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凸凹の輝く教育

「合理的配慮」を考える(8)

写真:「どもりながらも語ることを受け止めてくれる社会が理想」と話す山田舜也さん 拡大「どもりながらも語ることを受け止めてくれる社会が理想」と話す山田舜也さん

 ◆吃音「等身大の自分」を認め

 話し始めの言葉に詰まったり、つっかえたりする「吃音(きつおん)」がある山田舜也さん(27)=東大大学院博士課程2年=は2年前、悩んだ末に、初めて学業の場で合理的配慮を申し出た。

 当時、化学専攻の修士2年で、論文のプレゼンが迫っていた。

 これまでもプレゼンがある時は、前日の晩に原稿の朗読を繰り返し、練習した。だが、本番はうまくいかない方が多い。研究室の仲間の視線が気になり、それを気にする自分に嫌気がさす……。「どもること以上に、うまく出来ない自分に落ち込んでしまう」。そんな悪循環を断とうと、「プレゼンでは自ら話さず、事前に録音した音声データを流して説明したい」と担当教授に掛け合った。

 教授も認めてくれた。だが、結局は実行しなかった。心のどこかにつかえていた「何か」に押しとどめられたからだ。

 山田さんが吃音を「悩み」として意識し始めたのは、中高一貫の男子校に通っていたころ。友人とのたわいない会話でも「どもってうまく話せないとノリが壊れる」ことが怖く、いつしか人との関わりを避けるようになった。

 大学に進んでからも悩みは膨らんだ。世間では「コミュニケーション力」の話題が多くなり、「コミュ力が低い」「コミュ障」という言葉も使われるようになった。山田さんも恋愛、友情、就活をめぐる人間関係に戸惑うことが増えた。さらに、大学の講義は「グローバル」を意識し、英語が多くなった。より話しづらい言葉でのやり取りに、戸惑いは募った。

 ただ、誰かと言葉を交わし合いたい望みはあった。

 修士1年の冬。埼玉県内であった当事者の自助サークルに顔を出した。同じような会は前にも参加したことがあったが、ゲームや遊びが中心。悩みを掘り下げて話すことは少なかった。

 その点、新たに行ったサークルはとても新鮮だった。社会人や学生らが、当事者ならではの悩みや生きづらさを吐露し、語り合う。時には哲学者の言葉を引き合いに出しながら、それぞれの感情を言葉にしていた。

 「大切なことは自分の声で伝えないと、嘘をつくような、自分の身体を否定するような気がする」

 あの時の光景が直接作用したのかは分からないが、山田さんは発表直前に配慮を受けることをやめ、10分間のプレゼンを乗り切った。「配慮を受けても、自分の悩みが変わるとは思えなかった」と話す。

 現在は自助サークルを主宰し、当事者として吃音を研究する。理想的な合理的配慮は「等身大の自分を認めてもらえるような空間づくり」だと考える。

 筆談や音声の自動読み上げ、時間の延長――。配慮の方法はいくつかある。「ただ、吃音当事者の特性や置かれた場の雰囲気、人間関係など複合的な要素で起きる。誰でも当てはまる配慮はない。それ以上に、社会が『つっかえても大丈夫なんだ』と思える空間になることが大切だと思う」

 (横川結香)

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