きく変わったという

 ◆住民が団結 風俗街に歯止め

 来日した外国人が成田空港でタクシーに乗り、行き先を告げる。

 「キンテツウラ」

 合点した運転手は何も言わずアクセルを踏み込む。

 目的地が、どこか分かるだろうか? 「キンテツウラ」は漢字にすると「近鉄裏」だ。昭和50年代、中央線沿いで新宿・歌舞伎町と並ぶ歓楽街と言われた東京都武蔵野市の吉祥寺駅東側の一角を指す。タクシーの話の真偽は不明だ。ただ、そんな話が地元に広がるほど、「怪しげな店が路地裏に並び、外国人もいた」と住民は話す。

 住みたい街で常に上位に入る吉祥寺。ファッション、文化、おいしい飲食店。平日でも若者、特に女性の姿を数多く見かける。

 吉祥寺の街づくりの原型になるのが、1971(昭和46)年に完成した駅前の「吉祥寺大通り」だ。幅22メートルのメインストリートが南北に貫いた。そして74年5月、通り沿いに「近鉄百貨店」が開業した。一方で、大通りから店舗東側が死角になり、その年の秋ごろから、細い路地に「ピンクキャバレー」「のぞき部屋」「ビニ本屋」などの店が乱立していく。

 駅前とは言え、木造2階建ての民家が残っていた住宅街。肉屋、魚屋、八百屋もあり、市民の生活感があった。ところが、建物は民家のままなのに派手なネオンが飾られ、肌を露出した女性や黒服の男性が路地に立った。200メートル四方ほどの地区に2年余で約50軒の風俗店ができた。こうした店は飲食店の届けで営業できた。当時を知る人に聞いたところ、「店をやるというので貸したら、風俗店ができていた」。そして「近鉄裏」の呼び方が定着していく。「客引きは拡声機で下品な言葉を叫び続けていた。朝は嘔吐(おうと)や汚物で道路が汚くて通れなかった」。会社員が夜、家に帰ったら、玄関前にビールの空き瓶が積まれ、中に入れないこともあったという。

 立ち上がったのが近くの小学校PTAの父母たちだ。76年4月、「環境浄化推進市民委員会」ができた。先頭に立ったのがPTA役員でもあった近藤渓子さん(82)。「誰が店をやっているのか分からない。地元の人は怖くて近づかなくなりました」。委員会などのまとめでは、ピークの79年ごろ、風俗店は90軒ほどになった。

 住民は土地を売り、地区から転居していった。

 そんな中、ストリップ劇場建設の話も持ち上がる。行政、市議会も対策に乗り出した。当時市議だった前衆院議員の土屋正忠さん(76)はストリップ劇場側との交渉に立ち会っている。「背後に暴力団がいると思った。暴力団進出だけは阻止したかった」。その後、土屋さんは市長になり、「環境浄化に関する条例」「つきまとい勧誘行為防止条例」などを制定。また風俗営業法で学校、図書館など文教施設の半径200メートル以内に風俗店をつくれなくなったことを利用し、住民の土地を買い上げ、近鉄のはす向かいに市立吉祥寺図書館を建設するなど店舗の進出に歯止めをかけた。

 そして今、「近鉄裏」は――。近鉄は2001年に撤退し、ビルは家電量販店になっている。

 図書館開館などで多くの風俗店は撤退したが、関連の店は十数軒残る。夜9時ごろ、路地を歩いた。スーツ姿の男性に何度も声をかけられた。「おにいさん、おっぱいパブどう?」。つきまとわれることはないが、客引きは20人ほどいるだろうか。

 東部地区には狭い市営駐輪場が不自然な形で点在する。土地が売られ、跡地が風俗業者に渡らないように市が買い取ったなごりだ。

 こうした土地活用をどうするか。まちづくりの協議会は現在も続いている。議論の場で出席者から、「風俗街があってもいいんじゃないのか。利用者がいるし、歌舞伎町もそれでにぎわっている」という意見が出る。近藤さんは「そうした店があることは否定しません。でも街の顔とも言える駅前でなくてもいいんじゃないですか」と答える。

 吉祥寺の外から来て楽しもうとする人と、地元住民の温度差。どう折り合いを付けるか。今も直面している課題だ。

 (前多健吾)

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